とにかく「生」の時代!動画よりも「3倍」長く見られるライブ動画。
SXSWから届き続ける「生」通知
先週TexasのAustinで映画、音楽、そしてテクノロジーの巨大イベントSXSWが始まりました。
私は、今回はSan Franciscoにいながら、現地にいるメディアや友人たちのソーシャルメディアへの投稿でイベントを疑似体験しています。こうした「疑似体験」は最近非常に増えていると思いますが、今回大きく変わったと感じているのは、「生放送」のものが劇的に増えたということです。
Facebookに通知が届いて確認をしてみると、私の投稿に「いいね」や「コメント」がついたのではなく、以前にLikeをしているページが「生」放送を開始したよ!という通知であることが頻繁にあります。
テック系メディアのMashableはもとより、CNNなどのテレビ局も、頻繁に会場でレポーターがインタビューをしたり、新製品のデモの体験などを「生放送」をするというのが、今回のSXSWから一気にトレンドになった感があります。
Facebookは生放送を優先的に表示
TwitterやFoursquareなど多くのスタートアップの飛躍の場となってきたSXSWにおいて、昨年一躍注目を集めたのも動画ライブストリーミングのMeerkatでした。
しかしながら、わずか一年でMeerkatは動画ライブストリーミングを諦め、Pivotを発表しています。
その理由は、TwitterやFacebookというプラットフォーマーにその座を奪われてしまったからです。
Twitterは、SXSWでのMeerkatの躍進を見るや、まだサービスを開始していない動画ストリーミングアプリのPeriscopeを買収し、同社のサービスに組み込みました。一方、「リアルタイム性」という特徴で常にTwitterに水をあけられていたFacebookも、昨年後半からライブストリーミングに力を入れ始めています。
Facebookがセレブ限定でライブ動画をスタートしたのが2015年の8月。その後、全てのiOSユーザに公開したのが2016年の1月。さらに、最近では、News Feedのアルゴリズムを変更し、ライブ動画を優先的に表示するという力の入れようです。
実際にライブ動画は編集された動画よりも「3倍」も長く見られるというデータもあり、Facebookではライブ動画機能の開発に多くのリソースを振り向けているようです。
料理、フィットネスなど専門サイトも次々登場
「生」に未来を見出しているのはFacebookやTwitterなどのプラットフォームだけではありません。
YouTubeのCo-FounderであるSteve Chenは、プロやアマチュアのシェフが自分の料理シーンをストリーミングできる「料理」に特化した生配信サービス Nomを立ち上げました。まだ始まったばかりですが、プロのシェフがクッキングの様子を生配信するという使い方以外に、一般の人がレストランで頼んだ料理を自分で食べるのを生配信するというような使い方も想定しているようです(韓国では「モクパン」と呼ばれ、すでに大きなトレンドになっているようです)。
料理は動画領域では最も人気のあるカテゴリーの一つですが、ライブではユーザとのインタラクションが鍵、ということで、ユーザの側がGIFや動画などでシェフとコミュニケーションをできるような機能にも注力をしていくとのことです。
余談ですが、あのPSYやJared Letoなどのセレブもこのサイトに投資しています。
「フィットネス」に特化した生配信サービスも始まっています。
Tandemは、プロのトレーナーがトレーニングやヨガのレッスンを配信し、視聴者とやりとりをしながらクラスをすることができるというプラットフォーム。現在は基本的にフリーですが、将来的には生徒に課金ができるモデルなども検討しているという。
コンテンツ面でも、Facebookもいろいろと次の一手を仕掛けているようです。パートナーシップ担当が、NFLの生中継の権利の獲得に向けて交渉であることを認めています。遠くない将来、Facebook経由でアメフトの試合を見ながら、友達と盛り上がったり、キャスターや解説者とリアルタイムでやりとりをする、なんてこともあるのかもしれません。
今後の注目は「マス&ニッチ」。
テレビの時代にも「生放送」というのはあった訳ですが、その時間にテレビの前に座っていてもらわなければならない、決まった時間にしか配信できない、制作も配信も非常に大掛かりになる、など多くの制約がありました。
それがスマホ一つで、世界の15億人を超える人にリーチ出来る可能性があるのです。
天地がひっくり返ったくらいのインパクトではないでしょうか?
テレビ局であるCNNがカニバリゼーションもなんのその、Facebook上で生配信にトライするという気持ちはよくわかります。
今後の注目は、「マス&ニッチ」。つまり「全部」です。
マスに関して言うと、例えばNFLやLady Gagaのようなプレミアコンテンツであっても、これまでのスタジアム、マスメディアでは届かなかった規模のユーザにライブで、しかもインタラクティブにリーチできるようになるというのは大きなことです。しかも、Mark Zuckerbergの目線の先にはVRがあります。15億人がVRのHMDをかぶってスーパーボールを同時に見ることを想像してみください。コンテンツとしても体験としても、ビジネスとしてもそこには我々がかつて見たことのないものが存在しえるのではないでしょうか。
ニッチなカテゴリーにも注目です。例えば、バスケットボール。先日ソフトバンクが120億円を新リーグに投資をしたことがニュースになっていましたが、彼らは絶対にソーシャルメディアと組んでライブ配信をするべきです。NBAはアメリカではマスコンテンツですが、日本のバスケットボールのようなニッチコンテンツでも一部の強烈なファンはいるはずで、これまでマスでないと可能でなかった生配信が可能になれば、それを見る人、そしてそれに課金する人は必ずいるはずです。歌舞伎、落語などの芸能、相撲、ラグビーなどのスポーツ、様々なニッチ領域でライブ配信に取り組む時代がくるのではないでしょうか。
昨日ソニーのPS4 4000万ユーザに向けたVR HMDの10月の発売が発表になりました。次は、一ヶ月後の4/12にf8でMark Zuckerbergが何を発表するかに注目です。15億人のユーザを持つ彼らが、「ソーシャル× ライブ × VR」でどんな世界を描くのか、非常に楽しみです。