ファウンダーによる、ファウンダーのためのAI会計ソリューション「Truewind」 [Why We Invested]
このコンテンツはスクラムベンチャーズ Medium Truewind: Why We Invested in This Finance-for-Founders Solution を翻訳したものです。
スタートアップの初期段階において、ファウンダーは重要な存在です。スタートアップをアイデアからビジネスとして成功させるために、ファウンダーには技術的な洞察力とビジネスセンスだけでなく、優先順位を的確に決める能力も必要とされます。いかに革新的なプロダクトを開発しても、顧客獲得や資金調達に取り組むための時間、リソース、知識なしにはスタートアップの成功は難しいものです。
ほとんどのスタートアップのファウンダーは複数の役割をこなします。プロダクトやマーケティングの責任者から人事まで、彼/彼女達はあらゆる仕事をこなさなければなりません。しかし、財務・会計という専門領域はなかなか難しいのが実情です。スタートアップの成長率が今後10年間でさらに高まることが予測される中、この問題の解決策を必要とするファウンダーは増え続けるでしょう。
Truewindのファウンダーたちは、この課題を解決するためのファイナンスソリューションを開発しています。彼らはあらゆるビジネスシステムをまたぎ、自動で帳簿を作成するソリューションに取り組んでいます。Truewindは、ファウンダーがファウンダーのために作ったファイナンスソリューションであり、人工知能を活用し、スタートアップ特有のニーズにも対応しています。
スクラムベンチャーズがTruewindに投資した理由、そしてこのソリューションが、世界のスタートアップが成功する確率をあげる理由について解説します。
ファウンダーに優しいファイナンスツールへの需要の増加
スタートアップは、どんなに良いプロダクトを作っても、それだけで成功できるわけではありません。特にテック系スタートアップは競争が激化し、市場シェアと投資家の資金を巡る争いが加速しています。このような環境で成功するために、スタートアップはこれまで以上に販売管理費や一般管理費用に予算を割き、適切に管理する必要があります。
TruewindのファウンダーでCEOのAlex Leeは、既存のソリューションがこういったファウンダーのニーズにこたえていないことに気づきました。
JavaScriptが登場して以来、企業は会計を「自動化」しようとしてきました。Alexは言います。「会計が単なるルールの集合であれば、自動化は難しくないでしょう。しかし実際のところは、そうではない。会計はビジネスの文脈を必要とするものです。だから簿記の完全自動化は、まだ実現されていないのだと思います」。
現在利用可能なソリューションは主に2つのカテゴリーに分けられ、それぞれ長所と短所があります。
1. Quickbooksのようなセルフサービス型の会計ツール
これらのソリューションは手頃な価格で提供されていますが、手作業での維持管理が必要で、会計士や財務アナリスト向けに設計されています。
2. Pilot、Bench、EscalonなどのフラクショナルCFO会社に簿記やサービスを外注する
これらのソリューションは正確な会計処理を保証し、多忙なファウンダーにとって非常に便利です。ただ非常に高価であり、ファウンダーが状況を理解するのに一手間かかるのが実情です。
ファウンダーは、社内モニタリングや投資家への共有のために正確な財務情報が必要です。そのため多くの企業は、社内で採用できるまでは、外部の記帳代行やCFOのサービスを利用することになります。タイトな予算の中で、コストを捻出できればの話しです。
Alexは、より多くのスタートアップがアーリーステージを乗り越えるために、より透明性が高く、アクセスしやすい&共有しやすい財務データを作成するためのソリューションをスタートアップに提供したいと考え、Truewindを開発しました。
ファーストインプレッション:Truewindの印象的なファウンダーとプロダクト
スクラムベンチャーズが2022年11月にAlexと初めて会ったとき、彼はこのビジョンの実現に向けて順調に進んでおり、またとない投資機会としてデューデリジェンスを開始しました。
VCが投資する際、ファウンダーがどんな人物であるかは、意思決定の大きな割合をしめています。まだプロトタイプを開発しているようなアーリーステージのスタートアップについては、なおさらです。
Alexは、Yコンビネータープログラムに2度も参加しており、元VC投資家でもあるため、フィンテックとスタートアップについての十分な経験を持っていました。加えてビジネスを成長させるための次のステップを決める際にも、非常に現実的なアプローチを取る能力を持っていました。とはいえ、彼のビジネス経験だけがTruewindの唯一のアドバンテージではありません。
AlexはUSCで航空宇宙工学を学び、ボーイング社で数年間働いた経験もありますが、Truewindの構築に必要なスキルをすべて持っているわけではありませんでした。コアとなる機能を思いついたAlexは、独学でコーディングを学び、2022年12月にコファウンダーでCTOのTennison Chanを迎える前に実用的なプロダクトを開発しました。Alexには自ら学ぶ力、そして実行力があるのです。
その結果、Truewindは、非常に早い段階で実際に使えるプロトタイプと有料顧客を持つという稀有な存在になりました。また、YCコミュニティのメンバーであるAlexは、財務バックオフィス業務のソリューションを必要とするスタートアップのファウンダーやCEOから、大きな関心を持たれていました。Truewindの理想的な顧客達です。
Truewindが真の意味でファウンダーにフォーカスしたフィンテックソリューションである理由
Truewindを投資対象として評価する際、スクラムの投資チームは、Alexの将来へのロードマップだけでなく、初期プロダクト自体の完成度の高さにも感銘を受けました。
多くのスタートアップがまだワイヤーフレームやプロダクト開発計画に取り組んでいる段階で、Truewindはすでに実際に役にたつソリューション、つまりアーリーアダプターが喜んでお金を払うようなプロダクトを持っていました。発売開始から半年も経たないうちに、Truewindはすでに10社以上の顧客を獲得していました。
これらの顧客の多くは、シンプルでユーザーフレンドリーなインターフェースで、会計管理や財務レポートの共有を可能にするツールを必要としていました。PilotやBenchのような他のツールでは、このニーズに応えることはできませんでした。財務の専門知識を持たないファウンダーにとっては非生産的で、人的ミスが発生しやすい面倒な手作業が必要だからです。
Truewindはどのようにしてこれを実現したのでしょうか?Alexは、BenchやPilotのようなソリューションが抱える最大の課題の1つは、ユーザーがビジネスの状態を正しく把握するためのデータ分析ができないことだと考えました。
データ分析を行うには、データをデータウェアハウスに移し、ディメンションスキーマ(ビジネスの状態を要約した1つの大きな表)としてまとめることができるシステムやソリューションが必要です。そのためには、データパイプラインを構築するデータエンジニア達と、必要なデータ処理と変換を行うデータアナリスト達が必要です。
「会計がビジネスで起こる一連のイベントである場合、それら全ては本番システムに取り込む必要がありますが、従来のデータスタックでは簡単なことではありません」と、Alexは言います。「そのため、完全自動化された財務分析、完全自動化された財務、完全自動化されたあらゆるものは実現が非常に困難なのです」。
例えば、簿記担当に求められるごく一般的な作業は、請求書を読み、契約書を読み、どのデータが入ってきたかを把握し、発生費用を計上する必要があるかどうかを判断することです。これらのステップはすべて自動化の対象となります。
一方で、サービス期間や請求書を送るタイミングなど、自動化されたプロセスでイレギュラーが発生した場合は、それらを手作業で行うことになります。そこにAIが介在することで、その手作業をより簡単にすることができます。
TruewindのAIソリューションは、イレギュラーな請求書や契約書を読みとり、適切な内容をサジェストしてくれます。簿記担当が行うべきことは、AIによる提案を確定したり、簡単な変更を加えるだけです。AIによって大幅に時間を節約することができます。
Truewindの前に広がるチャンス
Truewind は、同カテゴリーの他のソリューションとは異なり、スタートアップが会計、計画、報告を簡素化、自動化することを可能にします。
Plaid経由で企業の銀行口座に接続し、取り消し可能な読み取り専用アクセスでデータの安全性を維持することができます。
OpenAIの学習モデルGPT-3を使用し、銀行の明細書を処理可能な取引データに変換します。
すべての金融口座のデータ統合と帳簿管理を合理化します。
これらの機能を組み合わせることで、Truewindのユーザーは、計画や会計のためのシンプルで直感的なワークフローを構築し、社内や投資家と共有できる評価レポートを作成する財務モデルを構築することができます。
GPT-3を製品に統合することで、Truewindはこの分野で多くの人を悩ませてきた自動化の問題を解決しています。中小企業の帳簿作成と企業計画のための120億ドルの市場は、今後も成長し続けるでしょう。
現在、30社以上の顧客を持ち、数十社が新たに契約を待っているTruewindは、今後2年間でSaaS(Software-as-a-Service)サブスクモデルに取り込むべく、準備を進めています。メディアでの紹介を受け、同業他社がTruewindを評価し採用する可能性もあります。その結果、ハロー効果によって、Truewindは顧客とともに成長することができるのです。
Truewindの次なる目標は?
AlexとTennisonは、未上場企業の財務予測やレポートの記録システムを構築するため、チーム編成スタートし、強力なエンジニアを迎え入れています。
現在、彼らはプロダクトの改善(例えば、ChatGPTを統合して、ユーザーの銀行口座の承認とデータの取り込みをさらに自動化すること)と新規顧客の獲得に注力しています。顧客基盤の拡大とともに、Truewindは上場企業と未上場企業の間の情報ギャップを解消することに貢献することになるでしょう。
Alexによると、話題の生成AIは財務や会計にも活用できます。AIは、データ入力の照合などのルーチンワークが得意なだけでなく、過去の取引から学習することもできます。学習することで、企業はルールやプロセスの生成を開始し、人間の介入を減らすことができます。
「ルールベースのソフトウェアではできないニュアンスもあります。AIが急速に成長しているのを見ると、私たちは先を見据えて、『現時点では99%確実とはいえなくても、1~2年後にはその技術が確立されているかもしれない』と考える必要があると思います。そして、この流れで、財務会計がより楽になっていきます」と、Alexは話します。
将来的には、生成AIを使って財務モデルや不正検知アルゴリズムをより迅速に開発することを想定しています。Excelでロジックを構築するのではなく、ユーザーがロジックを入力するだけで、生成AIが必要なソリューションを構築してくれるのです。
Truewindは、ベンチャーキャピタルへの報告用システムとして、ファウンダーがより多様な資金調達オプションにアクセスできるようにし、投資家が優良企業を特定できるようにすることで、より多くのスタートアップが成功する世界を作る可能性を持っているのです。