必読レポート Mary Meeker 2016年版「15枚のキースライド」
Recodeのカンファレンス Code Conferenceの毎年の見ものとなりつつある、シリコンバレーの老舗ファンドKPCBのパートナー Mary Meekerによるインターネット業界のトレンドレポート(昨年のエントリはこちら)が今年も発表されました。
2014年の164ページから、2015年は197ページ、今年は213ページ!と毎年ボリュームが拡大しているこのレポートですが、インターネット全体のトレンドから個別のテーマまで重要な内容が盛り沢山なので、各カテゴリーの「15枚」のキーとなるスライドをご紹介したいと思います。
◼︎1:世界のネット人口は「30億人」
全体で8章構成になっているのですが、最初の章は「Global Internet Trends」。
私が初めてネット業界に飛び込んだ1997年の世界のインターネット人口は「7000万人」。スタートアップに飛び込んだ1999年は「2.5億年」。あのネットバブルと言われていた時代と比べても、約10倍。世界の人口の約半分がオンライン上にいることになります。
◼︎2:世界人口(70億人)の伸びは減速
2つ目の章は「Global Macro Trends」。
世界の人口は70億人強に達しており、前のスライドと比較してみると、まだ半分強の人々がネットにつながっていないことがわかります。ここをネットに繋ごうとしているのが、FacebookやGoogleなどのドローンや気球を使ったネット接続の取り組みです。70億人全てがインターネットにつながると、何ができるのでしょうか?
◼︎3:まだ大きな可能性のあるモバイル広告
第3章は「 Advertising / Commerce + Brand Trends」です。この章からは5スライドご紹介します。
一つ目は、有名なチャートですが、「まだまだモバイル広告には大きな可能性がある」ということです。各メディアに対して、左がユーザの滞在時間、右が投下されている広告費です。ユーザがモバイルに大量に移動して多くの時間を費やしているのに、まだ広告費は十分にシフトしていないというのがわかります。
◼︎4:「縦型動画広告」の台頭
二つ目は、去年大きな話題となった「Snapchatの縦動画」広告です。「3V広告」と表現していますが、Vertical(縦)で、Video(動画)で、Viewing(全画面)の広告です。Snapchatの動画視聴体験自体も従来の動画の概念とは随分と異なりますが、広告自体も非常に新しいトレンドとなっています。
◼︎5:老舗小売店の急速なデジタルシフト
三つ目は、小売、コマースに関してのトレンドです。
左側はNeiman Marcusという老舗大手百貨店のオンライン売り上げが、前年比 24%伸びて、「全体の26%」になったというデータです。一般的なブリックアンドモルタルの小売業の数字を把握していませんが、これは「ものすごい大きな数字」だと思います。老舗でもオンラインに取り組んで実績を出しているところがあるというデータです。
右側は、「オンラインブランドがオフラインでも躍進」というグラフです。
Warby Parkerというオンライン専業のメガネ通販のスタートアップがあるのですが、彼らは2009年に創業後、オンラインのみで事業を成長させたのち、リアル店舗に進出、現在全米に30店舗を展開しています。
グラフは「全米単位面積あたり売り上げ小売店舗Top5」というランキングで、なんとWarby ParkerがAppleに続いて二位に入っているというものです。正直「メガネ」という単価の低いものを扱う店舗が、ティファニーを抑えて二位という理由がわからないので、もしどなたかご存知の方がいれば教えていただけると嬉しいです。
◼︎6:IoTのネットワーク効果
四つ目は、注目されているIoTについて。
Ringという「スマート呼鈴」の事例なのですが、呼鈴を押すとスマホに通知が来て、その映像も見えるという非常にシンプルな機能です。ただ、月間5万台を販売するほどのヒット商品になっているのです。右の図はその分布なのですが、こうしたシンプルなIoTでも、従来の家電とは異なり、数が増えると価値が増す「ネットワーク効果」が働くという事例です。
◼︎7:急成長が可能な「オンライン専業」小売
最後は、「オンライン専業の小売がいかに急速に成長するか」というグラフです。売り上げ$100M達するのにかかった年数が、Nikeが14年、最近躍進しているUnder Armourが8年かかったのに対して、オンライン専業ブランドは平均「4年」で$100Mに達しているというデータです。
◼︎8:新しいUGCの形「ライブ動画」
第4章は、「Re-Imagining Communication」です。ここからは二枚紹介します。
一つ目ですが、もしこの動画をまだ見られていない方はぜひ見てください。一般の女性が、スターウォーズのキャラクターのお面を被ってひたすら笑い続けるだけの動画なのですが、彼女がこれをFacebookのライブ動画配信機能を使って配信したところ、1.5億ビューという史上最大の視聴記録を叩き出しました。Facebookというバイラル装置のパワーと、動画という新しいメディアの力見せつけました。
◼︎9:「会話型コマース」の台頭
二つ目は、メッセンジャーを核とした「会話型コマース」について。
中国のWeChatを筆頭として、Facebook MessengerがBotを追加するなど、メッセンジャー内もしくは会話型のインタフェースでのコマースが注目されています。紹介されているのは、Instagramで商品を販売するタイの事例です。
◼︎10:新しいインターフェース「声」
第5章は、「Re-Imagining Human-Computer Interfaces」です。ここからは3枚紹介します。
一つ目は、コンピュータが発明されからのインターフェースの歴史について。パンチカード、キーボード、そしてタッチと進化を遂げてきましたが、今俄然注目を浴びているのが「声」のインタフェースです。ここで紹介されているAmazonのEchoについてはこちらをご参考ください。
◼︎11:広がる「声」インターフェース
二つ目は、「声」インタフェースの代表格AmazonのAlexaの広がりについて。
ホームグラウンドである「スマートホーム」関連はもとより、Fordとの提携により「車」にも広がっています。彼らが「Skill」と呼ぶ連携アプリ(例えば、「声」でUBERが呼べます)は950にも登っています。
◼︎12:イノベーションによって進化する「クルマ」
今大きな注目を集めている「クルマの進化」についても言及があります。
2004年から国防総省の外郭団体であるDARPAが主導した自動運転コンテストのスタートから、10年強が経ち、「自動車メーカー」+「テック企業」+「ライドシェア企業」という三つ巴で、「また自動車業界でアメリカが主導権を握る日が来るのか?」とあります。
◼︎13:中国の爆発力。ライドシェア市場。
第6章は、「China = Internet Leader on Many Metrics」。
ここで紹介するのは、UBERの各都市での伸びについて。青が中国以外の都市での伸びのグラフで、赤が中国。その脅威的な勢いが見て取れます。中国のライドシェア市場についてはこちらが参考になります。
◼︎14:非テクノロジー大企業によるM&Aは2.6倍と急増。
第7章は、「Public / Private Company Data」。
最近急増している「非テクノロジー企業」による、スタートアップの投資、買収について。自動車、出版、小売、金融、など様々業界の事例があげられています。日本企業の事例については、こちらが参考になります。
◼︎15:データの「第三の波」
第8章、最後の章は「Data as a Platform / Data Privacy」。
データを保存することに大きなお金がかかった時代から、ビッグデータの時代となり「データを持つ」ということが様々なビジネスの勝利の方程式となり、今度は、その巨大になったデータを「早く処理」し、部門にまたがるデータから「意味のある分析」をし、そして「セキュリティ」をしっかり守るという時代になっています。
15枚のスライドを抜き出しただけでも結構なボリュームですが、本当に意味のあるデータと分析満載なので、213ページ全体に目を通すことをお勧めします。
次回の弊社主催の勉強会 Tackle!では、このレポートを詳しく説明しますので、ご興味ある方はぜひ東京またはSan Francisoでご参加ください。