Chatbot、創薬、超音速飛行機。Y Combinator W16のDemo Day。

March 31, 2016 by Tak Miyata

「設立以来最大」のExitに沸く

先週火曜日と水曜日の二日間に渡って、Mountain ViewのComputer History Museumで開催された、Y CombinatorのW16バッチの「Demo Day」に参加してきました。

プレゼンテーションが始まる冒頭にも紹介がありましたが、ちょうどDemoDayの直前に、2014年にY Combinatorに参加をしていた「クルマの自動運転技術」のCruiseが、GMから$1B以上と見られる評価額で買収されたというニュースがありました。

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Y Combinatorが、シリコンバレーはもとより、全米トップのインキュベータであることは言うまでもありません。2005年の設立以来、Airbnb、Dropbox、Stripe、Zenefitsといった名だたるユニコーンスタートアップを生み出し続けています。

しかしながら、まだ歴史は短く、これまでM&AやIPOという大規模なExitはありませんでした。

今回、CruiseがY Combinator卒業から「わずか2年で$1B」というY Combinator設立以来最大の規模でのExitを実現し、大きなキャピタルゲインを得た投資家も多く生まれたことから、Demo Dayの会場はいつも以上に熱を帯びていたような気がします。

プレゼン企業は25%増の「127社」

今回プレゼンに参加をしたスタートアップの数は、前回の102社から大幅に増加し、127社でした。

今回も、その127社をビジネスの「カテゴリー」で分類してみると以下のようになります。

 

カテゴリー

前回のデータはこちらにありますが、全体的な傾向はここ数回変化がありません。

今回特徴的だったのは「ハードウェア(HW)」スタートアップの割合が急増して、24%の31社となったことです。

プレゼンが行われる部屋とは別の部屋に設けられたハードウェアの展示室には、料理家電コミュニケーションぬいぐるみスマートアパレル農業ロボット音速飛行機、など様々なハードウェアが所狭しと展示されていました。

様々なハードウェアに「ソフトウェアの発想」を加えてスマート化するトレンドは、ここ数年新たに起き始めたもので、最近もMechanical EngineeringのDegreeを持つエンジニアがどんどん起業しており、この分野は引き続き盛り上がり続けると思います。

業種は「金融」「コミュニケーション」「医療」がTop3

今度は、「業種」で分類みると以下のようになります。

業種

「金融」いわゆるFinTechが最多業種なのは前回と同様ですが、今回特に目立ったのが「コミュニケーション」と「医療」です。

「医療」は、ここ2-3回で急激に存在感を増している分野で、今回もウェアラブルマンモグラフィー早期ガン発見技術低コスト感染検査技術奇病薬発見技術などのスタートアップが参加をしていました。

必要な資金や技術的なチャレンジもソフトサービス系の大きくことなることから、Scrumには投資実績がない分野ですが、まだ解決されていない課題も非常に大きいので今後も注目していきたいと思います。

「コミュニケーション」で今回多かったのはChatbot系です。コミュニケーションのツールとして存在感が急速に増しているメッセンジャーを活用する企業向けに、消費者とのやりとりを自動化する「Chatbot」を作成できるソリューションを提供する企業が多数( Chatfuel, Prompt, msg.ai )参加していました。

Scrumが注目する10社のスタートアップ

最後に、今回プレゼンした中で私が個人的に面白いと思ったスタートアップを10社紹介します。

1 : Tovala( 調理家電 + フードデリバリー)

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キッチン領域は、スマートホームの中でもイノベーションの余地が非常に大きく、多くのスタートアップがチャレンジしている分野です。Tovalaは、そこに今急成長中のフードデリバリーの概念を取り入れ、「Nespresso」的なトロイの木馬ビジネスモデルを目指したモデルです。

2 : Gecko Robotics(電力プラント検査ロボット)

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Gecko Roboticsは、人には非常に難しく、かつ毎年多くの死亡事故も起きている「電力プラントの検査」という作業をロボットが代替するという提案です。

3 : Cover(スマホカメラ x 保険)

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面倒な保険の見積もりを、スマホカメラの写真一つで行えてしまうという保険の新しいアプローチ。自動車、ペット、宝石など幅広いカテゴリーに対応しています。

4 : Chatfuel( Chatbot作成ツール)

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今回多かったChatbot系スタートアップの一つ。すでに13万以上のChatbotに活用されており、TechCrunch、Forbesなどの大手メディアも活用しているそうです。

5 : Function of Beauty(パーソナライズシャンプー)

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弊社の三浦がすでに体験レポートをアップしていますが、髪のタイプ、香りなどで3億通りのカスタマイズが可能なシャンプー。どれだけ違いが出るかはさておき、市販とそれほど変わらない値段で商品自体がパーソナライズできるというのは非常に興味深いです。

6 : Enflux(スマートアパレル)

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アパレルは、日常的に身につけるのに、購買後の利用状況( Post Purchase data)がどのブランドもほぼ把握できていないというカテゴリーです。その視点からも、実際の様々な利用データを測定できるスマートアパレルの分野は注目です。

7 : Iron Ox(ロボット農業)

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日本でも工場の中でLEDライトを使った農法など新しいアプローチがたくさん試されているカテゴリーですが、「自動走行のロボット」を使うことで屋外での農業を自動化しようというスタートアップです。

8 : Boom(超音速飛行機)

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ドローンや自動運転カーなど、モビリティの分野は様々な革新が起きていますが、長い間 Form Factorも変わっていないのが飛行機の分野です。Demo Day当日にVirginグループが$5Bという巨大契約をしたことで話題となったBoomは、東京 – SF間を4.5時間で飛ぶ飛行機を開発しています。

9 : Perlstein Lab(奇病薬発見)

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「ソフトウェアを活用した創薬」は注目されている分野の一つですが、大手の製薬会社が取り組まない、7000以上ある「珍しい病気の薬」にフォーカスし、その薬を開発しているスタートアップです。

10 : Unima(低コスト感染検査)

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HIVなどの検査を簡易かつ安価で行える技術です。血液を専用の紙に垂らして、それをスマホで送るだけで検査が完了するそうです。

 

Scrum Venturesでも、これまで10社以上 Y Combinator出身のスタートアップに投資を行ってきました。いずれも今回紹介したような大きな社会的な課題に革新的なアプローチで取り組んでいるスタートアップです。

年に二回行われるY Combinator のDemo Dayは、100社以上のプレゼンを一気に聞くという本当にタフな二日間ですが、同時に「イノベーションの現在地」を知ることのできる大事なイベントです。

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