米国最大の広告予算をフル活用。P&G OBが仕掛ける「ブランド×地方創生」アクセラレータ Brandery。

November 2, 2015 スクラム代表・宮田ブログ

一ヶ月ほど前になりますが、初めてオハイオ州第三の街、Cicinnatiに降り立ちました。19世紀には河港都市として栄え50万人ほどいた人口も、今は30万人と大きく減少し、非常にこじんまりとした印象の街でした。

今回そんなCincinnatiに訪れたのは、「小売店舗からレジをなくす」という大きなビジョンを持っている弊社の投資先 GoSkip社が参加しているアクセラレータ、BranderyのDemo Dayに参加をするためです。

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Demo Day会場

「ブランディング」に特化したアクセラレータ Brandery

Branderyは、一般的なアクセラレータY-CombinatorやAngelPad、カテゴリーに特化したアクセラレータRockHealth(ヘルスケア)やImagine K-12 (教育)、企業スポンサーのアクセラレータ Disney AcceleratorやQualcomm Acceleratorとも違う、「ブランディング」に特化したアクセラレータです。

Branderyは、2010年にP&GのOBのDave Knoxたちによって、P&Gの本社のあるCincinnatiで立ち上げられたアクセラレータです。立ち上げ当初から「ブランディング」をコアな価値として掲げ、幾つかの面白い取り組みをしています。

P&Gが有償でのパイロットプロジェクトをコミット

一つ目は、P&Gを中心とする大手消費財系企業との連携です。

もともと「米国最大の広告費」を誇るP&Gとの連携は強かったようですが、今回「P&G Fellowship」という新しいプログラムを発表し、さらに突っ込んだ連携を始めたようです。

P&G Fellowshipの中身は下記の通りです。

  1. P&Gの「メンター / 専門家」への直接のアクセス。大企業向けのソリューション開発を支援。
  2. P&Gの「ブランドチーム / 幹部」との密接な連携。マーケット戦略などを支援。
  3. P&Gブランドでの「有償パイロットプロジェクトのコミットメント」。
  4. P&Gの「グローバル幹部」とのミーティング機会。事業戦略へのアドバイス。

ここまで詳細にコミットメントが記載されている例は珍しいと思いますが、特に3の有償でちゃんとパイロットをやりますとコミットしているのがいいですね。もともと予算はうなるほどあるわけで、こうしてアクセラレータ向けに使うというのは一石二鳥という感じがします。

P&Gは巨大企業ですが、実はオープンイノベーションの先駆者でもあります。

2000年にCEOに就任した A.G. Lafleyが、「全体の50%のイノベーションを外部化する!」とぶち上げ、極秘であった自社のR&DテーマをWebで公開して世界規模でパートナー探しをした結果、年間3000件以上もの提案が寄せられ、年間4,000億円規模の新規売上を達成したという武勇伝もあります( 私のスライド、「Open Innovation 〜ケーススタディと成功の5つの鍵」P.11あたりの紹介があります。)。

デジタルエージェンシーによるハンズオン支援

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二つ目は「エージェンシー連携」です。

これはGoSkipのピッチが始まる前に、リードメンターのMicrosoftのVPが説明をしている時に表示されているスライドです。GoSkipのロゴの右に、Curiosityというロゴがあります。これは、今回のBranderyのバッチで、GoSkipを支援してくれていたローカルのデジタルエージェンシーのロゴです。

Branderyでは、バッチへの参加企業各社に対して一社ずつのデジタルエージェンシーをアサインし、スタートアップがCPG企業に向けにサービス、ソリューションを提供するために必要なデザイン、ブランディングなどをきめ細やかに支援をしてくれるようです。

Cincinnatiは小さな都市にも関わらず、P&G以外にもFortune500に入る大企業が5社も本社を置いているということで、デジタルエージェンシーはものすごくたくさんあり、Branderyは彼らをプログラムに巻き込むことで質を高めているようです。

ゴーストタウンをスタートアップで活性化

DemoDayに参加をしていてもう一つ印象的だったのは、Cicinnatiのローカルのコミュニティを非常に積極的に巻き込んでいるということです。

スポンサーには、P&Gなどのローカル企業以外に、地元のNPO ( CincyTech )、地元の財団( Cincinnati Foundation ) なども名を連ねており、地元一体となってこの活動を盛り上げようという機運を感じました。

また、Cincinnati Startup Card というスタートアップ企業は地元のお店で割引が受けられるプログラムも提供しているようです。

Branderyは最近オフィスを移転して、その近くにCincinnatiの外から来るスタートアップ向けのシェアハウスの提供も始めたということです。この新オフィスとシェアハウスがある地域は昔は治安も悪いゴーストタウンだったということですが、Branderyを含めたスタートアップコミュニティの力により、新しい元気のある地域に生まれ変わりつつあるということでした。

地元企業の力を活かしながら、様々な地元の人々を巻き込み、若いスタートアップたちを核として地方創生に繋げていくというのは、なかなか面白いモデルですね。

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