主要プラットフォームが出揃ったVR。いま注目すべき「4つ」のカテゴリーとは?

March 23, 2016 スクラム代表・宮田ブログ

Sonyは勝負を賭けた低価格 $399

AustinでのSXSWに引き続き、先週はSan Franciscoで毎年恒例のゲーム業界イベントGDCが開催されました。

ここ数年の話題の中心であった「スマホゲーム市場」はそろそろ飽和状態を迎えつつある中で、多くのメディアで書かれている通り、今回の話題の中心は何と言っても「VR」でした。

Oculus、HTCといった他のVR用HMD(Head Mount Display)主要メーカーが価格や発売時期の発表をすでに済ませる中、今回のGDCで、満を持してSonyがPlayStation対応VR HMD、「PlayStation VR」の詳細を発表しました。

他のプラットフォームも含めて、概要を以下に簡単にまとめました。

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創業からわずか2年で$2Bという金額でFacebookに買収されたということもあり、多くの注目を集めているOculusですが、ヘッドセット自体が$599と高価であり、かつVRを動かすために$949以上のハイスペックなPCが必要ということで、一般消費者向けにはハードルが高く、すぐに広まらないだろうと考えられています。

そこで勝負を仕掛けたのがSonyです。

SonyのVRヘッドセットを使うために必要となるPlayStation4は、これまでに約3600万台を販売し、世界でもっとも売れているゲームコンソールとなっています。

このPlayStation4の成功も「価格戦略」が大きな役割を果たしたと言われています。

2013年にライバルであるMicrosoftがXBox Oneを$499で発売するや否や、それよりも$100安い$399でPlayStation4を発売しました。もちろん他の要因もあるでしょうが、この価格戦略がPlayStaytion4成功の大きな鍵だったと考えられています。

まさにこれから始まるVRの世界でも、一番最後にインパクトのある低価格を発表したSonyが、PlayStation4と同じように最初の風をつかむことができるのか、まずは今年のクリスマス商戦が注目です。

2016年は「スマホにとっての2007年」

主要なプラットフォームの価格や発売時期が出揃った今、次に気になるのは、これからの「普及スピード」です。

Sonyは、PlayStation VRの発売に合わせて22タイトルのVR対応ゲームを発表しています。

こちらは、リリース時に無料でダウンロードできる「The Playroom VR」と呼ばれるゲームです。ヘッドセットをつけたユーザがキャラクターになり、キャラクターとして他のユーザと一緒に遊べるという「新しい体験」が提案されています。

すでに3600万人いるPlayStation4ユーザが、「新しいゲーム体験」を求めて、今年のクリスマスにVRヘッドセットを購入するというのは結構期待できそうです。

とはいえ、すぐに今のスマホゲーム市場のように、VRヘッドセットが1億台、10億台という規模になるにはそれなりの時間がかかると考えるべきだと思います。

昨年、$25Bという巨大市場となり、ついにコンソール市場を抜いて、もっとも大きなゲーム市場となったモバイルゲーム市場ですが、Appleが初めてiPhoneを世に出した2007年の翌年のモバイル市場はわずか$5B(この数字はおそらくガラケーも含んでしまっています)しかありませんでした。

私は、将来的にVRゲーム/コンテンツ市場が大きく普及し、スマホゲームと肩を並べるくらいに大きくなると信じていますが、スマホゲーム市場が花盛りとなった2010年代のような規模になるには少なくともこれから3-5年かかると考えるのが妥当だと思います。

いま注目すべき「4カテゴリー」

ゲームやコンテンツの市場は、消費者向けの端末の普及に大いに影響されますが、一方で、「端末の発売直後から立ち上がる市場」もいくつもあると考えられています。

最後に、2016年、注目の「4カテゴリー」を紹介します。

一つ目は「テーマパーク」です。

アメリカの大手テーマパーク Six Flagは、今年の春からVRを使ったジェットコースターを導入予定としています。

ジェットコースターに乗る際に、パートナーであるSamsungのVRヘッドセットをかぶると、コースターの動きに合わせたバーチャルな世界(戦闘機のパイロットになり、地球を救うというストーリー)が展開され、物理的な上下動だけでなく、全く新しい体験を楽しむことができるというものです(私はジェットコースターに乗れないので、どなたか体験されたらぜひ感想をお聞かせください)。

いろんなキャラクターものも面白いでしょうし、コンテンツも随時入れ替えられるので、「既存のテーマパークでの導入」「VRをキラーにした新しいテーマパーク」「スマホ連動のキャンペーン」などいろいろな展開がありそうです。

二つ目は「VRコマース」です。

先日もブログで紹介をしましたが、米国ではすで結構盛り上がっているカテゴリーです。

大手ホームセンターチェーンLowe’sでは「HoloRoom」というVRを活用した新しい販売の形をいくつかの店舗ですでに導入しています。これまで実際に設置してみるまで雰囲気やフィット感などがわかりにくかった大きな「家具」「家電」「キッチン」などを、自宅に実際に配置したイメージをVRで見て、その場で色やタイプなどを変えながら体験できるという購買ソリューションです。家電量販店、ホームセンターにはぴったりのソリューションだと思います。また、旅行、ツアー、学校、自治体、様々な商品カテゴリーで、この「VRコマース」の取り組みは始まっています。VRコマースも、お店に1台VRヘッドセットがあればよいので、いつでもすぐに始められるのがポイントです。

三つ目は「エンタープライズ」です。

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5年で$4.5B市場にまで成長すると考えられているのが「エンタープライズ」市場です。

Lincoln Electric社は、VRを使って溶接工のトレーニングをする VRTEXという商品を発売しています。初めて溶接をする新人の教育を、実際の環境で教育する前に、VRを使って行えるというものです。コスト削減にもなりますし、遠隔地でも教育ができるというメリットがあります。溶接に限らず、様々な技能、医療、教育などでの活用が考えられます。Google Glassが出てきたときに、実は一番検討が進んだのがこの分野でしたが、VRヘッドセットの台頭で、一気に市場が拡大しそうです。

最後は「モバイルVR」です。

先日もMcDonald’sがスェーデンで展開しているハッピーセットの箱がVRヘッドセットになるキャンペーンの動画がバズりましたが、安価でかつすでにほとんど誰もが持っているスマホだけで利用できるということで、「モバイルVR」には大きな可能性があります。

Googleのダンボール製VR、Cardboardを使ったキャンペーンはこれまでにもたくさんありますが、SamsungがOculusと開発したGear VRは、価格も安く、かなりのVR体験が実現されています。

しかも、Samsungは、このGear VRをスマホの新型モデルS7のプレオーダーユーザに無料で配っています。米国ではテレビCMも行っており、かなりプッシュされている印象です。

すでに世界中にいるスマホアプリ開発企業が面白いアプリを開発すると、その規模もあいまって、非常に面白い市場になると考えています。

先日ブログで取り上げたMagic Leapや、Apple / GoogleなどもVRデバイスに取り組んでいると言われています。

まだまだ色々な展開がありそうなVRマーケットですが、2016年のうちにどんな新しいアプリケーションが提案されていくのか、非常に楽しみです。

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