イノベーションの成果がここに![SPORTS INNOVATION STUDIO DEMO DAY Report]

March 15, 2024 イベントレポート

SCRUM CONNECT 2024の後はSPORTS INNOVATION STUDIOのデモデイに

SCRUM CONNECT 2024の後は(イベントレポートはこちら vol.1 vol.2)、日本のスポーツ産業にイノベーションを起こすために、スクラムスタジオとスポーツ庁が共同で行っているSPORTS INNOVATION STUDIOのデモデイが行われました。

SPORTS INNOVATION STUDIOは2部に分かれています。前半では、日本フットサルリーグが運営するフットサルの全国リーグ:Fリーグと、四輪モータースポーツ統括団体でもある一般社団法人日本自動車連盟(JAF)と連携してチャレンジしてきた、プログラム採択企業の成果が発表されました。

後半はコンテストです。対象となるのは国内に拠点を置いてスポーツに関わる企業、競技団体、チーム、 NPO・NGO、地方自治体、個人。スポーツを通じてイノベーション創出のドライバーとなり、産業振興、経済成長、社会変革を起こしている取り組みをたたえます。

室伏長官が開会の挨拶

冒頭の開会の挨拶は、室伏広治スポーツ庁長官。ハンマー投げ日本選手権20連覇という、前人未到の記録を持つ体躯から響き渡る声で「スポーツのオープンイノベーションの取り組みが、我が国のスポーツ産業をさらに成長させるきっかけとなることを期待している」と話されました。

続いて、室伏長官と弊社宮田とのトークセッション。

室伏長官は「日本には大変大きな可能性がある。Jリーグを始めとしたプロスポーツも大きく成長を果たしている。スポーツ庁では『スタジアム・アリーナ改革』ということで、スポーツを見るだけでなく、スポーツを観戦したあとにショッピングをするとか、コミュニティを広げるとか、スポーツを核とした地域振興というのにも注目していきたい」と語られました。

宮田も「ドジャースのCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)が立ち上がったり、NFLのパッカーズのタイトルタウンのような街造りが行われていたりと、アメリカには先進的な試みがあり、大きなトレンドになりつつあります」と、海外の例を示しながら、オープンイノベーションのさらなる展開に期待を寄せました。

Fリーグの人気を高めるために何ができるかを考えた4つのプレゼンテーション

『SPORTS INNOVATION STUDIOオープンイノベーション』では、Fリーグに関するチャレンジを行った4社、モータースポーツに関するチャレンジを行った4社が、成果発表としてプレゼンテーションを行いました。

まず、Fリーグに関する発表を行った会社からご紹介すると、株式会社and.dが、情報提供をするための人材が足りていないFリーグに関してファンムーブメントを盛り上げるために、Fリーグ公式「AI観戦アシスタントボット」を開発しました。本ボットは Fリーグに関する情報を学習させており、さまざまな質問に答えたりすることができるものでした。実証実験では1000を超える会話が行われて、中には7万を超えるインプレッションを得た回答もありました。これは実のところ生成AIが珍回答を連発したためで、盛り上がりは見せたものの、かならずしも計画通りの成果とはいえないものだったようです。しかし、バズも含めて一定の成果を得たといえるのではないでしょうか?

続いては、新規ファン獲得を目的とした映像コンテンツを制作したAscenders株式会社。Fリーグのチームのトライアウトに本気で挑戦する姿を動画コンテンツとして制作、従来のFリーグYouTubeの約100倍近くの視聴回数を得て、SNSでも8.9万インプレッション以上のアテンションを得ました。フットサル好きを増やすために、まずは一歩を踏み出したといえるでしょう。

One Smile Foundationの取り組みは非常にユニークです。機械学習を使って笑顔を検出し『1笑顔=1円』の寄付に変えるという社会貢献にプロジェクトの実装を行っています。そのユニークさと、笑顔で世界を変えようというポジティブな試みが評価され、G7サミットなどを始めとして、さまざまなところで受賞歴を持つ企業でもあります。会場では、実施に客席にカメラが向けられて、笑顔とともに寄付金額が増えていく様子がデモンストレーションされました。

SOLTILO Knows 株式会社は運動を数値化するウェアラブルセンサーを導入し、心拍、GPS位置による運動強度を計測し、トレーニングに活用したり、観戦体験の向上に役立てています。Jリーグ15チームをはじめとする約400チームが導入し、日々計測に活用中とのことです。

モータースポーツの可能性を広げる4つのプレゼンテーション

続いて、JAFとともに事業共創に取り組んだ企業が紹介されました。

まずは、Swipevideoを活用し、スーパー耐久機構と世界初となるモータースポーツのマルチアングル配信をしたAMATELUS 株式会社です。こちらは、コースやレーシングカーに装備されたカメラを視聴者側が自由に選択し、スワイプすることで自分が見たいカメラに切り替えながらレースを楽しむことができるというもの。圧縮された他のカメラの映像をバッファしつつ、スワイプされたら瞬時に切り替えるところに独自の技術が生かされているそうです。

株式会社Luupは、モータースポーツ会場への新たな来場手段として、電動キックボードを提案しました。

Virtual Motorsport Lab株式会社の取り組みは、バーチャル空間内で自動運転レースを開催し、身近なモータースポーツの場作りとともに、未来のIT×モビリティ人材の育成に役立てようというものです。

実際に、VML自動運転レース中高生大会を開催したところ、4カ国から174人の参加があり、シミュレーションはなんと2万0137回行われ、ラップタイム提出も1709回行われたとのことです。これは大きな成果だといえるでしょう。

株式会社テレビ東京は、コミュニティ育成の実績を活かして、日本唯一のeモータースポーツリーグの立ち上げを目指すUNIZONEのパブリシティに協力。UNIZONEはリアルとVR空間でのレースを目指しています。

スポーツオープンイノベーション表彰式を開催

スポーツはさまざまな領域やプレイヤーを結びつけ、イノベーションを誘発するポテンシャルを持っています。そうした可能性を示す優れた取り組みを表彰し、広く世の中に伝えていくことにより、スポーツやスポーツビジネス、ひいては産業全体に活力を生み出すことを目的とし、スポーツとスポーツビジネスの先鋭的取り組みを表彰する「SPORTS INNOVATION STUDIO 2023 コンテスト」の贈賞式を行いました。

見事『ビジネス・グロース賞』『スポーツオープンイノベーション大賞』に輝いたのは、バリュエンスジャパン株式会社の『「HATTRICK Auction」~チームにとっては不要でも、ファンにとっては宝物に~』

「HATTRICK Auction」は、スポーツチームで不要になった選手のユニフォームや、試合会場内の掲示物などありとあらゆる廃棄物を「ファンにとっての宝物」としてオークション販売するというサービス。稼働手数料を除いた部分を主催者であるチームに還元し、チーム運営費補填や、チャリティや子供の育成などの地域貢献に充てています。

最近では、一生の思い出となる『体験』や、懸垂幕などの大型商品をバッグなどにリメイクしたアップサイクル品の取り扱いも行っているとのことです。

これは、運営費に困る中小のチームにとって大きな助けになるし、有名チームにとってはこれまで廃棄物となっていたもので社会貢献できるという点が、素晴らしいイノベーションだと認められました。

『ソーシャル・インパクト賞』を受賞したのは、松本山雅FC所属現役Jリーガーである浅川隼人さんが率いる株式会社resolistの『奈良県全域を走る移動式こども食堂』

現在日本の子どもの貧困は7人にひとりと意外に多いのです。ひとり親家庭においては約半数が貧困層だと言われています。浅川選手の住む奈良県では6人にひとりとさらに状況は悪く、経済的に困った経験のある人がなんと約70%……という状況。その状況を何とかしようという浅川選手の取り組みが多くの共感を呼びました。浅川選手はビデオメッセージでの参加となりました。

そして、『パイオニア賞』は、渋谷未来デザイン『AIR RACE X』が選ばれました。ひとり乗りの飛行機によるエアロバティクスやエアレースで多くの人に勇気を与えてきた室屋義秀選手の取り組みで、XRを使って渋谷の街中で時速400km/hでのエアレースを実現するものです。

多くの人に空を見上げてもらう新しい取り組みへのチャレンジが評価されました。

室屋選手は「室伏長官と名前の文字が同じ『室』ということで、年齢も近く、勝手に親近感を感じていて、くじけそうな時には室伏選手の活躍にエネルギーをもらっていました」と言うと、室伏長官も「私もエアレースなどを見て、『似た名前の人がすごい活躍をしている!』と応援していました。『AIR RACE X』もすごいイノベーションだと思うので、日本のスポーツ振興に力を貸して下さい」とコメントされました。

スポーツ×イノベーションの大きな可能性

『SCRUM CONNECT 2024』から、『SPORTS INNOVATION STUDIO』のデモンストレーションや表彰式、デモブースの展示まで、熱気にあふれる1日となり、日本のスポーツ業界×テクノロジーによるイノベーションの大きな可能性を感じることができたイベントとなりました。


◆SCRUM CONNECT 2024 & SPORTS INNOVATION STUDIO DEMO DAY イベントレポート

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