今週の注目5社【脱炭素Special】藻類CCUS / モジュール型EVパワートレイン / グリーン水素電解技術 / ガレージ核融合炉 / バイオベースアロマティクス

December 19, 2023 今週の注目スタートアップ

11/30〜12/13にかけて気候変動に関する国際カンファレンス「COP28」が開催されました。今回はスクラムベンチャーズ&スクラムスタジオの脱炭素担当のマイケル島田のセレクトによる『脱炭素系スタートアップ』注目の5社をご紹介します。バックナンバーはこちら。

1.「藻類CCUS」HyveGEO

微細藻類を利用し、乾燥した土壌の再生および高品質の二酸化炭素除去クレジットを提供するスタートアップ。

乾燥した砂漠などの土壌を耕作可能な土地に変えることが可能な特許取得済みの4種類の高成長微細藻類を開発している。通常の藻類よりもはるかに高い割合で炭素を隔離することができ、その藻類をバイオ炭に変換することで炭素を隔離・貯蔵することができるという。炭素を回収しながら持続可能な農業を推進することで食料生産の促進が期待されている。

藻類の成長スピードは早く炭素吸収に適していることから、藻類を活用した二酸化炭素を吸収・固定する「ブルーカーボン技術」がCCUS(Carbon dioxide Capture,Utilization and Storage)領域でも注目されている。

2022年創業、本社はケンブリッジ(イギリス)。

2.「モジュール型EVパワートレイン」Scalvy

モジュール型のEV専用パワートレインを開発するスタートアップ。

カスタマイズ可能な同社のEV専用パワートレインは、モジュール式かつ部品数を大幅に削減することで、既存のソリューションに比べて開発スピードが速く、最大25%のコスト削減が可能。また、EV車種のサイズに合わせてカスタマイズできるため、同システムをEVバスや大型トラック、オフロード車など様々な車体に活用できる。

世界中でEV化が進む中、バッテリー技術の開発が注目されがちだが、EVの車体を速くスケール可能な形で量産できる点でも注目されている。

2022年創業、本社はサニーベール(カリフォルニア州)。

3.「グリーン水素電解技術」SunGreenH2

グリーン水素生産のための電解層技術を開発するスタートアップ。

独自開発したナノ構造材料を利用することで、高価かつ非効率な通常の電解槽技術と比較し、レアメタルなどの原材料の使用量を30分の1に減らし、エネルギー使用量を10%削減しながら2倍のグリーン水素を生産できるという。

水素社会の実現に向けたサプライチェーンの構築は、日本も含めて多くの国が注力している領域。今後爆発的な成長を遂げると予想されているグリーン水素市場において、製造コストの削減が鍵を握ると言われている。

2020年創業、本社はシンガポール。

4.「ガレージ核融合炉」Zap Energy

ガレージに収まるサイズの核融合炉を開発するスタートアップ。

核融合炉を開発する多数の企業が使用する超電動磁石や高出力レーザーではなく、せん断流を用いてプラズマを安定させる「Zピンチ」方式を用いた核融合炉の開発を進めている。「Zピンチ」方式は不安定なため実用が難しかったが、独自の技術で安定性を持続させることに成功しているという。ガレージに収まる程度の最もコンパクトで低コストかつスケーラブルな商用核融合炉を目指しており、同社の技術が実用化されると大型設備なしで安価かつカーボンフリーのエネルギー供給が可能になる。

ワシントン大学とローレンス・リバモア国立研究所の共同研究プロジェクトからのスピンアウト。米石油大手Chevronや英石油大手Shell、ビルゲイツが率いるBreakthrough Energy Venturesなどから大型資金を調達している。

2017年創業、本社はシアトル。

5.「バイオベースアロマティクス」Relement

バイオマスから作られた再生可能な化学原料(芳香族化合物)を開発するスタートアップ。

サトウキビの搾りかすやビートパルプ、木材廃棄物などの再生可能原料からバイオベースのアロマティクスを製造することで、化学原料の代替品として期待されている。コーティングや潤滑剤、接着剤などに利用でき、塗料がより硬くなり傷つきにくくなるなど、品質面でも優れているという。

ベンゼンをはじめとする芳香族化合物と呼ばれる化学原料は、これまで化石燃料から製造されており、再生可能な化学原料を提供するグリーンケミカル事業は今後も注目の領域だ。

2020年創業、本社はオランダ。


【今回の5社をセレクトしたスクラムベンチャーズ&スクラムスタジオの脱炭素担当】

Michael Matsumura – Partner

主にClimate Tech分野の投資を担当。日興シティグループ証券を経て、オランダのDelft Energy Initiativeで再エネ研究プロジェクト、気候変動モニタリングプロジェクトに携わる。その後、Deltares(独立研究機関)で地熱や太陽熱を利用した地域暖房ネットワークを研究。Arup、The Lantau Groupを経てソフトバンクにて戦略投資案件などのビジネス・財務DDに従事。英国UCL大学物理学卒、蘭国デルフト工科大学ステナブルエネルギー技術修士、CFAチャーターホルダー。

島田 弓芙子 – Program Manager

脱炭素をテーマにしたオープンイノベーションプログラム『GreenX』 や、関連テーマの事業開発を担当。シティグループ証券を経て、デロイト・トーマツにて再エネ・電力・エネルギーの政策立案やアドバイザリー業務に従事。ムーディーズ・インベスターズ・サービスにて、国内電力会社・自動車OEM・商社などの格付分析業務を担当。ジョージタウン大学(国際政治学科)、コロンビア大学国際公共政策大学院(SIPA、エネルギーマネジメント政策学科)修了。

「脱炭素」をテーマに、世界中のスタートアップと連携・事業共創を行うグローバル事業共創プログラム『GreenX』 


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