Mary Meeker 2015年版 「5つのポイント」

June 1, 2015 スクラム代表・宮田ブログ

Wall Street Journalの一部門からスピンアウトし、群雄割拠のテクノロジーメディア業界に、1年前彗星のように現れたRe/Codeでしたが、同業大手のVox Mediaに買収されることが発表されました。Re/Code (1.5M Unique Visitor)よりも大きい競合メディアのThe Verge (12M Unique Visitor)を傘下に持つにも関わらず、Voxが今回買収に踏み切った理由ともされるのが、Steve Jobs、Bill Gatesなどの大物も過去に参加をしているCode Conferenceです。

先週開催された今年のCode Conferenceで、テクノロジー業界で大変注目されているKPCBのMary Meekerによるトレンドレポートの2015年版が発表されました。去年の164ページから、197ページとかなりボリュームは増えましたが、今のテクノロジー業界の立ち位置とこれからに向けての地平を大局的に理解するにはまたとない教科書ですので、ぜひ時間を作ってすべてのページに目を通すことをお勧めします。

注目ポイントはたくさんあるのですが、私の注目ポイントを5つご紹介します。

  1. 「縦ビデオ」の時代
  2. 「速報性でUGCに全敗」の既存メディア
  3. コマースの第二の波「モバイル × Just In Time」
  4. 「スマート家電メーカー」と化すXiaomi
  5. 「Drone大国になり損ねた」日本

◼︎1:「縦ビデオ」の時代

ネットの利用に占める「動画」の割合が急増していますが(P.13)、テレビを中心とする「横ビデオ」の時代は終わりつつあり(P. 23) 、消費者のメディア消費は、5年前には10%以下しかなかった「縦」が、2015年には29%と主流になりつつあるというデータです(P.24)。「縦ビデオ」の先駆者 SnapChatでは、動画広告のCompletion Rateが横ビデオの9倍以上という驚くべきデータも紹介されています(P.25)。以前ご紹介したFacebookのInstant Articleなどもこの流れを汲んでいます。

◼︎2:「速報性でUGCに全敗」の既存メディア

UGCのパワーについて(P.65)。ユーザが作るコンテンツは様々なメディアを通して幾何級数的に増加していますが、その「速さ」が、事件、天気、スポーツ、エンタメ、政治、あらゆるカテゴリーで、大手メディアを凌駕しているというデータです。あまりにもきれいにすべてのカテゴリーで傾向がでてくるのが強烈です。また、一つめにも関連するSnapChatのユーザが投稿した動画では、1日で4000万ビューを集めたりするのがざらにあるというデータも紹介されています(P.59)。

◼︎3:コマースの第二の波「モバイル × Just In Time」

コマース革命の第二世代として紹介されている「Just In Time」(P.74)。「お店に行って買い物をしていた時代(Brick & Mortal)」から、「Eコマース第一世代(家にものが届く)」、そしてモバイルと多様化する労働力によって実現されつつある「Just In Time(欲しいと思ったらすぐ手に入る)」。タクシーが呼べる(UBER)、レストランが予約できる(OpenTable)、買い物をしてきてくれる(Instacart)などたくさんありますが、新しいトレンドとしては、代わりに車を停めてくれる(LUXE)、代わりに包装/発送してくれる(Shyp)、代わりにガソリン入れてくれる(ZIRX)、家まで取りに来てくれる収納(MakeSpace)など新しいものもまだまだたくさん出てきています。

◼︎4:「スマート家電メーカー」と化すXiaomi

中国のXiaomiについて (P.162) 。単に「安いスマホメーカー」と侮るなかれ、2011年にスマホに参入し瞬く間に中国No.1になった同社は、すでにテレビ、カメラ、電球、体重計、スマートホームなどものすごい種類の端末を出しています。6月から米国に参入しましたが、今度IPOするFitBitが$100くらいで売っているフィットネストラッカーを、なんと$15で売り出しています。電気自動車の開発も進めていると公言しているXiaomi、今最も目が離せないハードウェアメーカーの一つです。

◼︎5:「Drone大国になり損ねた」日本

Drone市場やその可能性について詳しく取り上げられています (P.82-86)。ただ、強調しておきたいのは、20年前に日本はもともとDroneのイノベーションをリードいたものの、規制の問題などで日の目を見なかったという話(P.190)。Yamahaの農業用Droneは早くから民生ではリーダー的な存在でしたが、消費者向けでは今やユニコーンとなったDJI(中国)、3D Robotics(米国)などが席巻するなか日本の影はありません。P.140-145で、多様化する労働形態が後押しする米国の規制緩和のメカニズムが書かれていますが、この辺のブレークスルーも必要です。

 

先週は、「デジタルサイン」のDocusign、「ソーシャルメディア」のSnapchat、「メディア広告プラットフォーム」のGumGumなどが新たに資金調達しました。

また、M&Aでも、AppleによるAR技術のMetaioの買収など注目の案件が相次ぎました。AR分野は、Facebook傘下のOculusによるSurrel Visionの買収もあり、VR × ARで大きなうねりが今後ありそうです。


資金調達

[SaaS/ファイナンス] Docusign
Series F($45M) Intel Capital
「デジタルサイン」

[App/ソーシャル] Snapchat
Series E – II ($337.6M) Undisclosed Investors
「ソーシャルメディア」

[SaaS/広告] GumGum
Series C ($26M) NEA, Upfront
「メディア広告プラットフォーム」

[Enterprise/データ] Rubrik
Series B ($41M) Greylock
「データマネージメント」

[Service/画像] imgix
SeriesA- ($1.5M) RRE Ventures
「画像サービスインフラ」

 


M&A

[Content/ニュース] Re/code
N/A by Vox Media
「Techメディア」

[Others/VR] metaio
N/A by Apple
「ARツール」

[Mobile/Analycis] Pulse.io
N/A by Google
「モバイルアプリパフォーマンス」

[App/スケジューラ] Tempo AI
N/A by Salesforce
「スマートスケジューラ」

[App/ソーシャル] Path
N/A by Daum Kakao
「ソーシャルメディア」

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