日本人の知らないシリコンバレー : 大企業の変革の鍵を握る「ネット系社外取締役」

July 27, 2015 スクラム代表・宮田ブログ

先日スタートした「日本人の知らないシリコンバレー」シリーズ、初回の「軍と諜報機関の役割」に続いて、本日は第二弾。

「大企業でのネット系経営者の社外取締役活用」について。

このブログでも何度か取り上げていてるDisneyのアクセラレータ、Disney Accelerator。Disneyが2014年にスタートした「スタートアップの育成プログラム」ですが、初回の参加企業から今年のスターウォーズ映画で活用されるロボット技術が生まれるなど、すでに実績を上げています。

参加企業に対してDisneyの持つコンテンツ資産をアクセス可能にしたり、レイターステージの企業を入れるなど秀逸なポイントがたくさんあるのですが、個人的に一番大きいと考えているのはCEOであるBob Igerが「自らコミットしてプロジェクトをドライブしている」という点だと考えています。Demo Dayに顔を出すCEOはたくさんいますが、プロジェクトの初日に3時間もきっちりと自らメンタリングをするCEOはなかなかいません。

すでに64歳、天気予報士からテレビ業界で叩き上げたメディアグループの経営者が、なぜテクノロジーそしてスタートアップに対してこうして柔軟で積極的になれるのか。そんなことを考えていたときにTwitterのタイムラインで目に入ってきたのが冒頭の写真です。

これはTwitterのファウンダーであるJack Dorseyが、ShowYourDisneySideというDisneyのキャラクターに変身できるアプリで、ジャックスパローに化けている写真です。ShowYourDisneySideは、Disney Accelerator参加スタートアップ Tyffonのアプリです。

たまたまこのアプリを見つけてやってみたというわけではなく、実は、Jack Dorseyは2013年からDisneyの社外取締役についているのです。

Jackを取締役に選任した意図を、Bobは当時こう話しています

“The perspective he brings to Disney and its Board is extremely valuable, given our strategic priorities, which include utilizing the latest technologies and platforms to reach more people and to enhance the relationship we have with our customers.”

ソーシャルメディアのTwitter、そして決済サービスのSquareという二つのスタートアップを創業したJackを通して、「新しい技術やユーザとの新しい関わり方を学びたい」ということです。どの程度の頻度で二人が話をしているのかわかりませんが、少なくとも取締役会の場でJack Dorseyから最新のネット業界のトレンドなどを聞くことでスタートアップとの関わりの重要性を理解し、BobにDisney Acceleratorへとコミットさせたことは想像に難くありません。

こちらがDisneyの取締役一覧で、ベテラン経営者に並んで、38歳の若きネット経営者の顔があります。加えて、FacebookのCOO、Sheryl Sandbergも名を連ねています。全ての上場企業を調査したわけではありませんが、WalmartもYahooのCEOのMarissa Mayerが社外取締役につくなど、既存業界の大手企業が社外取締役を活用してネット経営者のインサイトを取り込むというのは一つの手法となりつつあるようです。

日本でも今年の5月に施行された会社法の改正で、事実上強制となった社外取締役の任命ですが、現在は多くが天下りや弁護士の先生などが多くを占めていると聞きます。

JEITAによる調査では、日米それぞれの大企業では、ITに対する期待と投資傾向が明確に異なることがわかっています。

2013年の調査ですが、「IT投資を極めて重要」と考える経営者の割合は、米国の75%に対して日本はわずか16%。しかも、その「IT投資の理由」は、米国が「ビジネスモデル変革」や「製品開発」であるのに対して、日本はいまだに「業務効率化」がトップ。

このデータを見る限り、日本で「Disney x Jack Dorsey」のような魅力的な人事はなかなか難しそうですが、社外取締役の枠組みを使ってネットのDNAを経営に取り込むという手法は一考の価値があるのではないでしょうか。


資金調達

「調査プラットフォーム」のSurvata、「教育機関向けBI」のBrightBytes、「IoTファミリーロボット」のJiboなどが新たに資金調達しました。Survataは、Survey Monkey x メディアネットワークという感じのサービスで非常に可能性を感じます。BrightBytesは、企業向けで普及が進んでいるBIの教育機関向け。データがたまる一方の現代、「BI for XX」は今後増えそうなカテゴリーです。

[Service/調査] Survata
Series A ($6M) Alexis Ohanian, Bloomberg Beta, and IDG Ventures USA
「調査プラットフォーム」

[SaaS/教育] BrightBytes
Series C ($33M) Bessemer Venture Partners, Insight Venture Partners
「教育機関向けBI」

[HW/ロボット] Jibo
Series A – II ($12.1M) RRE Ventures, Formation 8, Samsung Ventures
「IoTファミリーロボット」

[Enterprise/データ] Palantir Technologies
Series I – II ($450M) Undisclosed Investors
「ビックデータ分析」

[SaaS/データ] DataFox Intelligence
Series A ($5M) Goldman Sachs and Green Visor Capital
「未公開企業データベース」


M&A

[SaaS/Developer] Pixate
N/A by Google
「アプリプロトタイピングツール」

[SaaS/データ] Compose
N/A by IBM
「データベースマネジメントSaaS」

[SaaS/Security] AtHoc
N/A by Blackberry
「緊急時コミュニケーションソフトウェア」

[Marketplace/Fashion] Twice
N/A by eBay
「中古女性服マーケットプレイス」

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