リクルートに続きトヨタも。「データを持つ者」が取り組む「シリコンバレーAI研究所」。

November 9, 2015 by Tak Miyata
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先週、リクルートとトヨタという日本を代表する大企業二社が、相次いでシリコンバレーにおける研究所の設立の発表をしました。

いずれもテーマは「人工知能(AI)」です。

どちらも始まったばかりもしくはこれから設立される話ではありますが、リリースの内容やトップに就任する人のバックグラウンドから、それぞれの戦略を覗いてみました。

リクルート「膨大なライフイベントデータへの機械学習の適用」

まずはリクルート。リリースはこちらです。

今年4月に、AI研究所として再編されていた研究所、Recruit Institute of Technology (RIT)のシリコンバレー拠点を、新たに設立するというのがその趣旨のようです。

今回代表に就いたのはAlon Halevy氏。元Googleの研究者で、構造化データのデータマネジメント分野の責任者だったということ。

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また、今回代表に就任するHalevy博士だけでなく、4月のAI研究所への再編時にも、CMUやColumbiaなどの有名なAI研究者を3名アドバイザーに迎え、StanfordとMITとも共同研究をスタートしていたようです。アドバイザーの方々はいずれも機械学習の研究者のようです。

研究内容なのですが、リリースには「産業界と生活者を結びつける「No.1のマッチングサービス」を実現し、生活者一人ひとりのポジティブな行動を支援していきます。」とあります。

確かにリクルートは、旅行、グルメ、住宅など人々のライフスタイルに関する幅広いサービスを展開しており、GoogleやFacebookなどとはまた違う、実際のアクション、レビューなどに関する膨大なデータを持っているはずです。人々が検索をしなくなりつつあるスマホ / IoT時代において、AIを活用した精度の高いマッチングを実現すれば、新たな巨大情報プラットフォームになる可能性を秘めているような気がします。

この話を考えていて、1999年にリクルートが立ち上げた「ISIZE」というサービスを思い出したというと年齢がバレるので内緒です。

トヨタ「自動運転への本格対応。そしてシニア」

次にトヨタですが、リリースはこちらです。

2016年1月に、AIの研究、開発拠点として、シリコンバレーに「Toyota Research Institute (TRI)」を新たに設立するということです。

その予算は5年間で$1B(約1200億円)と、1四半期で$1BをかけているFacebookと比べると小さく見えますが、かなりの規模です。ちなみに、社員数は200名規模だということです。

今回代表に就いたのは、6月にブログでも取り上げたDARPAのロボットコンテスト、DARPA Robotics Challengeの責任者 Gill Pratt氏。ロボットの分野の世界的権威ということで、ハードとソフトの両面からのアプローチが求められる自動車会社にとっては適任でしょう。

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研究内容ですが、リリースでは「事故を起こさないクルマ、誰もが移動の自由を享受できるモビリティ、高齢者の尊厳ある老後をサポートするロボットなど、人と協調できる人工知能技術の開発に取り組む。」としています。

自動車メーカーではないGoogleがかなり先行している感のある自動運転車の分野ですが、自動車メーカーのトップ、トヨタがこの分野にどう取り組んでいくのかが非常に楽しみです。

また「シニア向け」も注目したい分野です。

今の車が全て自動運転に置き換わっていくということに関しては、ビジネス、規制など色々な面から議論も大いにあると思います。一方で、これから急増する高齢者が、年を重ねていっても自由に買い物や病院に行けるための「新しい交通手段」というもののニーズは、これからの社会インフラという側面からも、非常に大きいのではないでしょうか。

共通点は「膨大なデータを持っている」ということ。

今回相次いでAI研究所のシリコンバレーへの設立を発表したリクルート、トヨタの共通点は、いずれも「膨大データを持っている」ということです。

正確に言うと、トヨタは会見でPratt博士が述べられているように、年間約1000万台販売される車、10年間で約1億台の車から膨大な走行データを得られる可能性があるという意味です。

人工知能、自動運転ではこの「データ」の蓄積が鍵となるため、Googleも日々街中で自動運転車をテスト走行し、データを蓄積しています。
トヨタの今回の発表に関して、米国のメディアでは「トヨタがソフトウェア会社になる意思表明だ」という記事もありました。一般的に「ハード至上主義的」なところが強い日本企業ですが、「データ」という点で強みを持つ二社が、ソフトウェアの大きなトレンド、AIの分野の研究で、今後どのような研究成果を生み出していくのか、かなり注目して見ていきたいと思います。

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