Yコンビネーターへのエントリーからプログラム3ヶ月間を通じての経験、今改めて思うこと

April 14, 2016 by Guest Writer
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世界中の起業家が参加を希望するアクセラレータプログラムのYCombinator。これまでにDropbox、Airbnb、Instacartなど名だたるユニコーンスタートアップを輩出しています。このポストはYCombinator 2015年夏のバッチ(*1)に参加した「Scentbird」のFounder Mariya Nurislamovaさんの記事「One Startup’s Journey Through Y Combinator or There and Back Again.」を翻訳したものです。「Scentbird」は香水サブスクリプションサービスを提供しています。Scrum Venturesの投資先です。


YCombinator(以降YC)についてよく質問を受けます。YCのプログラムで特別だったことは何か、参加する価値があるかどうかなど。中でも最もみなさんが興味のある事は「どうしたらYCに入れるか?」です。創業者たちの意図に反して、YCはみなさんにとって謎に包まれています。

私の会社 Scentbird は、新たな資金調達の前にYCの2015年夏のバッチに参加しました。その時の経験を共有したいと思います。幾つかのフェーズに分けたので、興味のあることから読んでみてください。

エントリー

個人差はあると思いますが、エントリーは地味で時間がかかる作業です。ですが、YCに入れるかどうか関係なく、その作業はとてもいい経験になると思います。ほとんどのアーリーステージの会社にとって、自分たちの事業プランを一言で表すことは簡単ではありません。エントリーシートを埋める時、自分の会社がどう成長するかを簡潔に述べなければならないので、いつも以上にブレインストーミングが必要でした。

YCはハッカー、チャレンジャー、そしてどんな課題にも対しても決してへこたれないチームを探しています。エントリーシートはチームを意識して作成しました。何組かのYC卒業生に見てもらい、弱い点、くどい点などを指摘してもらいました。中には何度も書き直しが必要な項目もありましたが、ほかのFounder達に見てもらったことは最も役に立ったことの1つだと思います。

面接

面接に向けた準備はとても充実した時間でした。質問サンプルはオンラインにたくさんあったので、自分たちで追加したトピックはほとんどありませんでした。面接の時間は2〜3分しかありません。できるだけ多くの質問をしてもらうため、質問に対する答えを簡潔にすることを心がけました。

YCはチームとしてのダイナミズムを判断しているので、自分だけが話すのではなく、co-Founderを巻き込む必要があります。また私たちは説得力を出すため面接に自社の成長グラフを持って行きました。既に売上や実績がある場合は必ずアピールすべきです。

Scentbirdは合格するまで面接に3回チャレンジしています。もし1度面接まで進んで不合格だったとしても、諦めずもう一度挑戦してみてください。

合格通知

もし面接が不合格であれば、メールが送られてきます。そのメールにはなぜ自分の会社が選ばれなかったのかが丁寧に説明されています。ビジネスの弱点、また弱点を解消する上での問題点が指摘されています。YCからのフィードバックはいつも役に立ちます。不合格通知はもちろんいい気分ではありませんが、自分の会社、事業プランを信じているならば、諦めないでください。優れたアイデアでも最初は荒く、伝わらないかもしれません。継続してプランを練り続けるだけです。

合格の場合は電話がかかってきます。私たちは、Michael Seibelさんからかかってきました。今までの不合格は合格のためのプロセスだったと感じることができました。自分がFounderとして考えてきたことがやっと伝わったのです。

シリコンバレーへの移動

私たちの会社はニューヨークに拠点を置いていたので、引越しする必要がありました。4人の創業者のうち3人がシリコンバレーに移り、1人はニューヨークのオフィスに残り、ニューヨークオフィスを続けることにしました。

会社にはお金がなかったけど、IKEAのおかげで家が空っぽにならなくて済みました。友達から$1000でちょっとくたびれた車を購入し、サンタクララの近くを選び、4ヶ月間の拠点としました(赤ちゃんアヒルがいる池の近くでした)。引越し自体は大変ですが、co-Founderと3〜4ヶ月をともに過ごすことは、人生にとって最も生産的で、とてもいい経験になりました。

毎週火曜日の夕食会

YCでの生活はディナーから始まりました。バッチは規模が大きく、全員と知り合おうと思ってもなかなか難しいのですが、初日はそんなことはわからないので、きっとがんばってしまうでしょう。それぞれの会社が様々な経験をしています。つまり成功のセオリーはなく、自分たちで探し出し実現する必要があるのです。

最初の火曜日のディナーのゲストはAirbnbの創業者Brian Cheskyさんと Joe Gebbiaさんでした。彼らの話はいわゆる“スピーチ”ではなく、詳細で本音にあふれた実体験の共有でした。初日の最も印象的な一コマです。

毎週火曜日はバッチの全メンバーが集まり、ご飯を食べながら会話を交わします。Peter Thielさん、David Sacksさん、Anne Wojcickiさんなどの有名人がスピーカーとしてきてくれました。

グループオフィスアワー

バッチに参加している6〜8つの会社と一緒に2週間1回KPIミーティングがあります。その会社とはいつも一緒で、彼らとはプログラムを通して本当の同志になります。どの会社も具体的な達成目標とチャレンジがあります。YCのパートナーたちは目標数値を下回っているときには厳しくアドバイスしてくれます。目標は非常に高く、毎週最低7%の成長をしなくてはなりません。お互いに達成に向けて脳みそもコネクションもフル活用で協力しあうので、最高のブレストが繰り広げられます。

KPIミーティングは他の会社と自分の会社を必然的に比べるので、悔しい思いをすることも多々あります。ある会社は大きい契約を取ってきたり、ある会社は1週間に30パーセント成長したり、キックスターターでものすごい数の予約注文を集めてきたりします。このお互いに発表しあう時間は、もっと頑張ろう、次はいい発表をしようという原動力になります。

オフィスアワー

オフィスアワーはYCのパートナー達との1対1の時間です。15分〜30分程度で今取り組んでいる非常に具体的な問題について話します。時間が限られているのでポイントを素早く理解し、正しい質問をする必要があります。また正しい質問ができるように事前に準備する必要があります。そして、運がいい時にはオフィスアワーは延長されます。そんな頻繁に起こる事ではないと思いますが、私たちは最大4時間を記録しました。

日常生活

YCはとにかく目標、描く理想像に向かって突き進むのみです。投資家との会話やその他は二の次です。YCでの時間は本当に飛ぶように早くて、寝ている時間以外はずっと働いていましたが、辛いとは思いませんでした。他のアクセラレーターの施設を経験している人には驚かれるのですが、YCはオフィススペースを提供してくれません。YCのプログラムはいくつかの参加必須のミーティング以外は比較的柔軟で、自分たちのオフィスで1日コツコツ働いてもよいし、オフィスアワーの予定を詰め込んでもかまいません。

オフィスで一緒に働くことよりも、co-Founderたちと一緒に住み、過ごしたことが重要なポイントだったと思います。一緒に住んでいるので、夜11時でも働くことができます。11時!?と思うかもしれませんが、時が経つのはあっという間で働いてる感じはしないですよ。

デモデー

デモデーは2回あります。卒業生向けのデモデーと通常の投資家向けのデモデーです。卒業生向けのデモデーは大きな資金調達につながる投資家向けデモデーの準備的な位置づけですが、過去YCに参加していたFounderからの投資やサポートを得られる可能性もあります。どちらもこの上なく神経を使います。

デモデーで数人の投資家が同時に話しかけてきたり、その場で投資をしようとしたり、さらに別の投資家からミーティングの依頼があったりすると有頂天になってしまうかもしれません。

しかし、Sam Altmanさんはこう言っています。「いい資金調達が出来ても、それは成功ではない。必要な資金が確保できたら最も重要なこと『製品』そして『顧客』に立ち返るべきだ」。

YC後の生活

私たちは今、ニューヨークに戻ってきましたが、YC前と後では全く違います。YC前に戻ることはないでしょう。

今年の5月、カルフォルニアで前バッチ参加者が一同に会する2日間の合宿があります。YCはずっと関わり続けたいということもありますが、卒業するということがありません。いままで一緒だった同志たちと連絡を取り合うこともできますし、パートナーとオフィスアワーを続けることも可能です。

YCは自分を変えてくれる経験ができるところです。起業家であればYCに参加することを本当にお勧めします。


(*1)バッチ
YCは毎年1月〜3月と6月〜8月に資金調達を目標としたブートキャンプを行っています。その各ブートキャンプを冬のバッチ、夏のバッチを呼んでいます。

(*2)オフィスアワー
週に2〜3回ほど行うYCパートナーとのMTGの時間。ビジョン、成長率のチェック、抱えている課題、デモデーでのプレゼンの内容などを話し合う場。法務問題などの専門的なことを聞くことも可能。YC参加者は卒業後も利用することができる。

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