スターウォーズとポケモンGo:オープンイノベーションから見た共通点

July 21, 2016 by Tak Miyata

ローンチ後わずか二週間で、アクティブユーザ数で「Twitterを抜き去り」、米国で「過去最大のモバイルゲーム」となり、任天堂の株価を「1.8兆円も押し上げた」シリコンバレーのスタートアップ  Nianticと任天堂によるスマホARゲーム「Pokemon Go」。

とにかく、「すごい」の一言です。

熱中したユーザがイラクの戦地にまで入り込む、うつ病の改善に効果がある、San Franciscoで巨大なイベントが開催される、日本ではローンチしていないのにすでに内閣府がアラートを出す、などなど世界各地で本当に大きな社会現象になっています。

すでに多くの解説、分析記事があると思いますが、私が実際にプレイをしてみて感じた「何で任天堂はこれをもっと早くやらなかったのか」という点と、「DisneyのスターウォーズのBB-8ロボットのストーリーとの共通点」について書いてみたいと思います。

「Pokemon Go」はどれくらいすごいことになっているのか

Pokemon Goがどんなゲームかはすでに詳細な記述がWikipediaにもあるので省きますが、利用の状況をまずおさえておきたいと思います。

7/6、約二週間前にリリースされたPokemon Goは、リリース後わずか1日で「AppStoreでNo.1」になったわけですが、その後さらに伸び続け、ついに全米で歴史上最大のモバイルゲームとなっています。

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多くのゲーム会社がひしめき、すでに4兆円規模にもなっているモバイルゲームの歴史をたった二週間弱で塗り替えてしまったのだから驚きます。

VRブームの中、その前にGoogleのARスマホ Tangoのリリースで「非HMD」の「スマホARが来る」というポストを書いたばかりですが、そのTangoが来る前にスマホARでこんな現象が起きるとはさすがに想像できませんでした。

さらに驚異的なのは、ユーザは非常にアクティブであるということです。

DAU ( Daily Active User )は米国だけで2100万人。リリース後わずか三日でTwitterを追い抜き、あと数日でSnapchat、そしてGoogle Mapも上回る勢いです。

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いろいろなニュース映像などでご覧になっている方も多いと思いますが、モール、街中、レストラン、とにかく目を疑うくらいの人がPokemonGoをやっています。しかも老若男女問わず。ポケモン恐るべし、任天堂恐るべしです。いまだに信じられないレベルの社会現象となっています。

任天堂が陥っていたイノベーションのジレンマ

とは言え、冷静に考えると、任天堂は「何でもっと早くできなかったんだろう?」という疑問が浮かんできます。

「Pokemon Go」は、TangoやGoogle Glassのような特殊なデバイスを必要としているわけではなく(* Pokemon Go Plusというアクセサリーが今月末に発売されますが、プレイに必須ではありません)、スマホとポケモンというIPがあれば、数年前に自社でできたはずのものです。

これは日経新聞の一年前の記事から引用した「任天堂の端末の販売と営業損益のトレンド」のグラフです。

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DSやWiiUといったデバイスは、スマホの伸びとちょうど時を同じくするように販売が伸び悩み、2012年からは三年連続で営業赤字となっていました。

マリオやポケモンという強いIPがあるんだからそれをスマホ向けに出して稼げばよい、とシンプルに思うわけですが、そこは「スマホとDSがカニバる」からスマホには出せないとなるわけです。

実際昨年お亡くなりになった岩田社長もここ数年の決算発表で毎回「スマホへのIP展開」について質問されていたようですが、上記のような理由もあってか非常に消極的だったようです。

常にイノベーションを起こし続け、「自社のハードを新しいコンセプトの自社のハードでディスラプト」し続けてきた任天堂も、全く別の角度からやってきた「スマホという新しいプラットフォーム」との関係はすぐには見出せなかったということでしょう。

ちなみに2016年の全世界のスマホの台数は「約20億台」。DSの累計の販売台数は「約1.5億台」です。

典型的なイノベーションのジレンマにはまってしまたわけですね。

「DisneyのBB-8」の成功との相似点

まだまだ快進撃は止まりそうにない「Pokemon Go」ですが、大企業のオープンイノベーションという観点で、このブログでもこれまでにもなんども取り上げているDisneyのスターウォーズ最新作でのBB-8のロボットの開発ストーリーと大きな近似を感じます。

StarWars

DisneyがLucas Filmを買収したあとのスターウォーズの最新作の新キャラクター BB-8のロボットを開発したのは、SpheroというDisneyのアクセラレータに参加をしたスタートアップでした。

Disneyは、スターウォーズという新たに手にしたコンテンツをテコに「ロボット」という新しい市場に参入するにあたり、自社で一からR&Dをするのではなく、すでにロボットで実績のある「スタートアップと組む」という戦略をとりました。任天堂にとって、「スマホ」という新しい市場に参入するに当たって、Ingressというゲームですでに実績のあるNianticというスタートアップと組んだという戦略とシンクロします。

もう一つの共通点は、いずれも「トップがコミット」していた、ということです。

Spheroが参加していたDisneyのコーポレートアクセラレータ Disney Acceleratorにおいて、CEOであるBob Igerが自らメンターとしてスタートアップと長い時間を過ごしていたことはこちらのスライドにもまとめてあります。Pokemon Goも、亡くなられた岩田前社長自らが二年前から関わって作られたプロジェクトだということです。スタートアップとの連携やオープンイノベーションはなんだかブームだから、専門部署を作ってちょっとやっとけというのとは話が違うのです。先日のIoT時代に向けた孫さんの大勝負も同じ話ですね。

Disneyのケースでは、映画も大ヒットし、SheroのBB-8ロボットもヒット商品なりました。しかも、それにとどまらず、ディズニーランドでのスターウォーズアトラクションの展開、グッズ販売と非常に多面的な展開となっています。さらには同じDisney Accleratorのもう一つのテーマであった「VR」も同様に立ち上がりつつあるようで、「オープンイノベーションをテコにした新市場参入」というのが型にはまり始めているよう見えます。

任天堂は、今年の後半にNXという新しいコンソールの発売を控えています。個人的には、これまでずっとスマホをやってこなかった、VRもやらなかった任天堂が、Pokemon Goの成功を踏まえて、自社コンソールとの連携でさらに面白い展開を打ち出してくるのではと密かに期待をしている次第です。

あと、蛇足ですが、最後にもう一つ。

昨日、Dollar Shave Clubという「シェーバーの定期購入」スタートアップが、日用品大手のユニリーバに$1Bという評価で買収されました。ユニリーバは、Unilever VenturesというCVCを持っていますが、これほどの大きなスタートアップのM&Aはもちろん始めてです。任天堂、Disneyと聞くと、テック業界以外の方は関係ないと感じるかもしれませんが、全くそんなことはありません。あらゆる産業がイノベーションにさらされている時代に、こうしたオープンイノベーションやM&Aの事例はどんどん増えることになります。

もっともっと、「スタートアップが起こすイノベーション」と「大企業が持つプラットフォーム」が融合して新しい価値が生まれるオープンイノベーションが進むといいですね。

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