新型Apple TV発表。Airbnbに見るシームレスな「アプリの未来」。

September 14, 2015 スクラム代表・宮田ブログ

AppleがSan Franciscoで恒例のイベントを開催し、iPhoneiPadなど多くの新製品を発表しました。

悲しいかな、私は結局まだiPhone6sの予約すらできていないのですが、13インチの大型のiPad「iPad Pro」や、Apple初のスタイラス「Pencil」など、消費者として興味をそそられる製品も多くあったと思います。

一方で、スタートアップ、イノベーションという視点から大きく注目したいのは、今回発表された「Apple TV」の新モデルです。

ZenSquareにも全ての会議室に設置されており、シリコンバレーのスタートアップのオフィスに行くとほぼ毎回見かける「Apple TV」ですが、これまでの販売台数は2500万台程度と、7億台以上を販売しているiPhoneに比べれば非常に小さな数字でした。

そして多くの場合、その利用方法も「MacやiPhoneなどのスクリーンをテレビに表示するため」に限定されており、テレビという端末を本当の意味で「再発明」するには至っていません。

しかしながら、今度の新モデルは大きな期待を持てるものになっています。

その理由は、今回ついにiOSベースのOS「tvOS」が導入され、iPhoneやiPadと同様に「App Store」が導入されるということです。

アプリ開発者は、Apple TV向けに様々なカテゴリーのアプリを開発できるようになります。そして、ユーザは、iPhoneやiPadと同様にApp Storeのカテゴリーやランキングからそれらをダウンロードして楽しむことにができるようになります。

当初メインとなると見られているのは、NetflixやHuluといった「動画」系と「ゲーム」系ですが、個人的にはそれ以外の「ライフスタイル系」のアプリに注目しています。

個人間ルームシェアリングのAirbnbがいち早く発表したApple TVアプリは、「TVアプリの未来」に対する想像を掻き立てます。

「検索」や「予約」にフォーカスをしたiPhone向けのアプリとは大きく異なり、AirbnbのAppleTVのアプリは旅行の「プランニング」にフォーカスしたものになっています。

これまでも旅行に行く仲間と集まってiPhoneやiPadで行き先を相談するという利用シーンはあったと思いますが、今回はテレビの「大画面」にインタラクティブな「アプリ体験」を持ち込めるという違いがあります。

家族や仲間とソファでくつろぎながら、テレビの旅行番組をゆったりと見るノリで、一緒にきれいな写真や動画を見ながら旅行の行き先や宿泊先を相談する。しかもSiriによる検索にも対応しているので、みんなでどんどん新しいアイディアを出し、検索し、またその写真や動画を見る。これまでにはない旅行プランニング体験が実現しそうです。

来年には動画の多くがVR対応するでしょう。Facebookの友人がアップしたビーチやアクティビティのVRコンテンツを堪能することもできるかもしれません。すでに人々は「旅行よりもプランニングの方を楽しんでいる」という調査データもあるようですが、実際に旅行以上に楽しい時間になるかもしれません。

また一方で、Airbnbは、Apple Watch向けのアプリの新バージョンも発表しています。こちらは、実際の「旅行中」を主な利用シーンに据えており、貸主と借主の間でのコミュニケーションに特化しています。

これまでもテレビを見ながら、スマホやタブレットを操作する「セカンドスクリーン」という視聴行動は一般的になっていましたが、今回Apple TVに「アプリ体験が持ち込める」ということで、スマホの世界で様々なアプリを提供している事業者が、自社の世界観の中でよりシームレスなアプリ体験を提供する時代がやってきそうです。

これは旅行というジャンルに限らず、金融、ショッピング、飲食、ヘルスケアなど様々なライフスタイルカテゴリーに広がりそうです。まだまだ普及には時間がかかるApple TV、Apple Watchですが、スマホでアプリを提供されている方々は、マルチスクリーンのアプリがもたらすシームレスな世界を考え始めてはいかがでしょうか。


資金調達

「Bitcoinベース個人間送金サービス」のABRA、「ホームメンテナンスアプリ」のCodefied、「キャッシュフロー管理」のFundboxなどが新たに資金調達しました。ABRAは、ブロックチェーンの技術を使った海外送金アプリです。競合は多い分野ですが、既存の仕組みよりもはるかに安い手数料を実現できるので今後有望な分野です。Codefiedは、水漏れ、電化製品修理など家に関するすべてのサービスを一つのアプリから依頼できるアプリです。今後IoTの普及も相まって、スタンダードとなりそうな分野です。

[Service/ファイナンス] ABRA
Series A ($12M) First Round Capital and RRE Ventures
「Bitcoinベース個人間送金サービス」

[App/ホーム] Codefied
Series A ($8.67M) KPCB
「ホームメンテナンスアプリ」

[Service/ファイナンス] Fundbox
Series C ($50M) Bezos Expeditions, Blumberg Capital, General Catalyst Partners,
「キャッシュフロー管理」

[SaaS/BI] CartoDB
Series B ($23M) Accel Partners, Salesforce Ventures
「位置データヴィジュアリゼーションSaaS」

[Marketplace/ファッション] thredUP
Series E ($81M) Goldman Sachs, Highland Capital Partners
「中古服マーケットプレイス」


M&A

[Commerce/旅行] Vamo Labs
N/A by Airbnb
「旅行プランニング」

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