プロダクト非公開で時価総額5000億円となったMagic Leap。Alibabaが出資した意味、分かりますか?

February 10, 2016 by Tak Miyata
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先週、「プロダクトがまだ発表されていない」にも関わらず、時価総額$4.5B (約5,000億円超)で$793Mもの資金を調達したスタートアップが話題となりました。

Floridaに本社を置くMagic Leap社です。

プロダクトが未公開なのに時価総額5000億

冒頭の巨大な鯨のジャンプや手のひらにリアルな象が乗っていたりする写真や映像はどこかで見たことがあるのではないでしょうか。

これらのコンテンツを実現する技術を開発しているのがMagic Leap社です。

今回、MagicLeapは、中国のeコマース大手 Alibabaをリード投資家として、時価総額$4.5Bで$793.5Mを調達しました。前回2014年のラウンドでは、Google、Andreessen Horowitzなどから$542Mを調達しており、これでプロダクトローンチ前にも関わらず「総額$1.39B」もの資金を調達したことになります。

時価総額1000億円を超えるいわゆるユニコーン企業が多く生まれている米国でも、プロダクトが一切発表されない中で時価総額5000億というのはさすがに稀なケースです。また、今回の資金調達は「歴史上最大のSeriesC」ではないかとも言われています。

果たして、Magic Leap社の何がそんなにすごいのでしょうか。

VRの先にある”Mixed Reality”という世界

来月、facebookが買収したOculusの初の製品がいよいよ出荷開始となるなど、何かと話題の多いVR。Magic Leap社は、このVRの周辺領域において、最先端の取り組みをしているとみられています。

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この記事この記事に、Magic Leapの創業者、特許、登録商標などについてよくまとまっているので、そこからポイントを抜粋してみます。

  • 創業は2011年で、創業時の事業は漫画や音楽などのインディーズレーベル。
  • 創業者でありCEOのRony Abovitzは、外科手術用ロボット開発のMako Surgicalの創業者であり、$1.6Bで売却をしている。
  • 共同創業者であり Chief Science and Experience OfficerのDr. Brian Schowengerdtは、University of Washingtonの Mechanical Engineeringの准教授でもある。ディスプレイ、人間の知覚などに関しての専門家で、100以上の特許を持っている。
  • 社員には、OpenCVの創始者Google Street View元トップ、ビデオゲームの脚本家、漫画ライターなど様々なタレントがいる。
  • Dr. Schowengerdt の研究チームは、もともと光ファイバー一本で体の微細な部分を検査するスコープの開発に取り組んでおり、その研究成果を活かし、LCDやOLEDよりも安くて小さなプロジェクターの実現に取り組んでいた。
  • 現在話題となっているVRのHMDは、その没入性の高さが評価される一方で、リアルな世界は見れない構造であり、それをつけて歩き回ることができないという課題がある。そこで、Google GlassやMicrosoft HoloLensのようにリアルな世界を見つつ、バーチャルな映像をオーバーレイするAR技術の出番が出てくる。
  • しかし、人間はリアルな世界を見ている時は、様々なものに目を焦点を合わせる、大量の光が目に反射するなどの難しさがあり、バーチャルなものを綺麗に同時に見ることは容易ではない。このため、Google Glassのように平面的な画面が浮かび上がらせるというのが現実的なソリューションだった。
  • Magic Leapはこうした様々な課題に関するソリューションを特許出願している。こちらこちらこちらです。膨大な量なので、ご興味がある方は元記事を当たってください。
  • 結局何を開発しているのかというと、上の図にあるような「メガネ型の端末」で、リアルな世界も普通に見ながら、そこに映画で見るようなリアルなCGが浮かび上がって、見たり、触ったりできる、というデバイスではないかということです。

プロダクトが未発表なので、上述も憶測に過ぎない部分も多いのですが、何やら「VRを超えるものすごいデバイス」を作っているということは間違いなさそうです。

Oculusを買収したFacebookだけでなく、AppleもVRを開発していることは間違いなさそうですし、GoogleがCardboardにとどまらずMagic Leapに投資をしているというのも理解ができます。

Alibabaはなぜ出資したのか?

さて、そんなMagic Leapですが、今回のリード投資家に選んだのはAlibabaです。

なんでeコマースの大手であるAlibabaがVR/Mixed Realityの会社に投資をしたのでしょうか。

私は直球で、Alibabaの本業であるeコマースの未来に、Mixed Realityが重要な役割を担うと判断したからだと考えています。

上の動画は、米国の大手ホームセンターチェーンであるLowe’sがすでに展開している「HoloRoom」というVRを活用した小売の新しいソリューションです。

映像にあるようにこれまで実際に設置してみるまで雰囲気やフィット感などがわかりにくかった大きな家具などを実際に配置したイメージをVRで見て、その場で色やタイプなどを変えながら体験できるという購買ソリューションです。

消費者向けではゲームや映画などがVRの主流であることは疑う余地はありませんが、「VR x 小売」という取り組みも非常によく耳にします。

急速に普及しているeコマースですが、つきまとう問題が、「実際にものが見れない」「すでに持っているものと合うかわからない」などという問題です。Magic Leapが上述のようなものであれば、Alibabaで検索した家電製品や家具を家の中に実際においてみたり、色や形を変えて試してから購入することができるようなのかもしれません。

このような世界観が実現するとすれば、これまでにeコマースでは難しかった「高額商品」や「大型商品」もAlibabaで売れるようになるかもしれません。

まさにMixed Realityによるeコマース革命。

Alibabaはそんな未来にかけてMagic Leapに投資をしたのではないでしょうか。

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