シリコンバレーVCでの10週間のインターンを経ての学び

September 8, 2022 その他

スクラムベンチャーズ、スクラムスタジオには常時複数の学生&社会人インターンが在籍しています。彼&彼女らが仕事を通じて感じたことをブログでも発信しています。インターンに興味がある方はこちらから自己紹介と希望の拠点(東京・サンフランシスコ)を添えてご連絡ください。


この記事を書いた人: Daisuke Masuda
高校までを日本で過ごし、大学からは単身アメリカに留学。スタンフォード大学でコンピューターサイエンス専攻中の学部生。


2022年の夏10週間、Scrum Venturesのサンフランシスコオフィスにてインターンシップに参加させて頂いた。

インターンのきっかけ

私は元々シリコンバレーのスタートアップカルチャーに強い関心があり、大学でもスタートアップに興味のある友人と議論をしたり、これまでスタートアップ数社にてインターンをさせて頂いたりした。その中で、ベンチャーキャピタルからの資金調達というのは常に議題に上がる課題であり、また自分自身もピッチコンテストなどに参加した経験があったことから、ベンチャーキャピタルがどうスタートアップの良し悪しを判断しているのかには常に関心があった。そのため、今夏を活用して、ベンチャーキャピタルについて学びたいと思った。

ベンチャーキャピタルの中でも、Scrum Venturesはとてもユニークで魅力的な存在であった。Scrum Venturesは、サンフランシスコと東京に拠点を置いており、投資業務を行うのみならず、スタートアップと日本の大企業と繋げる架け橋の役割も担っている。特に、創業者でジェネラル・パートナーの宮田さんは、起業家出身であり、日米を股に掛けて仕事をされていることから、自身のロールモデルであり、多くのことを学ばさせて頂けると感じた。その為、インターンシップに応募させて頂き、有り難くもご縁を頂いた。

業務内容は投資業務、リサーチ、SCO

私は、主に投資業務、宮田さんからのリサーチリクエスト、そしてScrum Connect Onlineの3つの業務に携わった。

Scrum Venturesは、日米両方のスタートアップに投資を行っており、私はサンフランシスコに拠点を置く米国投資チームと基本的に行動を共にした。米国投資チームは私の他に3名程おり、少人数である為に近い距離で多くのことを学ぶことができた。

内容としては、Deal SourcingとDue Diligenceを行った。Deal Sourcingはスタートアップを発掘してくることで、Due Diligenceはスタートアップを網羅的に投資検討するプロセスのことを指す。 Deal Sourcingは、同じ米国投資チームの中でもやり方が個々に違うようで興味深かった。

例えば、既にベンチャーキャピタルの世界に長く身を置くメンバーは、自身のネットワークにいる投資家や起業家から、良いスタートアップを紹介してもらうことができる。また、Web3のようにTwitterやDiscordなどSNS上での存在感が強い業界では、SNS上で連絡を取ることが求められる。また、私のようにVCの世界に新しい場合は、オンラインのピッチイベント、特にアクセラレータのDemo Dayに参加して、面白いと感じたスタートアップに、LinkedInやメールで連絡を取るという方法を取った。

Deal Sourcingで感じたことは、シリコンバレーのオープンさだ。メール一本でスタートアップのファウンダー達とZoomミーティングを瞬時にセットアップできる。そして何より、ベンチャーキャピタル同士がお互い秘密主義にならず、各々が知っているスタートアップを紹介し合い、適当な人物に繋げてくれる。

例えば、私はTSVCのネットワーキングイベントに連れて行って貰う機会を得た。TSVCの投資先のスタートアップのファウンダーのみならず、多くのベンチャーキャピタリストが集まっていた。ここでは、Scrum Venturesが力を入れている投資分野で有望なスタートアップを紹介して貰ったり、思いがけない共通の友達の存在で話が弾み、別の人に話を繋げて貰ったりした。

勿論Give and Takeであることは間違いないが、まずは自分の情報を先に共有するという文化に触れ、シリコンバレーにおいてどう貴重な情報がシェアされているのか垣間見た気がした。私がそこでお会いした日本人起業家の方は、意識的にこのようなイベントに毎週1回は参加していると仰っており、人との出会いから情報を掴みに行く重要性を認識した。

Deal Sourcingを通して、面白そうなスタートアップを見つけると、そこからスタートアップと数回ミーティングを重ね、話が順調に進めば、Due Diligenceという本格的な投資検討に入る。市場や競合企業の調査、製品分析、チーム分析、財務分析など、スタートアップを包括的に見て投資するか否かを判断する。その為に、ファウンダー達と追加のミーティングを重ね、決算報告などの内部資料も送って貰う。

このプロセスを通して感じたことは、投資判断の難しさだ。スタートアップの特性として、不確実性は避けられないものであるし、スタートアップの成功の要素は複合的であるから、単純なフレームワークを当てはまることも難しい。そのため、投資を正当化する理由は幾らでも挙げられる。大抵の場合、市場は拡大しており、チームも優秀な場合が多いため、会社が急成長する可能性は十分にあるからだ。

しかし、多くのスタートアップと話したり、チームとの議論やメモを通して、投資対象から外す際にはある程度決まった理由があり、自分の中でパターン化ができるようになった。特に財務状況やTractionなど、会社の目に見える部分でネガティブな要素がある場合、それを見逃さないことがベンチャーキャピタル側の視点として大切なことだと感じた。また、同じ業界の類似企業と比較することもとても有用であることが分かった。過去の類似企業が実際どのくらいの企業価値で上場したのかなどを調べれば、現在投資検討している企業の将来も近似的に予測することができる。このように、情報が少ない中でも確かなファクトを掴みに行き、そこを判断基準の大きな要素とすることを実践し、自分の感性を訓練することができた。

このようなアーリーステージの投資の特性から、深い業界知識を持つことはとても大切である。米国投資チームで同じく大学生として働くMartinは、Web3やSaaSの業界知識がとても深く、新しいスタートアップを見つけた場合にも、自身が既に知っている企業と比較ができるため、そのスタートアップが謳う革新性の真偽を自信を持って検証することができる。情報収集のコツとしては、ニュースを読むのみならず、業界エキスパートのブログを読んだり、SNSで業界人の投稿を追ったり、様々な情報ソースに毎日自身をさらすことが大事だと学んだ。彼から受けた刺激は個人的にとても大きかった。

また、通常の投資業務とは別に、宮田さんと定期的にミーティングする機会を頂き、宮田さんがどう日米においてScrum Venturesを回しているのか全体像を学ばさせて頂いた。特に私がインターンをしている間に宮田さんは、スポーツテックとエンターテイメント領域の新しいファンドを立ち上げる準備をしていらしたので、アメリカにおけるスポーツテックの先進的な取り組みのリサーチなどを任せて頂いた。

また、今年Scrum Venturesが投資したBoomyというAIの助けを借りて音楽を生成するスタートアップのサポートのため、韓国における音楽業界のリサーチも担当させて頂いた。これらの頂いたタスクを通して、私はどういう形でアメリカで進んだ取り組みを日本に持ってきているのか、そしてベンチャーキャピタルとして投資先スタートアップにどうサポートを継続的に提供しているのか、勉強させて頂いた。加えて、ジェネラルパートナーのお仕事は、現在や将来のLP企業との関係づくりを行い、他方で投資先スタートアップにもフォローを行うという、様々なステークホルダーとの間を取り持つ仕事だと学ばさせて頂いた。

最後に私が少しだけ関わらせて頂いた業務として、Scrum Connect Online (SCO) が挙げられる。これは、米国投資チームが精選したスタートアップニュースに彼らが解説を付け、LPを含む日本企業に発信するオンラインプラットフォームだ。私も様々なニュースレターや記事に目を通し、目を引くものを選んで自分なりの解釈をコメントとして付けた。

この作業は、業界知識を深める上でとても役に立った。自身の解釈を添える為には、当然ながら、ある程度業界のトレンドを知った上で、その記事の内容を評価する必要がある。その為、一つの記事を選んだ後に、結果的に複数の記事を読んでその業界について深堀りすることになり、とても勉強になった。このSCOに定期的に関わらせて頂いたことで、自分の中で記事を読む際の目線が変わり、より効果的な情報収集の習慣を付けることができた。

SmartCityX Conference 2022 に参加

冒頭でも簡単に述べたように、Scrum Venturesには、Scrum Studioというグローバルスタートアップと日本の大企業を繋げる子会社がある。日本の大企業が保有しているリソースやアセットをスタートアップに共有することで、スタートアップは成長することができるし、日本企業としてもスタートアップとの交わりを通して、新しいイノベーションを取り入れやすくなる。

そのScrum Studioの中に、スマートシティがテーマのSmartCityXというプログラムがあり、幸運にも私のインターン中にプログラムの成果発表を行う「SmartCityX Conference 2022」があったため、当日参加させて頂いた。会場であるサンフランシスコのChase Centerに、プログラム参加者のスタートアップと日本企業が集まり、この1年間の協業成果を発表した。

各社のプレゼンテーションやネットワークイベントの様子を見て、協業成果は勿論のこと、海外のスタートアップと日本企業が文化や言葉の壁を乗り越えて効果的に協力していることに感銘を受け、円滑なコラボレーションを実現しているScrum Studio事業の意義とミッションに大きく共感した。投資業務ならず、日本とアメリカの架け橋という大きな観点から、スタートアップ業界やイノベーションの現状をこの目で見れたことは、大変有意義な経験であった。

多くの学びがあったインターン

関わらせて貰った業務の全てが背伸びさせて頂いた経験だったように感じる。シリコンバレーの有機的なコミュニティに溶け込ませて頂いた上、更に日米をまたいだ協業の在り方についても多くのことを学ばせて頂いた。そして何より、温かく迎え入れてくれたScrum Venturesの皆さんの存在はとても大きかった。全ての方のメンターシップに心より感謝したい。

 

 

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