サンフランシスコのベンチャーキャピタルでのインターンシップを振り返って
MBAの夏休みを利用して6月中旬~8月中旬までの2カ月間、サンフランシスコにオフィスを構えるベンチャーキャピタル Scrum Venturesにてインターンシップを行った。この場をかりて、インターンシップ中での業務内容や学び、感じたこと等に振り返ってみたい。
きっかけ
私は、現在会社からの派遣でボストンにあるBabson大学の2年間のMBAプログラムに通っている。派遣元の会社は日本のIT企業で、システムエンジニアとして9年間従事してきた。下記の理由より、スタートアップと事業会社と両方の関わりをもつベンチャーキャピタルの内部で働いてみたいと思っているところ、Scrum Venturesにてインターンシップの募集があったので応募した。
- 事業会社とスタートアップの協業を促進するのにCVCを設立したり、ベンチャーキャピタルに出資することがあるが、事業会社とスタートアップとの協業においてベンチャーキャピタルがどのような役割を果たすのか内部からみてみたい。
- 米国のスタートアップトレンド、最新のビジネスモデルを深く学び、新規事業の発想に役立てたい。
- デューデリジェンスに携わることで、スタートアップの目利き力を養いたい。
業務内容と学び
インターンシップ期間では、主に下記の業務を行った。
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投資業務
投資チームのミーティングは週2回あり、ミーティングでは主に既存ポートフォリオの状況確認、投資案件のデューデリジェンスが行われる。デューデリジェンスでは、主にマーケット分析、競合分析、プロダクト分析、エグジット戦略、ファウンダー・チーム評価等が行われた。
私は、チームリーダの指導のもといくつかのスタートアップのデューデリジェンスにおいて競合分析、プロダクト分析、エグジット戦略の評価を行った。プロダクト分析においては、可能な限り実際のプロダクト・サービスを触って理解を深めるスタンスが印象的だった。VRヘッドマウントディスプレイを被ったり、無料Trialで試してみたり、近くに投資案件のスタートアップが提供するサービスがあればそこに足を運んだりと、実際の体験で感じることはネットで記載されている内容よりもずっと頼りになるものだと思う。
また、プロダクトを理解するという点において、ネットワークも非常に重要であると感じた。プロダクトの中には、馴染みのない技術をつかっていることも多々ある。そんな時、その領域の有識者がいれば、話を聞くことで効率的に理解を深めることができる。実際に私もFPGA/ASICといったハードウェアを扱ったスタートアップのデューデリジェンスに携わった時には、FPGA/ASICで回路設計している友人に電話して、根掘り葉掘り聞いて理解を深めた。
競合分析においては、チームリーダの『it is not apple to apple』という言葉が頭に残っている。なんとなく似ているプロダクト・サービスはたくさんあるので、マーケットや想定顧客、プロダクトの特徴等をしっかり見極めないとappleとorangeの比較になってしまう。
全体を一人でみるレベルには到達できなかったが、投資チームでの活動を通してデューデリジェンスの全体感の理解、及び投資家からみたスタートアップの着眼点は養えたのではないかと思う。
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スタートアップのBlogでの紹介
一週間の資金調達およびM&Aのニュースから、チームメンバーそれぞれが面白いシリコンバレーのスタートアップをいくつかピックアップし、ミーティングで共有しあい、その中から5つピックアップしてBlogで紹介する。2カ月間この活動を続けることで、それなりの数のスタートアップを見ることができた。
最初は、どれも新規性のあるスタートアップにみえていたが、多くのスタートアップを見ていく中、同じようなスタートアップと感じるようになり、個々のスタートアップの特徴・違いを見る目が研ぎ澄まされていったように思う。
また、ミーティングでは、『なにがユニークなのか』、『技術的に凄いのか』、『売上や顧客数等の数字まわりはどうなのか』等の議論がなされた。この活動を通して、米国のスタートアップのトレントの理解が深まるとともに、スタートアップの目利き力が養われたのではないかと思う。
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AI業界に関する調査、及びレポート作成
注目を集めるAI業界に関して調査を行い、AI業界全体のプレイヤーに関するレポート作成に他のインターン生と一緒に取り組んだ。レポート作成にあたって、200弱ほどのAIを活用したスタートアップを調査した。
産業別にみると金融、ヘルスケア、流通、リテール、農業等、本当に様々な産業でAIが活用されてきていることを改めて実感できた。一方で、産業別に使われているAIの機能は共通なものも多く、画像認識、音声認識、自然言語処理等に学習を絡ませたものが多かった。
このレポート作成を通して、AIを活用したスタートアップをみたときに、どこでAIが使われているかを深く理解できるようになった。また、AIを活用したアプリケーションの発想力もついた気がする。例えば、飛行機の機内持ち込み検査のX線検査機の前で荷物のX線を眺めている検査官を見たときに、『危険物の特徴を学習したAIを活用したほうが効率性も検知率もあがるだろうになー』とパッと頭に浮かぶような感じである。
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各種調査
その他、発生ベースでFin Tech周りの最近のトレンド、アクセルレータ、オープンイノベーション等についての調査を実施した。
ネットワーキング
各種イベントを通して、様々なネットワーキングをすることができた。特にScrum Venturesが開催している「シリコンバレーの動向を1時間で知る」勉強会Tackle!での懇親会は有意義であった。懇親会にてサンフランシスコにきている日本企業の方々との会話を通して、いろいろな企業のサンフランシスコでの活動内容を知ることができた。
お話しした方の中には、私のバックグランド・興味を聞き、関連のあるイベントや集まりに招待してくれる方もいて、ネットワーキングのループに入っていく感じがした。その他にもエンジニアの会やらピッチイベントに参加したりして、現地で活躍するエンジニアの方々、スタートアップを志す方々と話すことができ刺激を受けることができた。
振り返ればあっという間の2カ月ではあったが多くのことを学べた2カ月だったと思う。最後にこのような貴重な経験をさせてくれた宮田さんをはじめScrum Venturesのメンバーの方々、DGオフィスでお会いした方々、その他イベントでお会いした方々にお礼を申し上げたい。
ありがとうございました、そしてKeep in touchで!
By Yohei Sawai