自動運転、AI、Chatbot、ロボット:TechCrunch Disrupt SFから見た今のシリコンバレー

September 26, 2016 スクラム代表・宮田ブログ

9/12-14の三日間、今年もSan FranciscoでTechCrunchの巨大イベント、TechCrunch Disruptが開催されました。

一昨年は「UBER」「オンデマンド」一色であったように、その年のテック業界の「大きなトレンド」を理解するのに非常によいイベントです。今回も三日間で「35」ものセッションがありましたが、その中から私が注目した10のセッションについて簡単にご紹介したいと思います。

1 : David Marcus (Facebook, VP Messenger)

「メッセンジャー決済」

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現在Facebookが最も力を入れているプロダクトの一つ 「Messenger」のプロダクト責任者 David Marcusのセッション。今年4月の開発者会議 f8で発表したMessengerのBotですが、その精度などに課題はありながらも、すでに3.4万の開発者が毎月1万以上の新しいBotを開発しているということです。また今回「Messenger内のBotで決済が可能」になるという新しい発表がありました。これにより「会話型コマース(Conversational Commerce)」がますます加速することになりそうです。

2 : Megan Smith (White House, CTO)

「Government As A Service」

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以前このブログの「日本人の知らないシリコンバレー:米国政府には「CTO」がいる。3代目は元Google幹部。」というポストで紹介した、米国政府の現CTO Megan Smithのセッション。彼女のオバマ政権下でのデジタル政府化の取り組みについて。米国とは言えども当初は、シリコンバレーの感覚からは20年は遅れていると感じたという。デジタル政府化への取り組みはまだまだ始まったばかりで、これからどんどんあらゆる活動をデータドリブンに変えていく。「かつてSoftware eating the worldと言われたが、次はSoftware eating social problems(社会課題をソフトウェアで解決する)だ」。

3 : Sebastian Thrun  (Udacity, President)

「自動運転エンジニア養成」

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GoogleXの創業者、Stanfordの元教授であり、教育プラットフォームUdacityの創業者Sebastian Thrunのセッション。Udacityは、メルセデスベンツ、Didi、Otto、Nvidiaと協力して、今後確実に不足することが見込まれている「自動運転エンジニア」になるためのオンラインコースを発表しました。パートナー企業は、センサー統合、環境調査、軌道プランニング、機械学習などのカリキュラムを提供します。9週間のプログラムで、実際の車に搭載する自動運転用ソフトを開発するところまで行くそうです。元Googleで自動運転の開発を指揮した人間がトップをしている教育プラットフォームならではの動きですね。

4 : Reid Hoffman (Greylock Partner, Partner)

「注目の投資領域」

LinkedInの創業者で、シリコンバレーのトップVC Greylock PartnerのReid Hoffmanのセッション。投資家として注目している領域について。やはり「自動運転」「AI」の二つ、そして「モバイル」にもまだ可能性があると。「自動運転革命」が始まっていることはもう疑いの余地がない。AIに関しては特に「会話型のインターフェース」に注目している。またモバイルの分野でもPokemon Goのように「物理的に利用者が移動するようなもの」にはまだ可能性があるのではないか。

5 : Marc Andreessen (a16z/General Partner)

「AIスタートアップ」

Netscapeの創業者で、シリコンバレーのトップVC Andreessen HorowitzのMarc Andreessenのセッション。AIに関して、FacebookやGoogleなどがAI関連のエンジニアを大量に囲い込み(AmazonはEchoを1,500人で開発しているという)、かつ彼らは大量のデータを持つことから、もはや「スタートアップには難しい分野」なのではないかという声も多い。彼は、TensorFlowのようなオープンソースが急速に増えていること、Comma.aiのように一人の天才が自動運転を作り上げる事例などをあげ、AIのスタートアップはまだ注目だと考えているということでした。

6 : George Hotz (Comma.ai, CEO)

「後付け自動運転技術」

iPhoneやPlayStationのハッキングで有名なGeorge Hotzのセッション。彼の自動運転スタートアップ Comma.aiの最初の製品として、年内に「後付けの自動運転デバイス」を発売することを発表しました。価格は$999で、月額$24。TeslaのAutopilotと同程度の自動運転が可能になるといいます(現在はSan FranciscoからMountain Viewの間のみ)。Teslaが自動運転のiOSだとすると、我々は「自動運転のAndroid」になりたいということです。

7 : Stephen Curry (Golden State Warriors, Guard)

「プロスポーツ選手兼起業家」

二度のMVPにも輝いたNBAのスーパースター Stephen Curryのセッション。昨年もエンジェル投資家としてヒップホップのSnoop Doggが登壇していましたが、彼もエンジェル投資家であり起業家。最近、元チームメートと一緒に、アスリートとファンが直接繋がれるソーシャルメディアSlyceを立ち上げています。また、所属するWarriorsは、テクノロジーの導入に積極的で、モーショントラッキングや、ジャンプ力を強化するようなガジェットなどを活用しているという。

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8 : Aproova Metha (Instacart, CEO)

「オンラインスーパー」

急成長しているオンラインスーパーInstacartのCEO Aproova Methaのセッション。Instacartは、2014年に$2Bの時価総額で資金調達をしている初期のオンデマンドサービスの「勝ち組」であるが、現在は黒字化のプレッシャーと戦っているという。ユーザからの配送料に加え、パートナーの小売りチェーンからのフィー、そしてP&GなどのCPGブランドからのプロモーションフィー、と売上の多様化を実現し、来年の黒字化を狙っている。オンデマンド系は、ブームから明確に黒字化が求められる厳しいフェーズに突入しているようです。

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9 : Marc Railbert (Boston Dynamics, CEO)

「宅配用ロボット」

四つ足で走る犬型ロボットで有名なBoston DynamicsのCEO Marc Railbertのセッション。彼らの最新の宅配用ロボット「SpotMini」はサイズも小さく、階段も登り、ドアも開けられるという。動画にある通り、動きは非常に繊細で、グラスワインでもこぼさずに届けることができるという。Startship TechnologyのテストがSan Franciscoでも始まるなど、宅配用ロボットは最近注目の分野の一つです。

10 : Michael Buckwald (LeapMotion, CEO)

「VRのインターフェース」

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ジェスチャーインターフェースのLeap Motion CEOのMichael Buckwaldのセッション。長らく使われてきた「マウス」から、「タッチスクリーン」が生まれたことでスマホに大きな革命をもたらした。それと同様に「VR/AR」が普及するためには、もっと直感的かつ多様なインターフェースが必要となるという。将来的に、VRで別の大陸に住む友人とシームレスに遊ぶという世界が来るかもしれないが、そのためにはVRにも「iPhone Moment」が必要である。

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35のセッションの中から、大きなトレンドを理解するために重要と思われる10のセッションを選んでみたのですが、想像以上に「自動運転」に関してのセッション、そしてディスカッションが多かったことに驚きます。まだどこでも実用化されていないわけですが、「スマホの次」としての期待の大きさがわかります。

また「AI」「ロボット」もその隣接分野として非常に注目度が高いです。「ロボット」はB2Cに近い分野でも、「宅配」という一つのユースケースで実用化が近くなってきているような気がします。

ここでピックアップしたセッション以外も見てみたいという方は、こちらのイベント全体の動画をどうぞ。

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