シェアリングエコノミー&Fintechのソーシャルレンディングは日本でも普及するか?

March 17, 2016 by Guest Writer
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この記事はTMI総合法律事務所所属の弁護士3名(波多江氏、竹内氏、小川氏)が運営するサイト BizLawInfo.JP の記事を加筆修正の上、転載したものです。波多江氏、竹内氏、小川氏の3名は、日本とシリコンバレーに分かれ、コーポレート、投資、M&A、個人情報、知財等、幅広い分野で先端の法律実務に従事しています。BizLawInfo.JP では、日本とシリコンバレーのStartupの実務や日本企業の海外進出を取り巻く環境に関する法律問題などについて、積極的に情報を発信しています。

シェアリング・エコノミーの基本コンセプトは、「いま使ってないものがあって、必要としている人がいるなら、使わせてあげたらwin-winじゃん」というところにあります。

この考え方って、アレにとても親和性があると思いませんか?そうです、お金のニーズです。お金のシェアリング・エコノミーのことを、「ソーシャル・レンディング」なんて呼んだりもします。

ソーシャル・レンディングを簡単に説明すると

例えばA君が、どうしてもApple Watchが欲しいとしましょう。でも手持ちのお金が乏しい。そんな時には銀行やノンバンクにお金を借りるのがこれまでの基本的な姿でした。もちろん家族やお友達に借りてApple Watchを買っても構いません。

では、シェアリング・エコノミーの考え方を対応させるとどうなるでしょうか。例えばBちゃんがまとまったお金を持っているとします(例えば100万円)。

Bちゃんは、その100万円を銀行に貯金してもいいですし、株を買ってもいいでしょう。そのほかに「お金を借りたいと思っている人に貸してあげる」というオプションが入ってくることになります。BちゃんがAくんを知っている場合、

A「お金を借りたいな〜、来月の給料日から、5回くらいに分けて返したいんだけど」
B「いいわよ、じゃあ100万円貸してあげる。来月25日から5回に分けて、利息を含めて1回あたり21万円でどう?」
A「それは嬉しいな!でもこのマイナス金利時代に、金利5%ってすんごい高い気がするよ…」
B「うるさいわね、じゃあ仕方ない、1回あたりの弁済額を20万5000円にしてあげるわよ」
A「ほんとに!それなら金利2.5%だし借りるよ!ありがとう!」

という話であれば、「知人へのお金の提供」ですから、これまでもあり得ました。金利が2.5%というのが高いか安いかはまぁさておいて、特に目新しい気はしないですよね。

しかし、

B「少しお金を運用に回せるわね。ネット上でお金が必要な人を探してみて、信用できそうなら貸してみようかな」

というモデルになるとどうでしょうか。これがソーシャル・レンディングです。

米国のソーシャル・レンディング Lending Club の仕組み

アメリカではソーシャル・レンディングはどんどん普及しています。代表的なのはサンフランシスコ・ベースのLending Club

lending club

Lending Clubでは上限$35K(現在のレートで400万円くらい)の借金を申し込むと、Lending Club側で当該ローンのリスク評価(A〜C)を行い、利率と月額の弁済金額を算出します。もちろん誰もが借金に成功するわけではなく、申込みに対し実際ローンが付く確率は10%くらいとのこと。

投資家(貸し手)は同社のプラットフォーム上で同社が算定したリスクを念頭に、貸付先を選ぶなどしてお金を貸し付けるという仕組みです。401kのロールオーバー先として認められているため退職積立金をこちらで運用継続する方が増えている様子で、2015年末時点で貸付実績総額は$15.9B。1兆円を超えています。

ちなみにリーガル面で見ると、「ボロワー(借り手)が債務不履行になることはあると思うけど、レンダー(貸し手)はLending Clubに何か文句が言えるのかなあ」というところが気になります。

Lending Clubが公開しているレンダー(貸し手)との契約書によると、同社は「あくまで資金ニーズと余剰資金をマッチングしているだけであり、ありとあらゆる保証は存在しませんよ、ボロワー(借り手)のデフォルト(債務不履行)リスクはレンダーが負うんだからね、うちは関係ないんだからね」ということがものすごく強調して書いてあります。そりゃそうですね、そうしないとこのビジネスは成り立ちません。

ソーシャル・レンディングは日本でも普及するか?

となると、日本ではどうなのかね、ということが気になります。

そもそも日本では勝手に個人間のお金の貸し借りをマッチングすることはできません。それが、いわゆる貸金業法の規制です。まず、貸金業法2条1項にいう「貸金業」の定義を見てみましょう。貸金業とは以下のように定義されています。

金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うもの

つまり、
1. お金を貸すことを業として行うモノ
2. お金の貸し借りのマッチングを業として行うモノ
は貸金業に当たるのです。ですから、Lending Clubのようなビジネスは日本では簡単にはできません。2 になってしまうかもしれないからです。

Lending Clubは間違いなく「金銭の貸借の媒介」ではありますから、問題はそれが「業として」行われているかどうか?ということになります。「業として」とは「反復して社会通念上事業の遂行とみることができる程度のもの」であると言われています(なかなか分かりにくいですよね。それなのに違反し た場合には罰則もありますから、なかなか厄介なシロモノなのです。余談ですが、 この論点は、例えば親子・兄弟会社間の資金融通、信用取引、Convertible Noteでの出資などでもしょっちゅう検討課題に上がり、しょっちゅう法律実務家を悩ませ ています)。

BちゃんがAくんに貸すことになったのはたまたまで1回だけであれば、Bちゃんの行為は貸金業法違反にならない可能性があります。が、またお金に余裕があるときに他者に継続的にお金を貸し付けていこうとするのであれば、それはおそらく「業として」であり貸金業です。

というわけで、Lending Clubジャパンを作りたいときは、まずLending Clubが貸金業の登録をすることが必要になりますし、貸し手さん自体もおそらく貸金業の登録を受けなければならないでしょう。

Lending Clubが貸金業の登録をすることはできると思いますが、貸し手にイチイチ貸金業の登録を求めるのは現実的ではありません。ですので、結論としては、全く同じようなモデルを追求するのは難しそうです。

日本でソーシャル・レンディングを実現する方法

では似たようなモデルも無理かというとそんなことはありません。まず、貸し手の方からの資金提供を貸付としてではなく、出資とする方法があり得ます。この場合、貸し手のお金はファンドへの出資であり、借り手への融資は(貸金業登録をした)ファンドからの貸付として整理されます。

この場合でもファンド運用者であるマーケットプレイス運用者が無規制になるわけではなく、今度は金融商品取引法上の登録が必要になります。ですが、貸し手の方々にイチイチ貸金業の登録を求めるようなことにはなりませんので、ソーシャル・レンディングの概念自体はきちんと実現できそうです。

日本でのこの分野の先駆者はマネオさんですが、マネオさんでも匿名組合が利用されています。新しい分野に取り組むことは色々な規制と折り合いをつけながら事業を進めることをも意味するため、大変なご苦労もあったことかと推察していますが、本当に凄いなぁと頭が下がる思いです

しかもソーシャル・レンディングに限らず、FinTechの文脈は、常に金融レギュレーションとの関係に配慮しながらスキームを構築する必要があります。この意味で、ソーシャル・レンディングもFinTechも、事業検討時から弁護士の積極的な関与が必要になる分野であり、(しかも金融レギュレーションに詳しい弁護士さんは日本全体で見ると少ないため)それなりの当初資金を弁護士費用に充てることとなるモデルでもあるのです。ITやハードなどのStartupでは通常起業の直前直後から弁護士とビジネスのスキーム検討をすることはありませんから、これってなかなか凄いことですよね。

考えてみれば、住宅ローンのように超長期に亘る弁済が予定されていて、元本額も大きくなるローンでは、借り手の信用リスクさえ担保できればかなりチャンスのある市場のような気もしますよね。って、「信用リスクの担保」が一番難しいことは昔から同じであって、そこにプロとしての評価ができるから銀行さんの存在は不変なのだ、ということができそうですが、SNS時代の新しい信用情報の考え方自体を作りだそうとするStartupなどもありますし、銀行さんが引き続き注視する分野であることも頷けます。


記事提供: JP-US Legal Forum〜Business, Laws & Information BizLawInfo.JP
世界を変える!日本を元気にする!!腕一本で世界に挑むStartupのFounderから、日本を支える大企業の「次の100年」を担う方、はたまたVC/エンジェル投資家の方まで。「ここ、会社法の仕組みはどうなっている?」「起業したい、会社は日米どちらに作るべき?」そんなビジネス法にまつわるたくさんの疑問、私たちも一緒に考えていきたいと思います。

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