日本企業のアメリカ進出よくある質問〜駐在員事務所、米国支店、現地法人なにが違う?

February 18, 2016 by Guest Writer
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この記事はTMI総合法律事務所所属の弁護士3名(波多江氏、竹内氏、小川氏)が運営するサイト BizLawInfo.JP の記事を加筆修正の上、転載したものです。波多江氏、竹内氏、小川氏の3名は、日本とシリコンバレーに分かれ、コーポレート、投資、M&A、個人情報、知財等、幅広い分野で先端の法律実務に従事しています。BizLawInfo.JP では、日本とシリコンバレーのStartupの実務や日本企業の海外進出を取り巻く環境に関する法律問題などについて、積極的に情報を発信しています。

日本で「シリコンバレー」熱が高まっていることもあり、アメリカ進出(シリコンバレー進出)に興味のある日系企業の方が増えています。また実際にそのお手伝いを法律面からサポートさせていただく機会にも多く恵まれています。

今回は「アメリカ進出に関してよく聞かれる質問」というテーマで、まとめていきたいと思います。

Q1.  日本企業によるアメリカ進出の方法って、どんなものがあるの?

日本企業のアメリカ進出の方法には大きく分けて4つあります。

  1. 事務所を置かずに、とりあえず人を送り込む方法(短期・長期の出張)
  2. 事務所を置いて、限られた範囲内で活動する方法(駐在員事務所/Rep Office)
  3. 日本の会社を外国法人として登録した上で、日本の会社として活動する方法(支店)
  4. 現地法人を作ったうえで、現地法人として活動する方法(現地子会社)

1は最も単純で最も手間がかかりません。短期出張であればVisa Waiver Program(いわゆるESTA)を使って来る方が多いと思いますし、長期出張や繰り返し出張する場合には出張ビザ(B-1Visa)を取得してくる方も多いと思います。ただし、これらのVisaでは会議出席や契約交渉、報酬を得ない取引等は行えるものの、米国企業から報酬を受け取る活動ができないなど、できることが限られていますので注意が必要です。

2、3、4はとてもメジャーな方法ですが、2と3はアメリカで活動する会社はあくまでも日本の会社であるのに対し、4は日本の会社はあくまで親会社として君臨(?)しているだけで活動するのはアメリカの会社ということになります。

Q2.  駐在員事務所って、いったいナニモノ?

駐在員事務所はその名の通り「駐在員」がいる「事務所」になります。「アメリカに進出しているどの企業にも『駐在員』はいるし『事務所』もありますがな!」というツッコミが容易に予想されますが、「現地法人」と異なり駐在員はかならず日本の会社に雇用されていますし、事務所も日本の会社(日本の会社が所有していたり、賃貸していたりする)のものです。その点では「支店」の場合と変わりませんが、「支店」と違って「駐在員事務所」は、アメリカでやって良いことにかなりの制限があります(続きは【Q.3】にて)。

Q3. 駐在員事務所って何ができるの?「支店」と何が違うの?

この手の質問に対する回答としてよく「駐在員事務所では登録(登記)が不要だけど、できる活動に制限がある。支店は登録(登記)が必要だけど、活動に関する制限は一切ない」といった説明が見受けられます。

この説明は、まあだいたいあっていますが、必ずしも正確ではありません。

そもそも「駐在員事務所」という用語は、日米租税条約の規定を基に日本人が勝手に作った概念でして、日米租税条約内にある「日本の企業についてはアメリカにある『恒久的施設』(Permanent Establishment)にあたるものを通じて利得をあげなければアメリカで連邦税を払わなくてもいいですよ」というルールを踏まえつつ、その『恒久的施設』にあたらないものを勝手に「駐在員事務所」と呼んでいるに過ぎません。

どんなものが『恒久的施設』にあたるのかなと思って日米租税条約を見てみると、第5条2項に「(a)事業の管理の場所」「(b)支店」「(c)事務所」などと列記してあって、おいおい「事務所」もあたるんかいなと、いきなり出鼻をくじかれることになるわけです。

ただ、これには例外が設けられていまして、以下の活動に限られる場合には『恒久的施設』にはあたらないとされています。

(a)企業に属する物品又は商品の保管、展示又は引渡しのためにのみ施設を使用すること。
(b)企業に属する物品又は商品の在庫を保管、展示又は引渡しのためにのみ保有すること。
(c)企業に属する物品又は商品の在庫を他の企業による加工のためにのみ保有すること。
(d)企業のために物品若しくは商品を購入し又は情報を収集することのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。
(e)企業のためにその他の準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。
(f)(a)から(e)までに掲げる活動を組み合わせた活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。

ですので、「情報収集をさせるために事務所を設けて人を送り込む」といった場合には、(e)に基づいてその事務所は『恒久的施設』とはみなされず、その事務所があることによってアメリカで連邦税が課されることもなくなることから、晴れて「駐在員事務所」の称号(?)を得ることができるわけです。

Q4.  駐在員事務所でもVISAはしっかりでるの?

駐在員事務所に対してVISAの発給を禁止するルールはないため、一般論としては駐在員事務所でもVISAは出ます。

例えばL-1 Visaも出る可能性がありますし、E-2Visaも出る可能性はあります。ですが、感覚としては、駐在員事務所の場合Visaが出るかは正直かなり博打に近いところがあるといいますか、少なくとも法人や支店(ブランチ)の場合と比べてハードルが上がるのは否定できません。やはりアメリカ側からすれば「しょせん駐在員事務所で、やることも限られてるのに、いったい何するのさ?本当にアメリカに貢献してくれるの?」という疑問がふつふつと湧いてくるからではないかと思います。このほか実際上、審査官も会社を設立した上での書類(例えば株式関係書類)に慣れていて、会社形態を前提とした手続の方がスムーズだというのも感じるところです。

また例えば新規進出のL-1ビザの場合、ビザが出ても最初は1年間限定で1年後に更新の審査を受けることになりますが、この審査が近年厳格化していると言われています。ずっと駐在員事務所のままだと更新がなされないリスクが高く、結局のところ近い将来法人化等により駐在員事務所から脱却しなくてはならないということで、駐在員事務所の形態をとるメリットはあまり大きくないと言うこともできます。

Q5. Zen Square、DG717等々に日本企業の従業員が「派遣」されているみたいだけど、あれって何なの?

いくつかパターンがあります。

よく見られるパターンは日本企業が場所を間借りして、そこを事実上の駐在員事務所又は支店という位置づけにした上で従業員を派遣するというものです。

例えばインキュベーターとして有名なPlug&Playには多くの日本企業さんが入っていらっしゃいますが、これは各企業さんがPlug&Playから場所を借りて、そこを本拠に活動しているだけの話です。同じようなことは、Zen Square、DG717等でも行われています。この場合、派遣されている人は、あくまで派遣元の業務を行うことがミッションです。場所の提供者やその関係者から色々とアドバイスをもらえるかもしれませんが、あくまでそれは自社の業務を行うためのサポートでしかありません。

他方で派遣元の業務を行うのではなく、例えば「Venture投資に精通しているScrum Venturesさんの下で、Scrum Venturesさんの仕事をしながら先端実務を学びたい!」なんていう要望もある場合があります。このような場合、所属先の企業からE-2なりL-1なりのVisaを出してもらってScrum Venturesで働くといったことは基本的にできません。なぜならE-2なりL-1は雇用と結びついていて、雇い主のためにしかアメリカで就業できないからです。

じゃあどうするか。

J-1Visaをとってトレイニーなりインターンなりとして働くという方法です。J-1は数多あるVisaの中では比較的とりやすいVisaですし、インターン先で適法に研鑽を積むことができますので割とお勧めです。( Scrum編集注: Scrum Venturesではまさにこういった グローバル人材育成ブートキャンプ を行っています)

ほかにもB-1Visaで頑張っていらっしゃる人がいるとか、実はESTAで頑張ってますという人がいるとかいないとか聞いたこともありますが、違反がバレたときに被る不利益があまりにも大きいのでご注意ください。

こちらの記事では駐在員事務所を中心に解説しましたが、BizLawInfo.JPサイトの記事では「支店」についても詳しく解説しています。さらに気になる方はぜひそちらものぞいてみてください。


記事提供: JP-US Legal Forum〜Business, Laws & Information BizLawInfo.JP
世界を変える!日本を元気にする!!腕一本で世界に挑むStartupのFounderから、日本を支える大企業の「次の100年」を担う方、はたまたVC/エンジェル投資家の方まで。「ここ、会社法の仕組みはどうなっている?」「起業したい、会社は日米どちらに作るべき?」そんなビジネス法にまつわるたくさんの疑問、私たちも一緒に考えていきたいと思います。

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