Square上場申請。決済処理額は3.6兆円規模へ。上場企業のCEO二社掛け持ちに注目。

October 19, 2015 by Tak Miyata

「スマホだけあればクレジット支払いが受けられる」

2007年にiPhoneが発売されてからわずか二年後の2009年に、TwitterのCEOでもあるJack Dorseyが創業したSquare社が発表したイヤフォン用プラグに差し込む簡単な作りのカード読み取り機は、当時非常に衝撃的でした。共同創業者のJim McKelveyが、自分が作ったハンドクラフト商品を販売するのにクレジットカード支払いを受け付けられなくて困ってJackに相談した、という本当に身近な課題から生まれたスマホ決済サービスは、小規模なレストラン、タクシーの運転手などそれまで同様にクレジットカード支払いが受け付けられずに困っていた中小規模事業者に瞬く間に広がりました。

そこから7年。昨年は身売りの話も頻繁に囁かれていたSquare社ですが、ついに先日ニューヨーク証券取引所にIPOを申請しました。

決済処理額は3.6兆円規模に

Square社の2015年上半期の売上は$560.5Mと、昨年($371.8)から約1.5倍の規模へと急成長しています( S-1より )。2015年通期の売上は、$1Bの規模に到達しそうな勢いです。一方、利益はまだ赤字で、昨年($79.9M)から損失額は縮小しているものの2015年上半期の営業損失は$77.6Mとなっています。

売上のほとんどを占めているカード決済手数料のベースとなる決済処理額は、2014年で$23.8B。2015年には$30B(約3.6兆円)を超えるようです。500兆円規模の巨大な米国全体のクレジットカード取引量の総額の1%程度を占めるまでに成長しています。

業種別でみると、小売(21%)、サービス(17%)、食品(15%)と順当なところが半分以上を占めています。その他、修理 / レジャー(14%)、ヘルス / ビューティー(11%)、個人(9%)、チャリティ/教育(4%)、交通(3%)など幅広い分野でSquareの決済サービスが使われているようです。

中小企業向けローンに活路

商品別でみると、クレジットカード決済の手数料が売上の過半(83%)をしめています。しかしながら、このビジネスは利益率が1%程度と非常に低いため、決済サービスで獲得した中小企業に向けた他のサービスの提供に活路を見出そうとしているようです。

一つ目は、Saasやデータ分析のサービスです。

請求書システムなどレストランなどの中小企業向けが必要なソフトウェアの提供に加え、ビジネスのデータ分析ツールなどを提供しています。まだ売上の規模は全体の4%程度と小さいですが、これまでデータ分析などしてこなかったであろう中小企業向けのソフトウェア、データ分析の市場は伸びしろはかなり大きそうです。

もう一つが、最近スタートした「Square Capital」と呼ばれるローンのサービスです。

Squareは、決済システムの提供を通して、その会社の資金状況や資金ニーズをつぶさに把握することができます。Square Capitalのサービスは、その決済データから必要な時に必要な短期資金を貸し出すローンのビジネスです。すでに2万以上の企業に対して、$100M以上貸出しているようです。この貸出額は、今年先にIPOしたLendingClubなどの専業プレイヤーよりも早い成長ということで、売上データを握っている強みを生かして、どれだけ収益の柱に育てていけるのか見ものです。

VISAやCitiも株主

Square社は、これまでに$716MをエンジェルやVCなどから調達してきています。

創業者のJack Dorseyが最大の株主で24.4%の持ち株比率。二番目は、Sun MicrosystemsのFounderのVinod Khoslaの
Khosla Venturesが17.3%(今はKhoslaにいるSquareの元COOがセクハラスキャンダルを起こした何ていうニュースもありました)。その他にも、VISA、Citi、JP Morganなどといった大手の金融機関も名を連ねています。あとは、Ashton Kutcher(俳優)、Richard Branson(ヴァージン創業者)、Marissa Mayer(Yahoo CEO)、Jeremy Stoppleman(Yelp CEO)などのエンジェルも多数名を連ねています。

上場企業二社のCEOに

先日Twitterの暫定CEOから、正式CEOになったばかりのJack Dorseyですが、今回のSquareの上場で、一度に二つの上場企業のCEOになります。

日産のゴーン社長はルノーと兼任ですが、この二社は系列企業です。また、Steve JobsやElon MuskもCEOを兼務していますが、いずれも一社(Pixar / SpaceX)は未公開企業です。同時に直接関係のない二つの上場企業のCEOをするというのは前代未聞なのではないでしょうか。

1年前にSquareは、Caviorというフードデリバリーの会社を買収していますが、シェアリングエコノミーやデリバリービジネスが伸びている昨今、CaviorはTwitterが買収してもおかしくない会社です。そこそこ近い業種の企業のCEOでいることは、今後時間の使い方だけでなく、いろいろな局面でコンフリクトがありそうです。

3年前にTechCrunch Disruptのイベントで彼が起業について語ったキーノートを聞く機会がありました。

起業について語る内容でしたが、唐突に「起業家になんかなりたくなかった」というところからスタートし、なりたかったのは「Sailer(世界を見てみたかった)」で、「Tailor(ものづくりをしたかった)」で、「Artist(世界を違う角度からみたかった)」だったという非常に哲学めいた内容、語り口が印象的でした。

Elon Musk同様、3つ目のビジネスも考えているとも噂されるJack Dorseyが、注目上場企業二社のCEOとして、これからどんな世界を見せてくれるのか楽しみにしたいと思います。


「カード決済のSquareが上場申請したみたいです」 Video from #Lyve


資金調達

「VRプラットホーム」のEmergentVR、「VRプラットホーム」の8i、「中小企業向けローン」のKabbageなどが新たに資金調達しました。EmergentVRは、「VRコンテンツ制作の一般化」にチャレンジしているスタートアップです。まだプロダクトローンチ前ですが、スマホでも誰でもVRコンテンツを制作できる技術を開発しているということです。8iは、「人物コンテンツのVR化」に取り組んでいるスタートアップです。動画を見ていただくとわかりやすいですが、家族、スター、スポーツ選手など人物のコンテンツをVR化する技術です。

[Saas/VR] EmergentVR
Seed VC – II ($2.2M) Accel Partners, Google Ventures and Rothenberg Ventures
「VRプラットホーム」

[SaaS/VR] 8i
Series A ($13.5M) Advancit Capital, Bertelsmann, Founders Fund
「VRプラットホーム」

[Services/ファイナンス] Kabbage
Line of Credit – III ($900M) Undisclosed Investors
「中小企業向けローン」

[SaaS/政府] OpenGov
Series C ($25M) AITV, Andreessen Horowitz, Formation 8
「政府向けプラットホームSaaS」

[SaaS/分析] Simply Measured
Series C – II ($4.65M) Bessemer Venture Partners and Trinity Ventures
「ソーシャルメディア分析」


M&A

[Developer/ゲーム] Longtail Studios
N/A by Ubisoft
「ゲーム開発」

[Enterprise/ストレージ] EMC
$67B by DELL
「エンタープライズストレージ」

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