学生アスリートのためのグッズ制作プラットフォーム「Campus Ink」創業者インタビュー: Steven Farag
このコンテンツはスクラムベンチャーズ Medium Founder Spotlight: Steven Farag, Campus Ink を翻訳したものです。
Campus Ink(キャンパスインク)は、学生やアスリートのためのオリジナル商品制作プラットフォームです。スポーツで活躍している学生アスリートや、大学のサークル(同好会)などで活用されており、オリジナルTシャツやグッズのデザインから、製造、販売までワンストップで行うことができます。
このインタビューでは、Campus Ink のFounder & CEOのSteven Farag氏に、会社を立ち上げたきっかけや、NILビジネスへのピボット、スクラムとの出会いなどについてお聞きしました。
Q. ご自身の経歴と、Campus Ink を始めたきっかけを教えてください。
私はイリノイ大学でエンジニアリングを学びました。でも本当の情熱は常にセールス&マーケティングにあったんです。学生時代、私はいくつかのデザインを考案し、それが流行ったことから、クリエイティブな商品の力に興味を持つようになりました。その後、Campus Sportswearという1940年代から続くキャンパス内の小さな店を買収する機会に恵まれました。2015年にCampus Inkとしてリブランディングし、この素晴らしいビジネスの旅がスタートしました。
私は、プロダクトデザインと印刷業界が大好きなんです。トラディショナルな世界に、新しいテクノロジーを持ち込み、変えていくことが楽しみです。

Q. 以前から自分の会社を立ち上げたいと思っていたのですか?
父がいくつもの事業を立ち上げるのを見ていたので、その起業家精神に刺激されたのもあると思います。大学時代には家のペンキ塗りや訪問販売もしていたので、ビジネスの世界にはいつもひかれていました。Campus Inkを正式に立ち上げたのは22歳のときでした。
Q. 起業当初を振り返ってみて、最も印象に残っている学びは何ですか?今となってはプラスに捉えられるような挫折はありましたか?
ビジネスを経営することは、現実世界のMBAです。試練です。電話やメールの対応から、配達、印刷機器の操作まで全てこなさなくてはなりません。このハンズオン経験から、私は細部にこだわることを学びました。時として、人は重要なステップを早く踏みたがるものですが、お客様を見失ってはいけません。
当初は、フラタニティとソロリティ(米国の大学の学生組織のこと)に焦点を当てたライフスタイル企業としてスタートしましたが、事業が爆発的な成長を遂げたのは、NIL(※)が解禁になった2021年7月です。私たちはすでに、大学生にオンラインでアパレルを販売することを教えるプラットフォームを持っていました。この既存のインフラのおかげで、私たちはNILマーケットに迅速に対応することができました。事業のピボットでしたが、幸いこの新たな機会に資本参加する態勢が整っていました。
開発したツールが、自分の意図を超えて、さらに価値あるものになったんです。NILは大学アスリートのためにお金を稼ぐ新しい方法を生み出し、私たちはそれに対応する準備ができていました。
(※)NILはName, Image, & Likenessの略。米国では2021年以降、学生アスリートが、自身の知名度(Name)、イメージ(Image)、好感度(Likeness)を活用したビジネスが許可され、その動きが活発になっている。
Q. NILがあなたのビジネスに与える影響を予想していましたか?
噂には聞いていましたが、その規模の大きさは十分に理解していませんでした。私たちの学生メンバーの1人が、バスケットボール選手に商品販売をすすめ、それが私たちがNILビジネスの第一号となりました。多くの学びが必要でしたが、新しい世界が開けました。
Campus Inkは、NCAAバスケットボール・ポストシーズン・ライセンスを持つ数少ないベンダーのひとつです(関連記事 College Basketball Athletes to Benefit from NCAA Tournament Apparel Sales for First Time)。ファンがチームを応援し、グッズを購入する一方で、選手たちはトーナメント中に販売されるグッズから利益を得ることができます。試合を盛り上げてくれるアスリートにも分け前が回ってくるという、Win-Winの関係なのです。
Q. 現在、Campus Ink のプラットフォームには何人ぐらいのアスリートが参加していますか?
約110の学校と約20,000人のアスリートが利用しています。引き続き拡大していて、日々新しい学校とアスリートを受け入れています。

Q. NILのこれからについて教えてください?
NILはまだよちよち歩きの段階です。今後、様々な形態が登場してくるでしょう。大事なのは、アスリートがライセンス・アパレルから得られる収益を、どう安定的に分配するかということ。アスリートたちはブランドを宣伝し、フィールドで勝利する。彼、彼女らは金銭的な成功に値します。レベニューシェアの透明性は、業界が目指すところだと思います。
Q. Campus Inkと競合他社との違いは何ですか?
第一に、私たちはこれまで学校と強い関係を築いてきました。NILの分野に参入することは、多くのアスリートを管理し、デザインを作成し、アスリートの移籍に対処する必要があるため、簡単ではありません。私たちはトップダウンのアプローチをとり、多くのPower Four カンファレンスや主要大学と協業してきました。Campus Inkは独自のポジションを築いています。
2つ目は、アスリートへの支払いが非常に早いことです。アスリートは経済的な未来を築く前の若者であり、迅速な支払いを必要としています。レベニューシェアも業界標準の2倍から3倍で、アスリートが公平な取引を受けられるようにしています。
またナイキのような大企業と共存することができます。私たちの差別化要因は、すべてのアスリートのためにオリジナルのデザインを作ることです。大手企業が対応しないやり方です。
Q. 戦略上、最も複雑な決断は何でしたか?
アスリートを第一に考えることは戦略の中心であり、複雑な決断のひとつは、アスリートに迅速かつ大規模に報酬を支払うシステムを構築することでした。
私たちの目標は、10人であろうと20,000人であろうと、それぞれのアスリートがオーダーメイドの体験を受けられるようなプラットフォームを構築することです。アスリートファーストのアプローチに基づく、タイムリーで公正な報酬へのコミットメントは、戦略上の重要なポイントであり続けています。
Q. 資金調達で学んだこと、スクラムベンチャーズとの出会いについて教えてください。
資金調達プロセスは貴重な学びとなりました。エコシステムを理解することの重要性、粘り強さ、そして誰もがラウンドに参加するわけではないことの重要性を学びました。私は早い段階でマーク・キューバンから資金を調達しました。その後、スクラムの Michael Proman に紹介され、より一般的な資金調達ラウンドを経験しました。どの経験も、資金調達について新しいことを教えてくれました。
スクラムチームは、私が重要な決断を下すのを助けてくれました。非常に大事なパートナーです。
Q. 夜眠れなくなることはありますか?
CEOとして、いつも頭の中に何かはあります。お金のやりくり、チームの幸せの維持、会社全体の成功など、常に何か心配しています。また、生涯を共にする仲間やリーダーシップチームに対する責任もあります。彼らは私を信頼して生活を任せてくれているのだから、全員で一緒に成功したいと思っています。
