スマートシティをテーマに日本の大企業と世界中のスタートアップと事業共創を目指すグローバル・オープンイノベーション・プログラム『SmartCityX』、1 年目の成果を発表(後編)

July 28, 2021 by Scrum Staff

前編から続く

日本では、大企業同士のコラボレーションも起こっている

続いて、説明されたのは日本の大企業同士や、地方自治体の新しいコラボレーションモデル。これらの新しいサービスが、SmartCityXがスタートしてからわずか1年足らずで生まれたというのは驚くべきことです。

一部のサービスはすでに実証実験を開始しています。

日本の大企業には資金も、十分なノウハウ、知識、アセットもあります。それらをスタートアップ的なスピード感と、アイデアで結合させることで、日本の未来はこんなに明るくなるのです。

今回は、6つの新しいサービスが発表されました。

1. ガソリンスタンドスペースを活用する『スマートよろずや』

EVの登場によって、今後全国にあるガソリンスタンドが遊休資産となっていく可能性があります。しかし、全国各地の交通量の多い道路沿いに設置されているガソリンスタンドのスペースにはさまざまな利用価値があります。

登壇したのは、出光興産株式会社の執行役員CDO・デジタル変革室長の三枝幸夫氏と、スマートスキャン株式会社代表取締役の濱野斗百礼氏、三重県デジタル社会推進局・デジタル事業推進課新事業創出班の西尾桂氏。

全国になんと6400カ所のガソリンスタンドを持っている出光と、オンラインで予約・問診から決済、結果通知まで完結するスマート検診サービスを提供するスマートスキャン、そして多くの地方自治外と同じく、地域に多くの高齢者を抱える三重県によって進められた新しい地域エコシステム。

移動式のMRIをトレーラーで地方のガソリンスタンドに持って行って、大病院での検診が受けにくい地域で検診サービスを行います。実証実験は6月10日から三重県の東員町で行われましたが、400人の予約はあっという間に埋まってしまい、検診人数の拡大が行われたほど。地方でどれほどこういったサービスが必要とされているかが分かります。

検診はずっと同じ場所で行う必要はなく、あるエリアでの検診が終わればトレーラーで移動して次のエリアで検診を行うことができます。そして、ガソリンスタンドは『スマートよろずや構想』としてドローン基地、EVシェア、ヘルスケアステーション、農機具サブスクなど、さまざまなサービスを展開して行く地域拠点として活用されていくアイデアが練られています。

2. コロナ禍で街の人々の安全・安心を実現する『衛生ステーション』

ライオン株式会社・ビジネス開発センター・ビジネスインキュベーション部長の藤村昌平氏と、東日本旅客鉄道株式会社・技術イノベーション推進本部・データストラテジー部門部長の佐藤勲氏がプレゼンテーションしたのは『衛生ステーション構想』。

これから社会活動が回復していきますが、JR東日本などの鉄道においては回復すると同時に密集が発生することは避け難い。社会活動を促進しながら、新たな衛生習慣を根付かせていくことが必要となっていきます。

そこで『衛生ステーション』で実証実験されたのが、どのようなメッセージを出していけば人々の行動変容が可能となるかというポイントです。JR東日本が運営するコワーキングスペースで、協力したエクサウィザーズの持つ画像解析システムを使い、入り口で手を消毒する人がどのぐらいいるかを計測し、いくつかの注意喚起のメッセージ発したところでどのぐらい行動率が変わるかを計測しました。当初の利用率は72人中5人と極めて低かったのですが、メッセージの種類によっては利用率を向上させることができました。

特徴的なのはエクサウィザーズの画像解析システムです。この調査では、プライバシーに配慮して人自体は映像に写さず、人の行動を棒人間として表示することで匿名化しながら行動解析できるカメラを使っています。これにより、プライバシー侵害の危険なく人の行動を計測することができるようになっているのです。

3. 住民の行動変容を促す、日常使いできる『防災ソリューション』

ふんだんな気象データを元に発生する被害を予測し、それを人々の安全を守るための情報ソリューションとして提供する試みを行っているのは、あいおいニッセイ同和損保と渋谷区。登壇したのは、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社・経営企画部プロジェクト推進グループ長兼担当部長の小泉泰洋氏と、東京都渋谷区・区民部グローバル拠点都市推進室室長の田坂克郎氏。

近年は温暖化によって災害の激甚化が強まっています。また、人口集中、高齢化などさまざまな都市問題によって、災害被害が拡大しやすい傾向も高まっています。

特に渋谷区は世界有数の人口密集地帯であり、ビジネス街でもある上に、300万人という膨大な人口が往来する交通の要所でもあります。地震にしても、台風にしても、夜間なのか、昼間なのか、通勤時間帯なのかによって、リスク要因が大きく変動するエリアでもあります。

そこで、行ったのが気象情報を分かりやすく表示するというチャレンジ。コラボレーションしているあいおいニッセイ同和損保にとっても、渋谷区にとっても区民の安全を保つという目的は同じで、気象情報の活用が急務となっています。また、そのデータを表示するソリューションも災害の時に利用するだけでは、いざという時に活用されない可能性もあります。日常的な情報も表示し、普段から活用される防災ソリューションを目指しているとのことです。

4. デジタル時代の新たな交通安全対策『テレマティクスを活用した交通システム』

交通事故死者数が全国2位という福井県、福井県警察と、あいおいニッセイ同和損保が提供するのはテレマタグを使った実際の運転データの分析です。プレゼンテーションは、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社・経営企画部プロジェクト推進グループ長兼担当部長の小泉泰洋氏と、福井県・DX推進監(CDO)の米倉広毅氏。

ここで活用されるのは、モーションセンサーを搭載したテレマタグです。このタグは急加速、急減速、速度超過の情報を取得し、携帯を経由して運転中のスマホの利用などのデータを取得するとともにサーバに送信。ひんぱんに加減速や速度超過が行われる危険な交差点や道路などを特定し、交通事故を事前に防ごうという試みです。

これらのデータを実際に取得することで、どのエリアで大幅な速度超過が行われているのか? 急加速、急減速が行われているのはどこなのか、また多くの人がスマホを手に取ってしまっているのはどういう場所なのかを実際にデータ化することができます。

マイカー使用率が日本一で、人口10万人あたりの交通事故死者数もトップクラスである福井県にとって、交通安全は喫緊の課題であり、このテレマタグを利用して得られたデータは、その課題解決に大きく役に立ちそうです。

5. 人の流れを変えてメリットを生み出す『サッカー観戦をするファンの行動変容の実現』

日本ユニシス、あいおいニッセイ同和損害保険、JCB、Milesなどが協業した、『鹿島アントラーズファン』の行動変容に対する試みです。登壇したのは日本ユニシス株式会社・戦略事業推進第二本部事業推進二部部長の向井剛志氏、3度目の登場となるあいおいニッセイ同和損害保険株式会社・経営企画部プロジェクト推進グループ長兼担当部長の小泉泰洋氏、株式会社ジェーシービーのイノベーション統括部主事の山本圭二氏。

ここでテーマとなったのは茨城県立カシマサッカースタジアムに向かう、鹿島アントラーズファンの行動です。

潮来インターからカシマサッカースタジアムまでは平時は車で15分の距離なのですが、試合が行われる日には、なんと120分かかるほど道が渋滞します。来場者としても試合開始までに会場入りするのが難しくなると、満足度が下がりますし、地元住民にとっては鹿島アントラーズの試合が行われるたびに、生活道路が通行不能になるので、試合の日は日常的な通学・通勤ができず不便さを感じています。

そこで、日本ユニシスが提供するトラストあるデータ流通基盤『Dot to Dot』を活用し、消費者に対するインセンティブの付与を行うサービスを構築し、行動変容を起こそうというのがこのプロジェクト。潮来インター近くに駐車場を作ってシャトルバスを往来させるのはもちろん、他の場所にも飲食など楽しめるイベントを増やしたり、宿泊して観戦するプランを作ったりと、さまざまなインセンティブを提供することで、行動の場所や時間をずらして渋滞を解消するとともに、代替交通機関の利用や周辺店舗での消費等、スポーツチームを通じた鹿島地域産業の活性化を図ります。

6. 『JREAD Miles』で実現する、地方創生と地域活性化

2度目になる東日本旅客鉄道株式会社・技術イノベーション推進本部・データストラテジー部門部長の佐藤勲氏と、4度目になるあいおいニッセイ同和損害保険株式会社・経営企画部プロジェクト推進グループ長兼担当部長の小泉泰洋氏、Milesの共同創業者兼CEOのJigar Shah氏によって語られたのはアプリ『JREAD Miles』で実現する、地方創生と地域活性化です。

JREAD Milesでは、自動車による移動、電車による移動、自転車による移動、徒歩など、移動方法によって異なるポイントを付与し、コロナ禍により縮小した移動をふたたび促進させます。移動はやはりすべての経済活動の基礎であり、移動を促進することにより、経済活動全体を底上げすることができます。

さらに、自転車による移動や、歩行のポイント割合を高くすることで、健康促進も行い、健康リスクの低減も行おうというもの。

すでに2021年2~3月に実証実験を行い、アンケートやモニタリングを通じてサービスの受容性を確認してきました。今後の事業展開を継続的に検討していきます。

SmartCityXとともに日本の未来を変える挑戦を!

最後に、髙橋が再び登壇し、総括を行いました。

「プログラムの運営を通して、オープンイノベーションによって社会にどんな影響を与えることができるかを実証できて非常に興奮しています。スタートアップとの事業共創だけでなく、大企業と地方自治体の共創も同じように革新的で大きな力があると立証できたと思います。

4月にパートナーの皆さまとワークショップを開催した際に、我々はSmartCityXの力を直接体験することができました。社会への影響を最大化するために、お互いの強みをどう掛け合わせることができるか? 参加者の多様性とオープンな考え方が、この結果に結びついていると私は強く信じています」と髙橋は語りました。

そして、今後続いていくSmartCityXの2年目以降についても大きな可能性があると語りました。1年目は世界的な感染症の流行により、かなり挑戦的な取り組み……つまりオンラインでのやりとりが中心となっていました。今後、経済は再開し、直接会って話すことができるようになり、さまざまな地域で直接会ってイベントを開催できるようになるでしょう。

「SmartCityXの1年目の成果を拡大するために、2年目以降も革新と協力を続けていきます。より持続可能で、よりスマートで、よりつながりのある都市を作るために、今後も続くSmartCityXに参加して下さい」と髙橋はイベントを締めくくりました。

SmartCityXがスタートしてわずか1年ですが、これだけ数多くのプロジェクトが進行し、スタートアップの活動を加速することに成功しています。

ご覧いただいたように、日本の大企業、地方自治体の持つ巨大なアセットは、シリコンバレー流のスピード感のあるコラボレーションによって、大きな力を発揮します。今回の発表をご覧になって、みなさんも驚かれたことでしょう。

この1年目の成果をもって、日本の街は、地方は、我々のチャレンジによってまだまだ良くしていくことができると確信することができました。より多くの企業、地方自治体のみなさんの参画をお待ちしております。

SmartCityX 2020 サマリービデオ

 

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