シリーズA、B、Cの調達額の平均はいくらぐらい?その難易度は?
シリコンバレーにいると、あの会社がシリーズAで$5M調達したとか、Series Bを$60Mのバリュエーションで$10M調達したといった話が頻繁に聞きます。
でも実際のところスタートアップは、どんな評価でいくら調達するのが一般的で、それはどれだけ難しいものなんでしょうか。今回は「シリーズA(とかBとかC)って実際なんぼのもんなのさ」をテーマにいろいろと見ていきたいと思います。
シリーズA、B、Cの調達額の平均はいくら?
資金調達の規模感を表すものとしてよく使われる指標としては、Pre-Money Valuationと実際に資金調達を行った額が挙げられると思います。
これらの数字は、当事者同士の交渉を経て決められるものであり、個別性の高いものですが、各シリーズごとに資金調達を行ったスタートアップの平均値や中間値をとっていくと、各シリーズの相場観のようなものが見えてきます。
参考値として私(竹内)の勤務先であるWSGRのEntrepreneur Reportを見てみましょう。
これは、WSGRのクライアントが行った資金調達に関するデータを四半期ごとにまとめたものです。WSGRのクライアントはシリコンバレーに限られるわけではありませんが、シリコンバレーにおける資金調達の傾向を知る上で非常に有益なレポートになっていると思います。
Entrepreneur Reportの2015年通年版を見てみると、2011年から2015年にかけてのSeries A、Series B、Series CのPre-Money Valuationの中間値と各Seriesにおいて実際に調達された額の中間値が掲載されています。
(※)グラフはいずれもWSGRのEntreprenuer Reportからの引用です。元記事はコチラ
簡単にまとめると、2011年から2015年にかけてのSeries A、Series B、Series CのPre-money Valuationの中間値と資金調達額の中間値は以下の表のとおりとなるわけです。
思ったほどシリーズAのバリュエーションって高くないと思うかもしれません。まれに大きな金額の資金調達もあるものの、統計的にはPre-Money Valuationは$10M~$15M、調達額は$2~3M程度というのが相場のようです。
ただ冷静にシリーズAの段階で会社として何がどこまでできているのかを考えると、上記のバリュエーションもやっぱり高い気もします。
シード→シリーズA→Bの難易度は?
実際のところ、スタートアップのうちのどれくらいの方々がこのような資金調達に成功しているのでしょうか?シリーズA(とかBとかC)に行けるのって、どんだけすごいことなの?という点について調べてみました。
例えばCB Insightでは2009と2010年にシードファイナンスをしたスタートアップを2015年まで追いかけて分析した結果、シードファイナンスに成功したスタートアップのうち次のステージ(いわゆるシリーズA)に進めたのが40%、次の次(いわゆるシリーズB)に進めたのが23%という分析結果を公表しています。
また、MattermarkのCEOであるDanielle Morrill氏のポストによると、2008年から2012年までの各年にシードファイナンスを行なったスタートアップがシードラウンドを「卒業」してシリーズAに行けた割合の平均は約33%とのことでした。
さらに、Redpoint Venturesという著名VCのパートナーであるTomasz Tunguz氏が書いているこのポスト
Why Startups Face Increasing Competition In Raising Series As And Bs
によると、シードからシリーズAにいけたのは全体の27%であり、その中で次のシリーズBまでたどり着けたのは35%しかないとのこと。まとめると、シードマネーを調達できたスタートアップのうち、わずか10%強しかシリーズBにまで行きつけていないとのことでした。
CB Insightの分析やMorrill氏の分析よりもかなり厳しい数字がでていますね。もちろん、この数字はM&A等によりエグジットできた分を考慮していないため必ずしも正確なものではありません。ただ、おおまかな傾向を知る上では大変役に立つ分析だと思います。
これらの分析を見ると、シードマネーの調達なんてまさにシード段階(種まき段階)で、そこから順調に成長していくのがいかに困難なことかよく分かりますね。
僕がWSGRで担当しているスタートアップのクライアントにも、これからシード(あるいはプレシード)ファイナンスに挑む方から、シリーズBやシリーズCにまで行き着いた方まで色々なステージの方がいらっしゃいます。こういった方々は、資金調達という面に絞って見ても、これまで見てきたような厳しい資金調達競争をくぐり抜けてきたり、これからまさにその競争に挑もうとされているわけです。すごいですよね。純粋に尊敬します。頭が下がりますね。
ということで、スタートアップのおかれる資金調達環境の厳しさを改めて認識したところで、引き続きスタートアップの皆様方の後方支援に励んでいきたいと思います。