医療トレーニングVR「Osso VR」のコロナ禍での躍進、その販売戦略とは? [Why We Invested]

December 1, 2020 投資先紹介

このコンテンツはスクラムベンチャーズの米国投資チームの Jonathan Hua によるMedium Osso VR: The Power of Remote Training in Healthcare を翻訳したものです。

新型コロナウィルスのパンデミックにより、リモートワークが当たり前のものとなり、企業は社員教育においても変化を求められています。特に医療分野では切実な問題です。従来の外科医のトレーニングは高価なシミュレーターや解剖を必要としますが、パンデミック下ではこれらの環境が整わないことが多く、結果的に教材のみでトレーニングを行う状態となっています。

またコロナ禍で病院の予算がこれまで以上にひっ迫し、新たなトレーニングマシンの導入など、より質の高いトレーニングを行うことが難しい状態が起こっています。

とはいえ、適切な医療を提供するためには、外科医の育成(トレーニング)が必要不可欠であることに変わりはありません。患者の死亡率は外科医の熟練度によって、5倍の差が出ることがわかっています。

そんな中、費用対効果の高い外科医トレーニングソリューションとして、VRが注目されています。VRを活用してバーチャル手術室を作成することで、外科医はリスクのない環境で手術のプロセスを学ぶことができ、実際の手術の前に十分な訓練を行うことができます。対面でのトレーニングが限られている現在、VRトレーニングを行うことはこれまで以上に重要になってきています。

こうした状況下で、スクラムベンチャーズは医療トレーニングVRプラットフォームを開発する「Osso VR」の重要性と可能性を再認識し、彼らのシリーズAをサポートすることにしました。シリーズAに参加できて光栄です。

Osso VRのプラットフォームは、質の高いバーチャルトレーニングに加えて、病院スタッフが外科医のスキルを評価する機能などもあり、より効率的かつ効果的に習得できるようサポートしてくれます。Oculus Questと独自のVRコンテンツ作成エンジンを組み合わせ、コンテンツライブラリとアナリティクスダッシュボードを統合して各ユーザーのパフォーマンスを解析します。

Osso VRの長期的なミッションは、遠隔トレーニングにより、多くの医療従事者が適切に外科手術を行うことを可能にし、より高い医療技術の習得を支援することです。

スクラムベンチャーズは数年前からMR技術の動向を追ってきましたが、今回、外科医療トレーニングがVR技術を活用する市場としてこれから大きく成長すると確信し、Osso VRへの投資実行にいたりました。

マルチタレントな創業者

多くの投資家のように、スクラムベンチャーズもスタートアップのファウンダーには、深い専門知識、積極的なリーダーシップ、そして強いプレッシャーの中で業務を遂行する強さを求めています。

ファウンダーのジャスティン・バラッドは、医療分野の専門知識だけでなく、テクノロジーとゲームへの理解を兼ね備えています。

ジャスティンはゲーム開発者であり、Activision/Blizzardのゲーム開発を行っていました。しかし、家族が入院した際に、病院が時代遅れの技術とソフトウェアソリューションまみれであることに気づき、医師が患者に最高のケアを提供するための障壁となっていることに気付きました。ジャスティンはこの経験を機に、医学部へ入学し、Osso VRの創業に至りました。

UC Berkeleyで生物工学の学位を取得したジャスティンは、UCLAのGeffen School of Medicineで医学博士号を取得し、主席で卒業した後、同校で整形外科のレジデンシーを行いました。また、Harvard大学とBoston Children’s Hospitalでのフェローシップを行った経験の他、Stanford Byers Center for Biodesignでバイオデザインのフェローとして在籍していました。ジャスティンは現在、人気の小児整形外科医であるとともに、Osso VRではCEOとして素晴らしいチームを築き上げています。

これまでに様々な環境で成功を収めてきたこともあり、ジャスティンが市場を理解し、製品の改良を行い、マーケティング戦略を推進し、市場に強くフィットした製品とソリューションを提供し続けるとスクラムベンチャーズは確信しています。

ジャスティン以外にもOsso VRには頼もしいメンバーが揃っています。ILMの卒業生でアートディレクターのジョナサン・サベラ(史上初のVR映画でオスカーを受賞したチームの監督経験者)と、ベテランのヘルスケアエグゼクティブであるジョシュ・ウィルフォード(CFO)が資金調達中に加わりました。

Osso VRの驚くべき実績

初めてOsso VRを訪れた際に、Osso VRのバーチャル手術室で手術を行う機会がありました。セットアップとキャリブレーションはスピーディで、ヘッドセットを装着してから約1分後にはドライバーを組み立て、仮想の膝に脛骨釘を打ち込みました。

Osso VRのデモから数か月経った今でも、各ステップでガイドされた時の感覚や、リアルタイムのフィードバックを鮮明に思い出すことができます。Osso VRの顧客や商品を体験したことがある外科医が、このプラットフォームを高く評価している理由がすぐに理解できました。

現在Osso VRは、世界最大手の医療機器企業12社を含む30社以上にサービスを提供しています。医療機器トレーニングは世界40億ドル以上の市場で、大手医療機器会社各社は医師のトレーニングに年間2億ドル近くを費やしています。医療機器企業は、医療機器を販売すると同時に、その機器を使ってもらうために医師をトレーニングする必要があるのです。

Osso VRの商品とサービスを医療機器会社の営業担当者と提携して販売することで、より早く、より効率的に病院や診療所に届けることができます。この営業戦略により、彼らはすでに遠隔手術トレーニング市場シェアの大部分を獲得しています。

加えてOsso VRは世界20カ国以上の医療関連の教育機関にも導入されています。実際に行われた臨床試験では、Osso VRを使用した後、外科医の効率が3倍向上し、医療従事者向けの新規営業の生産性は7倍向上しました。

さらに、Harvard Business Reviewで発表された研究では、従来のトレーニング方法と比較して、Osso VRを使用してトレーニングを受けた外科医のパフォーマンスは230%向上し、手順速度は20%向上、正常に完了した手順数は38%増加したなど、Ossoの驚異的なパフォーマンスが明らかになりました。

最後に

Osso VRのプラットフォームの有用性と有効性により、利用者は継続して拡大中です。外科医のトレーニングにかかるコストを大幅に削減できる医療機器企業にとって、Osso VRは強力な価値を提供しており、機器の販売サイクルを短縮することにも貢献しています。

Osso VRは引き続き、さらなる価値提供に励んでいます。コンテンツ制作チームを拡充し、整形外科だけでなく、血管内手術、胸部手術、さらには産婦人科手術などの他部門コンテンツ開発を行っています。またUIとUXのアップグレードを行い、よりリアルで没入感の高いサービスの提供に力を入れています。

加えてOsso VRがトレーニングから収集しているデータの蓄積により、今後のトレーニング体験のカスタマイズが可能になります。このデータは医療トレーニング市場で最も堅牢なデータベースとなるでしょう。

現在の遠隔トレーニング市場が拡大している一方で、ヘルスケア分野では細分化が進んでます。Osso VRの機能的で革新的なアプローチは、医療トレーニングを大きく変化させ、そして進歩させるはずです。

Osso VRは医療トレーニングにおける普遍的な問題に取り組んでおり、VRを活用することで、より多くの医師がトレーニングを受けることを可能にしています。Osso VRは今後、何百万人もの医師がより効率的・効果的なトレーニングを受け、より良い医療を提供することを可能にしていきます。

原文: Osso VR: The Power of Remote Training in Healthcare by Jonathan Hua

Osso VRのCo-Founder / CEOのJustin Barad, MDが、次回12月3日開催のTackle! にゲスト出演します。Osso VRについてさらに詳しく知りたい方は、ぜひこちらもご参加ください。

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