日本のスポーツ・エンタメが変わる![SCRUM CONNECT 2024 Report Vol.1]

March 13, 2024 イベントレポート

テクノロジーの力で、日本のスポーツ・エンタメは進化できる

2024年2月29日に開催したSCRUM CONNECT 2024は、スポーツ庁と取り組んだSPORTS INNOVATION STUDIOデモデイと併催となり非常に盛りだくさんな内容となりました。

ここでは、世界のスポーツ・エンタメ分野における最先端のテクノロジー活用の現状について語った、弊社創業者・ジェネラルパートナーである宮田拓弥のキーノートの概要をお届けします。また、ユニコーン企業となって日本上陸を果たしたFever、2020年に創業したばかりなのにブランド価値を急速に高めてるスポーツアパレルBanditについてをVol.1でご紹介。Vol.2では、タイガーウッズが創設した話題のTGL(運営TMRW Sports)、世界を席巻する韓国K-POPエージェンシー TITAN CONTENT、そしてArcturusMisapplied SciencesProject Admissionの3社パネルディスカッションについて、Vol.3ではSPORTS INNOVATION STUDIOデモデイについてをお届けします。

宮田が語る、2030年に向けて起こる5つの変革

世界ではスポーツやエンターテイメントの世界にテクノロジーが導入されることで大きな変革が起きています。日本ではいまだ根性論で語られることが多かったり、エンターテイメントビジネスの側面においてもテクノロジーが活かし切れていないのが現状です。だからこそ、テクノロジーを積極的に取り入れることで、大きな違いを産み出すことができるのです。

宮田は今回のイベント冒頭のキーノートセッションとして、6年後の2030年に向けて『SPORTS / ENTERTAINMENT × TECHNOLOGYで起こる大変革』を5つの側面から語りました。それは『データドリブン』『視聴体験の革新』『ソーシャルメディアドリブン』『新たなマネタイズ』『グローバル』の5つです。

個別最適化で拡大する『データドリブン』

『データドリブン』とは、観客や、チケット購入者のデータを、AIを使うなどしてインテリジェントに解析し、その結果をよりよい顧客体験、収益性の向上などに役立てること。みなさんも、欲しいと思っていた試合のチケットを手に入れるのに苦労したり、それなのに試合を見ていたら特定の料金カテゴリーの席に大きく空席があったりして不満を感じたことがあると思います。

興行側も、できる限り顧客に満足してもらって、十分な収益を上げたいと考えています。しかし、従来のチケット販売手法では、実際の売行きが想定と異なり、興行、顧客両側にとって望ましくない状態になることは少なくありません。だからこそ転売を生業にする人が中間搾取を行う隙も生まれるわけです。興行側と顧客がダイレクトに繋がり、顧客のニーズにあった商品を適切な価格で提供できるのが理想です。

この分野で注目すべき企業として宮田がご紹介し、その後のFireside ChatでRegional General ManagerのRachid Laurent Elameriさんに説明いただいたのが、世界180都市で利用されいてるユニコーン企業となった『Fever』です。

Feverは、わかりやすく言うとデータドリブン型のイベントチケットサイトです。

さまざまなイベントのチケットも買えるのですが、映画ハリー・ポッターの世界観を模した冒険ができる体験型コンテンツや、ヴァン・ゴッホの絵の中に入ったような展示、大量のキャンドルを並べた『Candlelightコンサート』など、Fever自身が運営している特別なイベントもあります。

まるで、ネットフリックスがオリジナルコンテンツと、他社コンテンツを一緒に表示するかのように、さまざまなイベントを都市別に表示して見せるのがFever。顧客の嗜好を学び取り、ネットフリックスがあなた好みのコンテンツをサジェストしてくれるのと同様に、あなた好みのイベントをサジェストしてくれます。Feverは2023年2月から日本でもサービスを開始しています。

『視覚体験の革新』がスポーツ視聴を変える!

AIによる映像や、VRでの映像体験が、『視覚体験の革新』を進めていることはみなさんご存知だと思います。たとえば、世界水泳などで競技の中継映像に世界記録や大会記録のラインが表示され、選手たちがその記録にどれだけ近づいたか(もしくは越えようとしているか)が、分かるようになっています。ワールドカップサッカーでの『三苫の1mm』は、ボール内部に埋め込まれたセンサーやVAR判定によって生まれたドラマです。

会場にブース展示を行ったArcturusは、多方向から撮影した映像を解析し、3D映像として再構成する技術を提供。格闘技などを撮影し、それをVRデバイスで視聴すると、まるでリングの上に立っているかのような感覚で試合を見ることができます。現在のところ、リングなど狭いエリアの競技を収録していますが、サッカーやラグビーなどのフィールドで使えば、『三苫の1mm』の瞬間にその真横まで歩いて行って見たりすることができるかもしれません。また、普段カメラはボールを追うものですが、サッカーやラグビーでは実はカメラに映らないウィングの位置取りが勝負を決していたりするものです。Arcturusのボリュメトリックビデオなら、グランドの端で虎視眈々とチャンスを待つ推しの選手だけを見続けることもできます。

草の根から大きく広がる動き『ソーシャルメディアドリブン』から目を離すな!

『ソーシャルメディアドリブン』つまり、SNSを中心としたソーシャルメディアを活用したパブリシティ、ムーブメントの駆動はここ15年ほど続くトレンドですが、ソーシャルメディアの存在をより積極的に使った動きも増えています。TGLもそんな動きのひとつですが、それは次回の記事でご説明するとして、ここでは、創業者兼CEOのNick West自らが登壇して語ってくれたBandit Runningについてご紹介しましょう。

Banditは、2020年と非常に最近に立ち上がったランニングアパレルブランド。感染症状況下のニューヨークで、少しでもアクティブに過ごしたいと考える人たちのために生まれました。そもそもが、ユーザーの希望から発生したブランドですし、草の根的なイベントを経て非常に多くのファンに支えられてきました。

ユーザーのフィードバックを素早く反映して製品をアップデートする姿勢も高く評価されたようです。ランニングイベントなどコミュニティビルディングにもSNSを活用していました。こうした新しいブランドがSNSにおいては、ニューバランスやナイキよりも多くのリアクションを得ているというのは注目すべきことです。

まだまだ収益化の可能性は広い『新たなマネタイズ』

スポーツ・エンターテイメント分野では非常に大きな価値が存在するのに、それがお金に変わっていかないなど、プレーヤーやスポーツを支えている人たちに収益が分配されていないという側面がありました。『新たなマネタイズ』は、テクノロジーによって新たな価値創出が行われ、収益源が生まれるという話です。

たとえば、サッカープレーヤーのメッシとApple TVの間では、会員が増えるとメッシに利益が分配されるという契約が結ばれました。その結果『MLSシーズンパス』の契約者は100万人を突破したということです。

また日本ではまだ受け入れられそうにもありませんが、アメリカでは大学アスリートを利用したNILビジネスが2021年に解禁されました。NILとは、Name(名前)、Image(イメージ)、Likeness(好感度)の略で、NILランキングトップの学生の推定報酬額は約5.8Mドル(約8.7億円)、市場全体では約1.17Bドル(約1750億円)と言われています。

また、スポーツベッテング(賭け)も、大きなお金を産んでいます。どのチームが勝つか、どの選手が活躍するかはもちろん、NFLチーフスのトラビス・ケルシー選手が恋人である人気歌手のテイラー・スイフトさんにプロポーズするかどうかまで、実にいろいろなことに賭けることができます。2024年のスーパーボール1試合でなんと2.3Bドル(3500億円)が投じられたと言いますから、ことの是非はともかくとして、その市場の大きさには驚かされます。

『グローバル化』への障壁をテクノロジーで解決する

最後に『グローバル化』。インターネットのある世界ですから、当然グローバル展開した方が市場が広がることはいうまでもありません。日本1億2000万人の市場より、世界80億人の市場ということです。しかし、そこには言語の違い、嗜好の違い、商習慣の違いなどさまざまな障壁が立ちはだかります。

これらの障壁もテクノロジーの力で乗り越えていくことができます。

例えばK-POPマーケットは世界に拡大しており、中心となる韓国と日本の市場さえ全体の1/4にも満たず、世界では2031年までに3兆円規模になると言われています。アメリカで設立された『TITAN CONTENT』というK-POPエージェンシーは、最初から世界展開を視野に入れて計画しています。

今こそが、チャンス!

これからの、スポーツ・エンターテイメント市場は、これら5つの側面において伸長していきます。日本が立ち遅れている側面も多いですが、チャレンジャーであるスタートアップにとってはむしろチャンスであるとも言えるでしょう。


◆SCRUM CONNECT 2024 & SPORTS INNOVATION STUDIO DEMO DAY イベントレポート

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