シリーズAとは、どんな段階なのか?2015年版のシリーズAを定義する

December 23, 2015 by BizLawInfo.JP
seriesA
この記事はTMI総合法律事務所所属の弁護士3名(波多江氏、竹内氏、小川氏)が運営するサイト BizLawInfo.JP の記事を加筆修正の上、転載したものです。波多江氏、竹内氏、小川氏の3名は、日本とシリコンバレーに分かれ、コーポレート、投資、M&A、個人情報、知財等、幅広い分野で先端の法律実務に従事しています。BizLawInfo.JP では、日本とシリコンバレーのStartupの実務や日本企業の海外進出を取り巻く環境に関する法律問題などについて、積極的に情報を発信しています。

シリコンバレーでは、毎日のように「あのスタートアップはシリーズAで○ドル入ったらしい」とか「あのスタートアップはまだシードラウンドでエンジェルを探している」というような話を聞きます。シリーズなんちゃら、という言葉や「シード」とか「ラウンド」とか、起業された方にとっては当たり前の言葉ですが、その正確な意味はどんなものなのでしょう。

少し調べたところ「シリーズA」という言葉には厳密な定義はなく、年を経て意味が変わってきているようです。詳しくはBizLawInfo.JPのサイトで解説していますが、今回は2011年の定義を振り返り、2015年版シリーズAを定義してみたいと思います。

2011年の「シリーズA」

Twitterに対するExitを経験している起業家のEladさんが2011年に書いたブログでは、

  • 『製品をスケールさせて、ビジネスモデルを確立する』のがシリーズAで調達した資金を用いてやるべきことであり、典型的には$7M-$15Mくらいを調達する。
  • 『ビジネス自体をスケールさせる』のがシリーズBで調達した資金を用いてやるべきことであり、典型的には$7M-数10Mくらいを調達する。
  • 『成長を加速させ、ビジネスを国際化し、M&Aで他の企業を買ったりする』のがシリーズCで調達した資金を用いてやるべきことであり、数10~数100Mを調達する。

なんてことを仰っています。これ、2015年でも同じニュアンスなのでしょうか。

2015年の「シリーズA」

最新の議論としてご紹介したいのは、著名エンジェル投資家Jason Calacanisさんのブログです。1970年生まれのJasonさんはNetscapeなどドットコム・バブルを牽引したインターネット関連企業を経たあと、超名門ベンチャーキャピタルであるSequoia Capitalなどを経て、2009年からOpen Angel Forumというエンジェル投資家と起業家を結びつけるフォーラムなどを主宰しています。その投資先も、Tumblr、Uber、Evernoteなど著名企業が含まれている、影響力のあるエンジェル投資家の一人です。そのJasonさんは、

  • 時代によってそれぞれのラウンドで調達する資金を使ってやるべきことは変わってきている。
  • それぞれのラウンドで調達できる額が大きくなってきている反面、やるべきことが前倒しで要求されるようになった。
  • 特に、以前であればSeries A/Bでやるべきことと考えられていたことが、リーン・スタートアップの普及により、かなり初期の段階で実践しておくべき事柄に変わりつつある。

ということを仰っています。以下の図をご覧下さい。Jasonさんの仰っているこのモデル、シリコンバレーのVCさんの間ではかなり共通認識に近いものがあるようです。

seriesA

図:各ラウンドで調達した資金でやるべきこと(2015年版:Jason Calcanisさんのブログを基に作成)

Pre-fundingの段階でMVP(Minimum Viable Product)まで作れ、と考えられているという部分はなかなかのインパクトがありますよね。

Minimum Viable Product とは、エリック・リースの原著では “The MVP is that version of the product that enables a full turn of the Build-Measure-Learn loop with a minimum amount of effort and the least amount of development time. [Eric Ries, The Lean Startup, at 77 (Crown Publishing 2011)]”とされていますが、邦訳では「実用最小限の製品」と訳されているようです。

このJasonさんの考えを取り入れ、2015年版シリーズAを定義しますと、

  1. 企業が直面する第1回の大規模な(外部からの)資金調達ラウンドであって、
  2. ローンチされたMVPをスケールさせるために用いる資金を調達するものであり、
  3. その対価として、歴史的に、「シリーズA」という名称のPreferred Stockを発行することが多かったことから、こう呼ばれているもの

ということになりそうです。

もちろん以上の議論はアメリカのものであって、日本のスタートアップにそのまま持ち込まれる話ではありません。ただ、日本のVCの活動にもシリコンバレーのVCの考え方は一定程度影響を及ぼすと思いますので、近い将来、同じようなことが日本で言われることもあるかもしれませんね。

JasonさんのブログはStartup界隈のお話がとても面白く語られているので、もしご興味がありましたらまた読んでみてください。


記事提供: JP-US Legal Forum〜Business, Laws & Information BizLawInfo.JP
世界を変える!日本を元気にする!!腕一本で世界に挑むStartupのFounderから、日本を支える大企業の「次の100年」を担う方、はたまたVC/エンジェル投資家の方まで。「ここ、会社法の仕組みはどうなっている?」「起業したい、会社は日米どちらに作るべき?」そんなビジネス法にまつわるたくさんの疑問、私たちも一緒に考えていきたいと思います。

最先端の技術調査、市場調査、戦略コンサルティングを行っています

スクラムベンチャーズは、年間1000社超の企業調査の実績をもとに、企業のご要望に合わせてコンサルティングやリサーチを行っています。