AIバグ検証コミュニティ「Bobidi」創業者インタビュー: Jeong-Suh Choi

April 5, 2023 投資先紹介

このコンテンツはスクラムベンチャーズの米国投資チームの Rya Mendoza による Scrum Ventures Founder Spotlight: Bobidi を翻訳したものです。

Bobidiは、企業のAIモデルを独自のグローバルコミュニティで公開し、そのAIの検証、改善を行っています。AIの導入が急速に進む中で、まさに今、必要とされているサービスです。AIの構築、その検証、そして導入というプロセスを早急に進める必要がある昨今では、AIを完全に検証し、バグがないことを確認するためのリソースと時間が不足しているのが現状です。

このインタビューでは、Jeong-Suh Choi 氏に、Bobidiはこれまでどのように成長&進化してきたのか、より多くの企業がこの分野に参入する中で、気をつけるべきことは何か、といった点についてお話をお聞きしました。

Q. Bobidi のサービス概要を教えてください。

Bobidiは、AndroidとiOSの両方にアプリを持つ、AIモデルのテストプラットフォームです。私たちはグローバルなバグバウンティプラットフォーム(参加すると報酬がもらえる)を構築し、多くのテスターを集め、そこで企業がAIモデルを検証することで、AIの改善をサポートしています。企業のAIモデルをAPIを介して、グローバルなテスター達が集まるバグバウンティコミュニティに公開します。このコミュニティでは、テスターがAIモデルをテストし、抜け穴がないかを検証し、AIバイアスを発見します。このプロセスにより、検証に必要な期間を数ヶ月から数週間に短縮することが可能です。

AIがうまく機能しないエッジケースを、エンドユーザーがテストすることで、検証に必要な時間を短縮します。

Q. Bobidiの創業からこれまでについて教えてください。

2021年6月の創業以来、様々な側面で成長してきました。最初の6カ月は、コンピュータヴィジョンや音声認識など、さまざまなAIモデルタイプの理解など、プロトタイプをテストすることが中心でした。次のフェーズは、ビジネスを拡大するための資金調達でした。Scrum Venturesをはじめ、Meta、Y Combinator、We Ventures、Hyundai Motor Groupなどから資金を調達した後、チーム作りを開始しました。そして韓国最大のテクノロジー企業であるNaverと正式に契約を結ぶことができました。韓国で結束力のあるチームを作ったことが、Naverとの最初のプロジェクトに繋げることができた大きな要因だと思います。このプロジェクトによって、私たちは最初の注力分野である音声認識の検証に、より磨きをかけることができました。

Q. 現在の注力分野について教えてください。

AIの音声モデルに焦点を当てています。Bobidiのテスターは、自動音声モデルをテストし、発生時刻を含めエラーをマークします。これによりメタデータが作成され、企業は次のステップを決定するのに役立てることができます。多くの企業は、リリース前に自社のAIが、どのようなパフォーマンスを発揮するのか、わかっていないため、この検証は非常に大事なポイントです。企業にとって、製品がリリースされる前に、抜け穴や問題を見つけることは必要不可欠であり、Bobidiがこれをサポートします。

Q. これまで学んだことは?

いつもY CombinatorのDalton Caldwell氏とMichael Seibel氏からのアドバイスに立ち戻ることにしています。「スタートアップの創設者になりたいなら、何回か殴られると思っておいた方がよい」。この数年、私は挫折が「普通」であると心に留めるよう意識していました。私の経験では、創業者はボクサーのようなもので、顔面にパンチを食らうようなことは常に起こりうることです。毎日、解決すべき新しい問題が出てくる。うまくいかないことを想定し、素早く対応しなければなりません。

また、厳しい状況であっても、自分の基準を下げないように注意することも大事だと思います。特に採用の面ではより注意が必要です。自分が微妙だと思う人を採用してはいけません。正しい人材は必ず見つかると信じる。間違った人材を採用することは、人材を採用しないことよりも大きな問題です。

Q. 今年、注目していることを教えてください。

マクロレベルでは、ジェネレーティブAIに注目しています。そして、ミクロなレベルでは、ジェネレーティブAIが盛り上がる中で、Bobidiがその役割を果たすことを楽しみにしています。例えば、ほとんどすべてのジェネレーティブAIは、継続的に改善するために、質の高い人間のフィードバック(例えば、人間のフィードバックからの強化学習)を必要としています。Bobidiは、コミュニティを通じて、そういった企業のニーズにこたえることができます。また間違いのリスクを減らすのにも有効です。私たちのミッションは、利用企業がクイックにモデルを改善できるようにすることであり、実際にそれが可能になってきています。

Q. ジェネレーティブAIとその方向性について聞かせてください。あるベンチャーキャピタルが、「70年間、AI業界全体がうまくいくかどうか悩んできたが、今、うまくいく兆しが見えてきた」と言っていました。これは何を意味するのでしょうか?

AIが単なるおもちゃから、実際にビジネスの価値を高めるものへと移行しつつあるということだと思います。AIが引き起こす問題についての議論は常にありますが、AIは真の価値を生み出しはじめています。

そして注目すべきポイントは、エコシステム全体がこのテクノロジーに対応し始めたことです。AIは今やテックコミュニティだけのものではなく、メインストリームに躍り出ています。

Q. 他に注目しておくポイントはありますか?AIがもたらすベネフィットにはどのようなものがあるのでしょうか?

AIが生み出し始めている価値のループにも注目しています。AIが成長するにつれ、便利な反面、問題もおこるでしょう。例えば、カスタマーサポートの面など。私がアメリカのカスタマーコールセンターに電話して、その担当者が私の韓国語のアクセントをうまく理解できなかった場合、電話を切ってもう一度電話すれば、韓国語のアクセントを理解する担当者が出てくるかもしれません。しかし、すべてがAI化された世界では、コールセンターに電話をかけて、AIが理解できなければ、どうすることもできません。システムが私を理解してくれないと、他に取る手立てがないのです。そこでBobidiのような会社が、この種の問題を認識し、AIを磨き上げ、システムがどんな種類の音声でも理解し、正しく翻訳できるようにしていきます。テストができればできるほど、AIに正しく仕事をさせることができるようになります。

Q. なぜBobidiのテスターコミュニティは、AIを導入する企業にとって有益なのでしょうか?

モデルをテストするのに最適な人たちは、潜在的なユーザー自身です。Bobidiの素晴らしいテスターコミュニティがあるからこそ、A/Bテストを実施して改善することができます。これまで、スタートアップ企業は、このような仕組みを持つことはできませんでしたが、Bobidiによって、スタートアップから大企業まで、多くの企業にこの環境を提供できるようになりました。

Q. テスターのコミュニティについて教えてください。

モデルをテストするために、Bobidiでは企業のAIモデルとコミュニティのテスター達を結びつけています。人々がシステムの抜け穴を見つけようとすると、Naverのような企業は、偽のNegativeとPositiveのパターン、それに関連するメタデータ(エッジケースの数など)を含む分析を得ることができます。モデルを迅速に改善するために、質の高い人間のフィードバックも得ることも可能です。

Bobidiを通じてテスターの人々が稼げる金額(時給10~20ドル)は、世界の多くの地域で最低賃金を大幅に上回っています。実際、世界中の多くの人々にとって有益なものとなっています。最近聞いた面白い話ですが、フィリピンに住むBobidiのテスターは、自分の子供にBobidiと名付けると言ったそうです(笑)

Q. 困難や懸念していることはありますか?

今は、興奮と心配が半々といったところでしょうか。AI業界で起きている変化の大きさに興奮しています。一方でアーリーステージの企業として、私たちが選ぶことのできる戦略は非常に多く、圧倒されることがあります。この市場は常に進化しています。私たちには確固たるビジョンとミッションがありますが、戦略は常に変化しうるものです。バランスをどうとるか?Bobidiが事業に集中しながら、次のステップを決めるにはどうするか?常にこの2つについて考えています。

Q. 資金調達について、他のファウンダーの皆さんにアドバイスはありますか?

評価額やプレゼン資料を派手にすることは忘れて、人々が欲しがるものを作り、それが機能することを投資家に示すべきだと言いたいです。また、イノベーションは反復の中にあることを理解することです。平凡な日々が集約され、革新的なものになる。一朝一夕にできるものではありません。何のために資金が必要なのか、しっかりとした根拠を持つことが大切です。多ければ多いほどいいというわけではありませんが、現在の経済環境を考えると、以前より少し多めに資金を用意したほうがいい場合もあります。まずは生き残り、長期的に進化していくために、少し余裕を持たせておくのが良いでしょう。

Q. スクラムベンチャーズとのやり取りはどうですか?

スクラムは、本当に素晴らしい会社です。日本の企業とのミーティングをセッティングしてくれたり、適切な人に繋いでくれるなど、とても積極的にBobidiのビジネスをサポートしてくれます。私たちが直面している問題に注意を払い、必要なときには解決策を提示してくれる、素晴らしいパートナーです。

 

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