スタートアップと日本企業の力を結集[Scrum Open Inovation Day 2023 Report Vol.1]

December 22, 2023 イベントレポート

『SmartCityX』と『Well-BeingX』の報告会を日本で開催

世界各国のスタートアップと、日本の大企業を繋いで新たな共創を産み出していくScrum Studio。その取り組みの成果を発表するScrum Open Inovation Day 2023を、2023年12月7日に行いました。場所は、東京ミッドタウン日比谷のBASE Qホール。同時にオンライン配信でもご視聴いただきました。

『未来のまち』を作り出していく『SmartCityX』と、『多様なウェルビーイングの実現』に向けて共創する『Well-BeingX』のふたつを中心に成果発表を行いましたが、Scrum Studioではこの他に、『GreenX』『SPORTS INNOVATION STUDIO』などのスタジオも並走しており、今回新たに『AgeTechX』が始まることも発表いたしました。

今回は、ステージでの成果発表を5件、さらに3つのトークセッション、そしてScrum Studioからもさまざなメッセージをお届けしました。ステージでの発表から、順を追ってご紹介しましょう。

山積する社会課題と、生成AIなど新たなテクノロジーの萌芽

冒頭に挨拶をしたのは、サンフランシスコに拠点を置き、シリコンバレーの活力を日本に届けようと活動している私たちScrum Ventures CEOの宮田拓弥。

会場いっぱいにお集まりいただいたみなさんに向けて「パンデミック明けの去年はサンフランシスコのChase Centerで行いましたが、今年は日本で開催できて嬉しいです」と挨拶しました。今年の生成AIの進展ぶりや、日本でのライドシェア解禁の可能性などを取り上げて、大きく花開くテクノロジーの可能性についてもご説明しました。

続いて、スクラムスタジオ代表取締役の髙橋正巳より、Scrum Studioが取り組もうとしている事業共創について説明。

SmartCityXは3年目で、今年は『メタバース』『サステナビリティ』『地域ウェルネス』『ライフスタイルトランスフォーメーション』をテーマに、分科会を設けてより掘り下げるステップに入っています。Well-BeingXは2年目。こちらは『女性の健康、フェムテック』『栄養フードテック』『シニアケア、インクルーシブ・テック』について、世界各国からスタートアップを募り、選考を経て実際の事業共創を求めて、さまざなセッションや勉強会を行いながら、今日の成果発表を目指して努力してきた過程をご説明しました。

Michael Yanのキーノートセッション

次に、Scrum VenturesのHead of Technical Investments and Partner SuccesのMichael Yanが、『多様化するテクノロジーによって、広がるビジネスコラボレーションの可能性』と題してキーノートスピーチを行いました。

近年AIと人型ロボットがいずれも『汎用性』を獲得しました。どちらも、これまでAIやロボットが苦手としてきたものです。いまや生成AIはさまざまな問題に取り組める汎用性を獲得し、ロボットも人型になることでさまざな用途に対応できるようになりました。

これまでの延長線上にありながら、この汎用性を獲得したことで、さまざまなビジネスとのマッチングの可能性が大きくなりました。

6月のStartup Showcaseに登場した『222』の例をもって『孤独』というトレンドが社会に大きく影響を与え、AIによって新たな可能性が得られたと言われています。また、SiemensのMendix買収、BoomyとWarner Music Groupのパートナーシップをもって、大企業とスタートアップのコラボレーションに大きな可能性があることをご説明しました。

高齢者の移動に関する課題に取り組むスズキとLOOVIC

さて、最初の成果発表はスズキ株式会社とLOOVIC(ルービック)の取り組みです。

日本はこれから未曾有の高齢化社会に突入することはご存じの通り。スズキ株式会社は、普通自動車、軽自動車、商用車、オートバイの他に、セニアカーという高齢者の方が使っている歩行者扱いの小型電動車両を作っていいます。

農村部などで、セニアカーで歩道を走る高齢者の方を多くの方はご覧になったことがあると思います。高齢化によって、今後、セニアカーのニーズはどんどん増大していくと予測されています。

対してLOOVICが作っているのは、音声ナビアプリです。

たとえば、我々一般ユーザーでも、歩行中に一般的なナビゲーションアプリの画面に気を取られて、周囲に目がいかずに危険な状況になることがあると思います。LOOVICは、設定されたナビゲーションをオンにすると、位置情報に基づいて収録した音声でナビゲーションします。たとえば、交差点の少し手前で「次のコンビニの角を左に曲がって下さい」と吹き込んでおけば、そのガイドを聞きながら移動できるというわけです。

今回の取り組みでは、LOOVICをセニアカーで移動される高齢者の方に使ってもらおうと試みています。LOOVICならいつも一緒に移動している方の声で、曲がる場所や注意すべきポイントについて話してもらえるので、ひとりで移動するのが少し不安な高齢者の方でも使えるのです。

スズキ株式会社のある浜松市は、人口約80万人。縦長で、南アルプスの山々から海まで、林業や農業を行っている地域から工業地帯、平野部まで多様な性質を持つ国土縮図型の地方自治体です。その中の浜松市天竜区で、天竜二俣駅(映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の聖地としても知られています)から、二俣市街地の商店街まで、LOOVICと音声ナビを使って実証実験を行いました。

今後、浜松市を中心とした地方自治体と協力しながら、社会実装に向けてチャレンジを続けていくとのことです。

また、スズキ株式会社は、人々の生活に寄り添って地域を支える会社として、さまざまなパートナー企業と、多くの地方自治体と協力しながら、地方・地域の課題に取り組んでいきたいとのことです。

誰もが歩いて旅に出られるように。日本航空とYAMADAのfutto

次にご紹介したのは、日本航空株式会社と株式会社YAMADAの取り組みです。

ご存知の通り、パンデミックにおいて航空会社はまったく予想のできなかった大きなダメージを被りました。今では航空機の旅客需要は大きく回復していますが、航空会社はその際に、想像もできないほど需要が急激に下がることもあるということを学びました。

仕事をリタイアした、自由に旅行する時間と資金のある高齢者の旅客需要というのは航空会社にとって大切です。しかし、身体が衰えて、自由に歩くことができなくなってしまうと旅行どころではありません。誰もが健康に歩けて、旅行に出掛けられるというのは航空会社にとっては非常に大切なことなのです。

株式会社YAMADAが提供するfuttoはウエストベルトとゴムバンドを接続した『歩行筋サポートギア』です。人が立ち、歩くための筋肉を補助するので、足の筋力が低下した人でも安定して立ち、スムーズに歩けるようにサポートしてくれます。足を上げようとすると、つま先側を引き上げる筋肉をサポートしてくれるので、つま先側が上がり、つまずかずに歩くことができます。軸足側の筋肉も補助してくれるので、片足状態になっている間もしっかり立つことができます。

すでに多くの人が体験しており、健常な人でも正しい姿勢であるくように矯正してくれますし、歩く力をサポートしてくれます。誰もが、長い間、自分の足で歩けるように助けてくれるのです。さらに、下腿の力が弱く身体を支えられないために、従来歩けなかった障がい者の方でも、futtoのサポートで歩けるようになった例もあるそうです。

メタバース事業、どうする? どうなる?

次のセッションは弊社代表の宮田をモデレーターに、株式会社テレビ朝日のメディアシティ戦略センター・イベントプログラミングユニット戦略担当部⻑である荒井祥之氏、日本航空株式会社の事業開発部 戦略・企画グループ主任の大脇拓己氏、日本郵便株式会社の郵便・物流 オペレーション改革部主任である森 峻輔氏の3人に登壇いただいて、『日本におけるメタバース事業の動向』についてお話しました。

テレビ朝日ではすでに、番組の中でメタバースを取り扱ったり、メタバースアイドルを開発しようとしたり、Virtual Marketに出店したりとさまざまな取り組みを行っているとのことです。

日本航空でも特に、パンデミック下での取り組みとして、バーチャル旅行を通じて、実際の旅行関心へとつなげるプロジェクトを行ったといます。地方や海外、アニメの世界の料理を提供するリアル店舗型のレストランを運営し、プロジェクションマッピングや立体音響に加え、レストラン内の温度や湿度も調整し、現地体験に近い料理の提供を行うことで『この土地に行ってみたい!』という旅行関心を産み出す体験を創造しました。

対して、日本郵便ではまだ実際には行っていないものの、実世界で17.5万本の郵便ポストを持ち、8.2万台のバイクが年間5億キロを走っており、150年間の歴史で得たブランドがあり、それらを元にした展開が、今後いろいろと可能であるとのお話でした。たとえば、郵便配達バイクにカメラを取り付けて、デジタルツインのための情報を取得するとか、郵便ポストにソーラーパネルと通信可能なシステムを付け、情報収集可能な拠点にするとか、できることは非常にたくさんありそうです。

Vol.2では、後半セッションのご報告と、実際に開発された技術を体験できるブース展示についてご紹介します。

<後編はこちら> スタートアップが切り開くスマートシティとウェルビーイングの未来[Scrum Open Inovation Day 2023 Report Vol.2]

ブログの更新情報をメールでお届けしています。

米国の注目スタートアップ情報 テックトレンド スクラムベンチャーズの投資先インタビュー
などをブログで発信しています。合わせてメールでもお届けしていますので、お気軽にご登録ください。

ニュースレター登録

でも情報発信しています。

関連ポスト