日本の大企業は、ベンチャーの活力を取り入れられるか? [Scrum Connect 2018 Report Vol.3]
大企業がベンチャーと組むなら担当者の熱量が大事
ここからの2セッションは、日本経済新聞社の動画番組『STARTUP X』の収録を兼ねて行いました。司会進行は日本経済新聞編集委員の奥平和行氏と、日経CNBCキャスターの瀧口友里奈氏。
ひとつめのSTARTUP Xセッションに登壇したのは『VACAN(バカン)』の代表取締役、河野剛進氏と、『エクサウィザーズ』の粟生万琴氏です。
バカンはレストランや喫茶店の空席情報プラットフォームである『バカン』と、弁当取り置きサービス『クイッパ(QUIPPA)』、トイレの空き室情報サービス『スローン(Throne)』を提供する会社です。バカンはデパートの1階に最上階のレストランの空席情報などを表示することができ、すでに複数のショッピングセンターに導入されています。
いわゆるIoTを活用したセンシング技術と、そのデータを活かすためのAI技術がバカンの先進性のキモです。いずれも既存のビジネスの効率性を高め、収益性を高める取り組みであることから、すでに多くの企業から引き合いが来ているとのこと。
粟生氏のエクサウィザーズは京都大学と大阪大学、そして静岡大学のベンチャーの融合から生まれた企業。人事業務サポート『HR君』、AIの活用を促進する教育サービス『AIトレーニング』などの展開を行っています。『HR君』は募集・採用から、研修、人事考課、勤怠、評価などの人事に関する業務を一括して管理。活躍する人材を予測したり、コーチングにより育成したり、メンタルヘルスに対するフォローが可能です。
このセッションで特に話題となったのはベンチャーと大企業が協業する時に気を付けるべきこと。
いずれも担当者の方の熱量が大事だということで、とりわけトップがベンチャーと協業することの意味を理解していないと、上手くいかないことが多いとのこと。
以前は、大企業に『発注側』という意識があることが多く、その場合は上手くいかない可能性が高かったのだそう。ベンチャー自体をM&Aしてしまう可能性まで考えるぐらい本気で取り組んでいる大企業の方が、『ダメだったら離れよう』というようにリスク回避を考えながら関わってる企業より成功の可能性が高いとのこと。
結局は「ビジョンが一致するかどうか」が、とても大切だと河野氏は話していました。
ロボットや自動運転、ドローンなどの課題も解決しつつある
次はハードウェアセッション。人が乗れるほどの巨大なドローンを作るという『Top Flight Technologies』からCEO兼CTOのロン・ファン氏、『Realtime Robotics』からは代表取締役CEOのピーター・ハワード氏が登壇しました。
トップフライト・テクノロジーズのドローンは独自技術で大きな荷物を積んで、長時間飛ぶことを可能としています。その飛行可能重量はどんどん大きくなっており、最終的には人を載せて飛ぶことを考えているとのこと。トップフライト・テクノロジーでは先日、現代自動車との協力を発表し、いよいよ人を載せてのフライトを実現する日も近づいています。
リアルタイム・ロボティクス社はロボットアームが人の邪魔をしても、それを避けて作業するデモを実演していました。この技術の実現により、ロボットが環境や状況に合わせて作業できるようになり、人との協力作業の可能性が開けてくるのです。
進行方向に現れた障害物を避けるのは、人間にとっては簡単なことでも、機械には演算するのに時間がかかってしまい、リアルタイムで反応することが難しい。その問題はソフトウェアだけでは解決できません。そこでピーター氏は専用のハードウェアを作り、より早く結果が得られるようにしたとのこと。
この課題解決は、今後自動運転などにおいても、歩行者を避けるというアクションをするために役に立ちそうです。
2019年、2020年を目指して
最後のセッションは、スクラムベンチャーズがスポーツをテーマに電通とコラボレーションした『SPORTS TECH TOKYO』というアクセラレーションプログラムについての話です。
元プロ野球/MLB選手である小林雅英氏と、元サッカー日本代表キャプテンの森岡隆三氏が登壇され、今プロスポーツシーンで、どんなテクノロジーが使われているかについてお話しいただきました。
小林氏はプロ野球で使われている、投げたボールの回転数を計測する装置がもたらした改革について語ってくださいました。回転数やボールの動きを計測することで、従来、雰囲気で語られていた「あの投手の球は手元で伸びる」とか「球威がない」というような話が数値として理解できるようになりました。
森岡氏は、サッカー選手各人の背中に取り付けるGPSセンサーで、いかに練習が効率的に進められるようになったかを説明されました。単純にたくさん走ればいいということでなく、どのくらいのスピードのダッシュを何回ぐらいするか、そのスピードは試合を通して落ちないか? というようなことが計測され、データとして活用されるといいます。
13時から17時30分と長時間にわたって開催された『Scrum Connect』ですが、非常に多くの聴衆の方が最後まで熱心に話を聞いて下さいました。参加者の皆様からは、「ベンチャー企業各社のチャレンジの手法、ベンチャー的な思考、ベンチャーと協業しようという大企業の考え方など非常に参考になった」という感想をいただき、多くの方に満足いただけたイベントになりました。
来年もScrum Connect開催予定です。今後ともスクラムベンチャーズの活動にご注目下さい。
[Scrum Connect 2018 Report]
Vol.1 日本の大企業に、シリコンバレー流ベンチャーのスピードと活力を!
Vol.2 挑戦こそがベンチャースピリット。大企業はついて来られるか?
Vol.3 日本の大企業は、ベンチャーの活力を取り入れられるか?
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