ペット保険&ポイントカード「Fursure」創業者インタビュー: Catherine Dennig

July 7, 2023 投資先紹介

このコンテンツはスクラムベンチャーズ Medium Founder Spotlight: Catherine Dennig, Fursureを翻訳したものです。

Fursure は、ペットの飼い主に向けのファイナンシャルプラットフォームです。ペット関連の支払いについてポイントが多く貯まるデビットカードやペット保険比較などのサービスを提供しています。

このインタビューでは、FursureのCo-FounderでCEOのCatherine Dennig氏に、スタートアップのチーム作りについて、独自のペット保険発売のきっかけについて、Fursureのこれからについてなどお聞きしました。

米国のペット産業は非常に大きなマーケットです。Packaged Factsによると、2021年の米国のペット産業(フード、グルーミング、医療)は2020年比14%増の1230億ドルに上りました。一方で、米国のペットの97%は保険に加入しておらず、飼い主たちはERの受診やペットケアに高額な支払いをしているのが現状です。Catherineと彼女のチームはこの問題の解決に取り組んでいます。

Q. Fursureのサービスについて教えてください。

Fursureは、ペットの飼い主が動物病院での治療費を支払うサポートをしています。現在、Fursureはペット保険マーケットプレイス、モバイルバンキングソリューションとして業界をリードしています。飼い主がペットの予期せぬ病気で、金銭的ストレスを被らないよう、適切なペット保険を紹介し、事前に対策できるようサポートしています。

Q. Fursureを始めたきっかけは何ですか?

飼い猫のシンバの病気がきっかけでした。シンパは金銭面でも自分で面倒を見た最初のペットでした。シンバがガンだと知ったとき、そして何万ドル(=数百万円)という治療費がかかると知ったとき、私は心の準備ができていませんでした。手元にお金がなく、結局、彼はすぐに亡くなってしまいました。

それから数年後、私はフェイスブックで働きながら、SFSPCA(サンフランシスコ動物保護施設)でボランティアをしていました。より多くの飼い主と話すようになり、ペットの治療費は、ほとんどの人にとって大変な出費であることがわかりました。ペットの飼い主はしばしば、ペットを救うか?借金をするかの?決断を迫られる。そこで私は、この問題を解決したいと思ったのです。

Q. スクラムから投資を受けたきっかけを教えてください。

スクラムを知ったのは、友人であるEmpowerlyのFounder & CEOのHanmei Wuの紹介です。Empowerlyは教育に特化した素晴らしいスタートアップで、彼女はForbes 30 Under 30にも選ばれています。彼女は、スクラムのPartnerのRyan Mendoza、そしてスクラムのチーム全員を高く評価していて、私が資金調達の真っ最中だったこともあり、スクラムを強く勧めてくれました。スクラムは、私たちのミッションや事業目標に対する情熱を高く評価してくれました。

スクラムはこれまで一般消費者向けのプロダクト、フィンテック、ヘルスケア関連の企業を支援してきているので、そういった点でも彼らの知見が役にたった面もあります。将来的にはグローバル展開を考えているので、スクラムがアジアにコネクションを持っていることは、非常にありがたいです。

Q. ペット保険マーケットプレイスとデビットカードのコンセプトはどのようにして生まれたのですか?

ペット保険が高騰していることは、誰もが知っています。ペット保険への関心は高いけれど、毎月の支払いに躊躇する飼い主も多く、かつシステムの複雑さが混乱を招いています。ペット保険をネットで検索すると、よく知らない会社がヒットし、飼い主は自分のニーズに合った最良の選択肢がわからないままになっている。自分自身も直面したこの悩みから、個々のペットに合わせたソリューションを模索しました。まずペット保険のマーケットプレイスを立ち上げ、最適な保険会社を紹介し、個々のペットに合う情報を提供することで、飼い主が十分な情報に基づいた意思決定ができるようにしました。

その反響は大きく、FursureのNet Promoter Score(顧客ロイヤリティの指標)の高さからも明らかなように、従来のペット保険会社とは一線を画しています。私たちは独自の保険を開発し、飼い主に最愛のペットケアを提供したいと考え、この夏、独自のペット保険をスタートすることにしました。

また飼い主たちは、ペットに関連して多くの出費があります。医療費だけでなく、フード、トリマー、ペットシッターなど日常的に多くの出費があるんです。ペットリワード・デビットカードは、ペット関連の支出について、より多くのポイントが貯まる仕組みです。そのポイントをペットの医療費に充てることができます。日常的なペット関連の支出もポイントが貯まることで、罪悪感なく、楽しくしてもらえたらと思っています。

ペット保険マーケットプレイスとデビットカードから学んだことを活かし、私たちはペット保険の状況を変えるというミッションに着手しました。私たちのゴールは、飼い主の金銭的負担を減らし、ペットが大変な状況でも安心できるペット保険を作ることです。この夏、一部の州で発売されるFursure Pet Insuranceは、当社のマーケットプレイス・プラットフォームの利便性と、情報の透明性を活かしたものになっています。

Q. どのようにチームの規模を拡大していったのですか?学びがあったら教えてください?

チーム作りでは多くの気づきがありました。

何よりもまず大事なことは、Co-Founderと強い絆を持ち、ビジネスに対して同じように情熱を注げるようにすることです。思いが一致していたことは、非常に大事なことだったと思います。スタートアップによっては、Co-Founder同士に時間とともにすれ違いが生まれ、事業が継続できなくなることもあります。私たちはお互いにビジネスに対して同じ情熱を持ち、強い絆を維持してきました。これは、Fursureのこれまでの成功には欠かせないものだったと思いますし、ありがたいことだと思います。

2つ目に、私たちは時間をかけてお互いの強みと弱みを理解し、異なる視点から問題に取り組むようにしました。私は愛猫シンバからインスピレーションを得ましたが、Co-Founderは16歳まで自分が健康保険に加入していなかった経験があります。彼は怪我をするかもしれないので、スポーツに参加できなかった。金銭的に制約があるときには、家族が様々な判断をしなければいけないことを知っています。また、自分たちの得意分野(私は製品管理、彼はエンジニアリングの経験があります)に基づいて、業務に取り組むようにしました。

3つ目に、最初の採用では、会社に不足しているスキルセットに柔軟に対処できる人を採用することを重視しました。複数の職務をこなし、戦略的に貢献し、問題解決を行い、プロジェクトを管理し、財務モデリングと予算管理を行い、セールスを推進し、法務と人事を処理できる人材が必要だったのです。

4つ目に、今、必要な人材を採用することです。経験豊富な業界のベテランは、スタートアップの「なんでもやる」働き方を受け入れるのが難しい可能性もあります。それよりも、全体を俯瞰することができ、自ら腕まくりをして物事をやり遂げることをいとわない人材に焦点を当てました。

5つ目に、小さなチーム(当社の場合、従業員はわずか9名)でスタートする場合、採用のハードルを高く設定することが大事だということ。新入社員一人一人が企業文化と生産性に大きな影響を与えるのだから、優秀な人材を探さなくてはなりません。スティーブ・ジョブズが強調したように「優秀な人材を迎え入れることは、平均的な人材や並みの人材と比べ、桁違いの差をもたらす」のです。

最後に、募集している職種の理想的な人物像をよく考えました。時間をかけて包括的なスコアカードを作成し、採用時に評価する明確な基準を設ける。私たちは、候補者と話す前にこの作業を行いました。そうすることで、ただ闇雲に候補者に会って時間を無駄にすることがなくなりました。Geoff Smart と Randy Street の著書『Who』は、適切なチームを形成するための貴重なインサイトを提供してくれるので、おすすめです。

Q. システム開発の経験から、学びはありますか?

どのようなスタートアップでも、最初は多くのタスクがあり、これらのタスクの多くは手作業で時間がかかります。これに対処するため、私たちはフィリピンの人材と契約しました。この作戦は非常に有益だったと思います。このおかげで、ロケットスタートをきることができました。

Q. 創業初期にやってよかったことは何ですか?

ひとつは、私たちのバリューを書き出したことです。チームメンバーを採用する前から、Co-Founderと私は、自分の人生や生い立ちを深く掘り下げて、自分たちが何を大事にしているのか?について話し合いました。Co-Founderになるのであれば、同じ価値観を共有する必要があります。そして、他の人を入社させる前に、この価値観を会社に浸透させる必要があります。

私たちは、意思決定プロセスを明確にするためにガイドラインを作りました。これまでのキャリアを通じて、相反する価値観がいかに問題を引き起こすかを目の当たりにしてきたため、いざとなったらどの価値観を優先するかと自問しました。忠誠心や卓越性といった一般的な価値観ではなく、独自のものを考えました。ビジネスのやり方や顧客との接し方を形作るような価値観を求めたのです。

Q. 会社を作る過程で学んだことはありますか?

私が学んだ最大の教訓のひとつ、いや、むしろ乗り越えなければならなかった最大の挑戦は、コントロールを手放すことです。会社を興すということは、挑戦することです。しかし、それを実現するためには、優れたチームの存在が不可欠です。自分以外のチームメンバーが各機能に秀でたチームであり、彼らは私よりも優れていると信頼しなければなりません。優秀な人材をマイクロマネジメントすることは、その人にとって最悪の行為です。Founderとして、会社を正しい方向に舵を切りながら、メンバーに責任を与えるという、適切なバランスを見つけることが必要です。私は、彼らに裁量を与えつつも、効果的に優先順位をつけ、特に顧客のために最高の品質を維持することが大切だと考えています。もうひとつ学んだことは、失敗を受け入れ、素早く失敗することの重要性です。ミスを犯すことに慣れ、恐れによってチャンスをつかむのをためらわないことです。

Q.この経済環境下での資金調達について、アドバイスはありますか?

資金調達から多くのことを学びました。たくさんのピッチを行い、フィードバックを受け、それを繰り返して、投資家の懸念や疑問に対処できるようにしました。私が学んだ重要な教訓のひとつは、事前に反対意見を予測し、それらに答えるために簡潔で説得力のある回答を準備することの重要性でした。また、私たちの差別化要素を強調し、私たちが提案できる価値を明確にしておくことも重要でした。特にこの厳しい市場環境においては、急いで投資する必要がある状況を作ることも大事でした。もうひとつの学びは、投資家のニーズや興味を引き出すことが、他の投資家につながるということです。一時期、市場が不利に思えたとき、資金調達がうまくいかないかもしれない…という状況がありました。そんな時、エンジェル投資家の1人から別の投資家の紹介があり、その投資家がリード投資家となってラウンドを成立させてくれたんです。

Q. 困難や懸念していることはありますか?

Fursureは面白い時期を迎えていると思います。変化のど真ん中にいて、これからが楽しみです。一方で、適切な時期に適切な方法で実行することを優先しなければなりません。私たちは小さなチームなので、次の資金調達までに間違いなく目標を達成できるように、時間管理していく必要があります。今のところ、問題なく進んではいますが、常に考えるようにしています。私がよく考えるもうひとつの問題は、顧客とその経済状況です。私たちは、多くの人が負債を抱えているタイミングでこのプロダクトを作っています。私たちには多くの人々を助けるチャンスがあると思いますし、それこそが私が情熱を注いでいることでもあります。

Q. Fursureのこれからについて教えてください。

飼い主に最も信頼され、愛される会社になりたい。ペットの飼い主にまつわるあらゆる部分をサポートする会社になりたいです。今、私たちが提供しているのは金融サービスです。サービスを通じて、私たちは信頼を築いている自信があります。そして将来的には、ペットケアにかかる費用の支払い全体をサポートできるサービスを提供したいと思っています。私たちは、人々がペットのために正しいことをしていると感じ、家族のために正しい決断をする手助けをしたいのです。まだブランド・ロイヤルティが確立されていないこの分野で、利用者の信頼を築くことができれば、実現できるチャンスがあると考えています。

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