哲学専攻から最先端のテクノロジーアナリストへ ― Ashley Huang [Staff Interview]

September 23, 2025 スタッフインタビュー

米国チームメンバーのAshley Huang(アシュリー・ホアン)は、Hokkaido F Village X や Sakura Deeptech Shibuya Accelerator の Managaging Director である Michael Yan の元、ディープテックや一般消費者向けプロダクトのリサーチアナリストとして働いています。Ashleyの哲学専攻から、ベンチャーキャピタルで、最先端のテクノロジーを分析する現在の仕事につくまでのキャリアについて、話を聞きました。

哲学者の思考とスタートアップの世界との出会い

Ashleyがベンチャーキャピタルであるスクラムにたどり着くまでの道のりは、まっすぐな道ではありませんでした。彼女は高校時代、学生主体のプロジェクトを支援するために資金を集める学生団体を設立しました。当時は気づいていませんでしたが、それは、ベンチャー投資の基本的な考え方に沿っていました。「その頃は全くわかっていなかったけれど、それは新しいアイデアを支え、発展させていくことでした」と彼女は語ります。

ニューヨーク大学(NYU)では哲学学士号を取得。絶対的な真理を追い求めたいという思いが、哲学を専攻した動機でした。「哲学こそ唯一学ぶに値する学問だと思っていました」と彼女は言います。「でも長年、真理をつかもうと格闘する中で、完全に到達することはできないと気づきました。ただ、正確さ、忍耐、そして他者と協力しながらアイデアを磨くことで、その近くまで行けることはわかりました」。この姿勢は今も彼女に根付き、スタートアップやテクノロジーを評価する際の軸となっています。

大学3年の夏、中国銀行でのインターンを経験した後、同僚からベンチャーキャピタルを勧められたことがきっかけで関心を持ちました。「VCって何かすらも知らなかったんです」と彼女は振り返ります。「でも新しいコンセプトを常に学び、飛び込んでいく考え方に惹かれました」。

その後、ブラウン大学でイノベーションマネジメントと起業学の修士課程に進学。テクノロジーの商業化を中心としたプログラムでした。その時、計画していたVCインターンは事情により実現しませんでしたが、その探求は最終的にスクラムに彼女を導き、現在の仕事へとつながりました。

ディープテックと一般消費者向けプロダクトの領域でイノベーションを発掘する

現在Ashleyはスクラムのリサーチアナリストとして、技術投資責任者のMichael Yanと一緒に働いています。彼女の役割は、ディープテックと一般消費者向けプロダクトの領域におけるアーリーステージのスタートアップの発掘と評価です。

「Michael から具体的な指示がないときは、有望なスタートアップを探すことに時間をかけています」と彼女は説明します。「毎週最低でも5人の起業家と話しています。その前に技術的なことを勉強して、適切な質問ができるように準備しています」。

技術系のバックグラウンドを持たない彼女は、新しい技術の基礎を独学で学んでいます。たとえば「電波を用いた感情検知」や「Wi-FiによるARグラス向けデータ転送」といったテーマです。「私は企業を見るとき、2つの視点を大事にしています。OpportunisticとIntentionalです。Opportunistic は機会をとらえる姿勢、偶然出会った技術が思いがけないアイデアやソリューションになるかもしれません。Intentionalは、自分が解決したい課題や目指す方向を明確に意識し、それに役に立つかどうか?です」。

以前、彼女自身がゲームをしている時に、ゲームコントローラーを握っていると手が汗ばむことに気づき、グリップ改善のために革新的な素材を開発するスタートアップを探し出しました。Intentional の具体的な一例です。「ユーザーの立場に立って、本当の問題点を見つけることが大事です」と彼女は言います。

ヘルスケアイノベーションへのグローバルな視点

Ashley の業務領域はディープテックや一般消費者向けプロダクトにとどまりません。彼女はスクラムの東京オフィスメンバーと協力し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と進める医療イノベーションプロジェクトにも関わっています。製薬コンサルティングの経験を持つ彼女は、米国の医療市場に関する知見を提供し、日本側とのギャップを埋める役割を果たしています。

コンサルティングの経験を振り返り、彼女は「堅苦しい方法論だけでは不十分」と強調します。「この分野では柔軟であり続け、常に目的を見失わないことが大事です。そうすることで細部にとらわれすぎて、道を見失うことを防ぐことができます」。

ベンチャーを超えて:アート、音楽、そして感性

仕事以外でも、Ashely は探求心を発揮しています。週2回はテニスをし、週末はビーチバレーを楽しみます。芸術にも深く関わり、特に音楽に情熱を注いでいます。「音楽の“アート”の部分に惹かれるんです」と語り、日本の DJ、ヤキマツ・ヤスキをお気に入りに挙げます。「レイブそのものではなく、緻密な音の世界やそこに込められたクリエイティビティに魅力を感じます」。

この芸術への感性は投資姿勢にも通じています。「感性は教えることも、AIで代替することもできません。それがスタートアップやプロダクトに対して確信を持つ源なんです。AIはリサーチやメールの下書きには役立ちますが、人間の判断力は代わりがききません」。

哲学からベンチャーキャピタルへと至るAshleyの道のりは、彼女が、類稀なる好奇心、柔軟な適応能力を持っていること証明しています。そして技術だけではなく、人の理解や感性が大事だと考える姿勢を持って、彼女は思慮深く洞察に富んだ視点でイノベーションの最前線を切り拓き続けています。

ブログの更新情報をメールでお届けしています。

米国の注目スタートアップ情報 テックトレンド スクラムベンチャーズの投資先インタビュー
などをブログで発信しています。合わせてメールでもお届けしていますので、お気軽にご登録ください。

ニュースレター登録

でも情報発信しています。

関連ポスト