「ニューノーマルな暮らし」を創るスタートアップ YC S20 Demo Day

September 10, 2020 by Tak Miyata

初の完全リモートバッチ

前回のW20のバッチは、プログラム自体は辛うじてシリコンバレーで開催されましたが、ロックダウン開始直後(3/23)の混乱の中で開催されたデモデーは、急遽オンラインに変更となりました。

今回のS20のバッチは、プログラム自体が全てリモートで開催されたようです。

年々海外からの参加スタートアップが増えているY Combinatorですが、今回は訪米もままならず、そのまま自分の国でオンライン参加したFounderも多かったようです。

世界中のタレントが、3ヶ月間同じ場所に集まるからこそ生み出されていた熱量をリモートで再現するのはかなり難しいと思います。創業者の熱を感じながら、実績の少ないアーリーステージのスタートアップに投資をする投資家にとっても、オンラインデモデーというのはなかなか難しいものがあります。

前回のバッチではY Combinatorとは思えないくらい資金調達に苦労したようです。この十年間で盛り上がったアクセラレータ、インキュベータの形、役割も、コロナの影響が続く中、ニューノーマルを探っていく必要があるのかもしれません。

コロナで生まれたプログラム”SmartCityX”

ちょうど一年前の、昨年のYCのSummerのバッチのデモデーと同じ日には、Scrum Venturesでも「スポーツxテック」をテーマにしたプログラム SPORTS TECH TOKYOのデモデーを開催していました。コロナで大規模なイベントが制限されている今となっては、広い野球場を貸し切り、世界から集まった数百人規模の参加者とデモデーを開催したというのはすごい昔のことのようです。

今年は、Y Combinatorのデモデーと同じ週に、新しいプログラム「SmartCityX」の発表会を開催しました。

SmartCityXは、その名の通りスマートシティのプログラムで、あいおいニッセイ同和損害保険出光興産トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント日本ユニシス博報堂東日本旅客鉄道、という素晴らしいパートナー企業の皆様と一緒に、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど様々な場所で「コロナ後の暮らし」に取り組んでいるスタートアップとオープンイノベーションを行うプログラムです。

SmartCityXは、コロナの影響が出始めた2020年2月に企画がスタートしました。そして、それからわずか4ヶ月後の6月にはプログラムのキックオフを迎えるという「スピード立ち上げ」となりました。

当初コロナの影響で、企業におけるオープンイノベーションの取り組み、スタートアップへの投資もスローダウンしていくと考えていました。しかしながら、2月に声がけを始めてみると、仕事、学校、日々の暮らしに大きな影響を与えているコロナは、発想を変えれば、デジタル技術を活用し、前向きにビジネス、社会を大きく変革していくチャンスであるという思いでパートナーの皆様と一致しました

「生活者の目線で本当に住みたいと思える街、暮らしを作る」というビジョンのもと、これから3ヶ月の間、「コンシューマプロダクト&サービス」「モビリティ」「スマートビルディング」「エネルギー&資源&サステナビリティ」「インフラストラクチャ」「ソーシャルイノベーション」という6つの分野のスタートアップの方々のアプリケーションを受け付けています。自治体、企業の方々の参画も引き続き募集をしておりますので、ご興味ある方はぜひウェブサイトをご覧ください。

Scrumが注目する10のスタートアップ

今回のY Combinator S20バッチの197社の中で、SmartCityXのプロジェクトで探している「ニューノーマルな暮らし」のヒントとなりそうな注目スタートアップ10社をご紹介します。

1 : Together (読み聞かせビデオチャット)

コロナは特に高齢者のリスクが高いということで、帰省もできずビデオチャットで孫の顔を見せるというシーンは急激に拡大しています。

Togetherは、孫とのコミュニケーションに特化したアプリで、絵本の読み聞かせ、ゲームなどをインタラクティブに行うことができます(動画)。

Zoomの急成長は言わずもがなですが、今後その周辺で特定用途に特化した進化系がどんどん生まれてくると考えています。

2: Blissway (ダイナミック高速道路)

道路の渋滞は、世界共通の社会課題です。

Blisswayは、アプリとAIを使い、混雑状況に応じて高速道路の値段をダイナミックに変更することで、渋滞の解消をしようというソリューションです動画を見るとよく理解できると思いますが、UBERのようなダイナミックプライシングを高速道路に導入することで、交通量をコントロールしようというアプローチです。

イーロンマスクのBoring Companyのアプローチは、都市計画と連動して、時間をかけてトンネルを掘る必要がありますが、これは一ヶ月以下ですぐに導入可能ということです。

3: Kuleana (代替マグロ)

マグロなどの漁獲高の減少、家畜のゲップによる温暖化。これからさらなる人口増加が見込まれる地球において、食料は大きな社会課題です。

Kuleanaは、代替マグロのスタートアップです。さざまな植物性の素材を組み合わせることで、マグロのような食感をもった食材を開発しています。

Scrumのメンバーが実際に食べたところ、そこそこのレベルの味にまで到達しているということでした。ヨーロッパでは、スイカをベースにしたマグロが急成長していると聞きます。数年後には、「マグロでないマグロ」を日本の回転寿司で食べる日もくるのかもしれません。

4 : InStock (ダイナミックUBER Eats)

フードデリバリーは、コロナで急速に普及したサービスの一つです。

InStockは、そのリテール版です。一つのお店にある在庫を届けるのではなく、様々なお店の在庫を統合して、InStockとしては在庫をもたずにまとめて届けるというアプローチです。

「買いにいく」のではなく、「届けてもらう」という世界は、これからまだまだ広がっていく領域です。これからの街は、お店やレストランのゴースト化がさらに進む前提でデザインされていくことになりそうです。

5: Jemi (オンライン握手会)

コロナで大打撃を受けている業種の一つがエンタメです。米津玄師がFortniteでコンサートを開催するなど、新しいフォーマットが模索されています。

Jemiは、アーティストや芸能人がオンラインで様々なコンテンツやサービスを展開できるプラットフォームです。オンライン握手会、オンラインアドバイス、パーソナル動画、様々なタイプのサービスが展開できるようです。

アメリカの大統領選挙ではバイデン候補があつもり上でキャンペーンを始めたというニュースがありました。エンタメ、コンテンツ、プロモーションのニューノーマルも様々なところで生まれてきそうです。

6: Atmos (家コマース)

日本ではすっかりBuzz word化した「DX」ですが、これまでデジタル化に無縁だった領域にも広がっています。

Atmosは、自宅の建設を全てデジタル化できるプラットフォームです。土地の取得、デザイン、工事のやりとりなど全てが一つのアプリで行えるということです。

私が投資先のコロナ後の変化で驚いたことの一つが、「いきなり車がオンラインでバカ売れしている」ということです。Prodigyという、カーディーラー向けのSaasの会社に投資をしているのですが、コロナ後に消費者の車の購買がカーディーラーからいきなりオンラインにシフトしたのです。家も同様で、「自宅もスマホで買う時代」、これから必ずやってきます。

7 : KiteKRAFT (空飛ぶ風力発電)

今年の東京の夏は、本当に暑かったです。LAで史上最高の49度を記録したという耳を疑うニュースもありました。本気で地球の温暖化を食い止めるためには、自然エネルギーの活用は避けて通れません。

KiteKRAFTは、空飛ぶ風力発電を開発しているスタートアップです。通常は地上に設置されている風力発電を、空を飛ばす形で実現するということです。動画はこちら

なんとなく発電できることは理解できるのですが、発電した電力はどうやって地上に送るんでしょうか?ぜひ専門家の方がいたら教えてください。

8 : Orange Health (Shopify for 医療)

コロナの影響で最も成長した企業の一つとして注目されたのがBASE (日本版Shopify)です。コロナで閉店を余儀なくされたレストランなどが、BASEでECをスタートしたということだと思います。

Orange Healthは、病院向けのShopifyです。遠隔診療をスタートしたい病院が、簡単に遠隔診療をスタートできるSaasのサービスです。

日本でも、コロナでついに初診の遠隔診療が解禁されました。ECの世界で起きたように、医療の世界でも「オンラインファースト」の世界がやってくるはずです。

9 : Sidekick (リモート職場)

リモートワークが当たり前となり、仕事のあり方も大きく変わりました。社内会議はもちろんのこと、営業もビデオチャットで行える時代がこんなにも早くやってくるとは誰も想像しなかったのではないでしょうか。

Sidekickは、常時接続型のリモートワーク用コミュニケーションスクリーンです。時間を決めてZoom会議をするのではなく、チームメンバーと常時接続にすることで、何気ない雑談やディスカッションを誘発するという狙いです。

ビデオチャットがストレスなく行えるZoomやTeamsなどのツールですが、ブレストが難しい、相手の意図が読み取りづらいなど、まだまだ完璧とは言えません。「リモート前提の暮らし」にあったツールやソリューションはまだまだ生まれてくるに違いありません。

10 : Minimum (CO2トラッカー)

周回遅れではありますが、日本でもようやくレジ袋が有料化されました。今年Amazonが気候変動に特化した$2Bのファンドを立ち上げたこともニュースとなりました。

Minimumは、個人の生活がどの程度二酸化炭素排出に寄与しているかを自動的にトラックするアプリです。銀行口座と接続することで、買い物データなどから自動的に計算するという仕組みです。

弊社の投資先でユニコーンであるNoomは、何を食べているかをトラッキングしてダイエットができるアプリです。これからは自分のダイエットだけでなく、地球のダイエットを考えるひとが世界で増えていくのでしょうか?

オンラインTackle!来週開催

2015年から開催している勉強会Tackle!が、累計参加者数3,000名を突破しました。いつもご参加ありがとうございます!

来週開催予定の次回のTackle!は、このブログの内容に加えて、過去1ヶ月の注目スタートアップなどについてお話します。

日本時間の9/17の木曜日の朝、サンフランシスコ時間の9/16水曜日の夕方、オンラインで開催しますので、ご興味あればぜひ

ディスカッションに貢献いただいた方には、Oura Ring (NBAで全面採用されている指輪型ウェアラブル。私もずっと付けていますが面白いデバイスです)があたります。

まだまだ長い戦いが続きますが、皆さん健康にお過ごしください。

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