Y CombinatorのDemo Day。注目すべきスタートアップ10社。

August 24, 2015 スクラム代表・宮田ブログ

7月、8月と続いたシリコンバレーの長くスローな夏休みの終わりを告げるY CombinatorのSummerバッチ(YC S15)のDemo Dayが開催されました。

今回も会場はComputer History Museumで、8/18からの二日間、トータル102社がプレゼンを行いました。

今回のバッチ参加企業のカテゴリーと業種の分布は下記の通りです。

YC-S2015

Marketplaceが増加

図1は、今回Demo Dayに参加をした102社をカテゴリーで分類したグラフです。

上位二つのカテゴリー、Saas(28社)とService(21社)は、前回のバッチから変化はありません。今回、大きく増加したのは、Marketplace ( 前回 3社 -> 8社)です。これはスマホの普及で、需要と供給を時間、場所、関心などをもとに結びつけやすくなったトレンドを反映していると言えます。

法務、フード系が増加

図2は、業種での分類です。

上位はこちらも変わらずで、金融(15社)、採用(7社)の順となっています。その中で特に目立ったのは法務系(3社)とフード系(5社)の増加です。
法務系、フード系は、いずれもAI(人工知能)やロボットの活用が進むと考えられている分野ですが、AIによる法律業務の効率化(ROSS Intelligence)、自動サンドイッチ作成ロボット(Bistrobot)など目新しい取り組みをしているスタートアップが多数参加していました。

継続する“Diversity”傾向

前回のバッチの際に「500化と医療系の躍進」というポストで、バッチサイズの急増(85社 -> 114社)と国際化について書きましたが、今回もその流れは変わりませんでした。
PayPal for Indonesia” “Amazon Fresh for Bangladesh”など、米国での成功モデルを新興国に持って行こうというスタートアップは今回さらに増えていました。また性的マイノリティ(Her)、人種マイノリティ(Afrostream)に特化したサービスが多かったことも今回の特徴と言えます。

注目のスタートアップ10社

さて、今回の102社の中で、注目したい10社のスタートアップを紹介したいと思います。

まずは、今回も多かった「ハードウェア系」から2つ。

1. Auro Robotics

自動運転カーのスタートアップ、Auro Roboticsは、大学、テーマパーク、リゾートなどのプライベートな施設向けに自動運転カーを開発しています。すでに大学内でテストを開始しており、商用化も近いということです。自動運転のハードルの一つである「3Dマップ」という点で、公道よりもはるかに複雑度が低いプライベート施設に特化するというアプローチは注目したいと思います。

2. Nebia

ものすごい小さな粒子のシャワーを作る、Nebia。AppleのCEOのTim Cookが個人でエンジェル投資をしたことでも注目を集めました。ただのシャワーヘッドではあるのですが、ものすごい小さな粒子のため70%も節水できるのと、通常のシャワーとは全く違って非常に気持ちいのだそうです。AppleやGooleにもテスト導入されているということで、あまりの気持ちよさにTimも投資してしまったのかもしれません。

次は、「デリバリー系」を2つ。どれだけオンライン化が進んでも、どこでもドアができるまでは必要なカテゴリーです。

3. Flirtey

ドローンによるデリバリーサービス。まだ米国では実験段階ということですが、ドローンを積極誘致しているニュージーランドでは、自動車部品のデリバリーをすでにスタートしているということです。どなたかニュージーランドにいったらぜひ試してみてください。

4. Lugg

“UBER for Delivery” 。スーパーや量販店で大きな買い物をしたときに、自分では運べない、でも「すぐ」家に届けて欲しい、そんな願いを叶えてくれるサービス。Costcoなど大手の小売とも提携し、UBERXのモデルで、スマホでマッチングしたドライバーがすぐにピックアップに来て、家まで届けてくれる。すでに急成長しているサービスです。

次は、巨大の「コンサバな市場」に挑む2社。

5. Vernox Labs

工事現場向けのビッグデータ分析。未だペンと紙で作業をされることが多いこの分野にビッグデータを導入しようというスタートアップ。監査用に保存されている過去の大量な工事管理データを分析することで、工事の無駄やボトルネックを予測できるようにするというアプローチ。

6. PicTrace

こちらは農業向け。現在は手書きの作業管理、収量管理などをデジタル化するSaas。技術的には地味ですが、こうした分野にはもっとチャンスがあるはずです。

まだまだ伸びる「マーケットプレイス分野」から2社。

7. TetraScience

研究施設のAirbnb。多くの大学、研究機関には多くの研究器具がありますが、その全てが常に使われているわけではありません。それらの空き時間に他の研究機関の人が使えるようにしようというアプローチ。研究施設だけでなく、自治体などいろいろと重複があるアセットに適用できる考え方だと思います。

8. Gigster

トップエンジニアのマーケットプレイス。アプリを作りたいというときに、自社でエンジニアを採用するのではなく、トップクラスのエンジニアにオンライン経由で発注ができる。クラウドソーシングは、単価の安いLaborをオンラインでマッチングすることから始まりましたが、こうした数が限られており、Valueの高いアセットをシェアするというのもこれから増えるトレンドです。

最後に「地味」に役立つ会社を二つ。

9. ScopeAR

遠隔作業用ARソフト。工場への指示など遠隔で映像を共有しながらする作業現場で、画面上に文字や矢印などを書いてインタラクティブに指示ができる。すでに自動車大手数社が活用しているということ。工場以外でも大いに活用の可能性がありそうです。

10. Smyte

詐欺やオンラインでの問題行動の予防API。他のサイト、ソーシャルでの行動から、問題行動を起こす可能性のあるユーザを特定できるAPI。広告などで培われた技術を、守りの発想で使おうというアプローチ。市場は大きそうです。

以上で10社となります。

その他にもソフトからハードまで面白いスタートアップがたくさんありました。YCのブログに多数紹介されているので、ご興味あれば見てみてください。


資金調達

「エンタープライズ3Dプリンタ」のCarbon3D、「HWメンテナンス予測Saas」のAugury、「ソーシャル学生ローン」のSoFiなどが新たに資金調達しました。

Carbon3Dは、Fordと提携したことが話題となり、今回Googleが投資をした3Dプリンタースタートアップです。シリアスな自動車製造の現場での活用が期待されています。Auguryは、様々なHWに独自のセンサーを取り付け、故障や交換時期などを音で予測する技術です。IoT化の裏側でこうした既存HWをスマート化する市場も膨大です。

[HW/プリンタ] Carbon3D
Series C ($100M) Google Ventures, Sequoia Capital and Yuri Milner
「エンタープライズ向け3Dプリンタ」

[SaaS/分析] Augury Systems
Series A ($6.48M) First Round Capital and Formation8
「HWメンテナンス予測SaaS」

[Marketplace/ファイナンス] Social Finance
Series E ($1bn) Softbank Corp.
「ソーシャル学生ローン」

[SaaS/ネットワーク] Filament
Series A ($5M) Crosslink Capital, Samsung Ventures,
「エンタープライズ向けm2mプラットホーム」

[SaaS/開発] Apiary
Series A ($6.8M) Baseline Ventures, Flybridge Capital Partners
「API開発」


M&A

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