日本の大企業と海外のスタートアップの架け橋として、新しい形のオープンイノベーションを生み出したい—大嶋紗季 [Staff Interview]

May 19, 2021 by Guest Writer

大嶋紗季は、サンフランシスコ・オフィスの新規事業開発部門で、日本語を母国語とする唯一のスタッフ。中東について詳しかったり、女性のエンパワーメントについて情熱的に語ったりする活発な印象の女性。20代半ばに渡米しMBAを取得している。そんな彼女だが、日本生まれ日本育ちで、高校、大学までは日本の女子校出身。何が彼女を海外に向かわせたのか?

大嶋さんのお仕事について教えてください。

オープンイノベーションを通じて、日本企業とグローバルスタートアップの新規事業を創出するスクラムスタジオを担当しています。私はサンフランシスコオフィス勤務で、Biz Dev Managerとして働いています。

渡米して5年ほどになりますが、アメリカという多様性を許容する、いろんな人が様々カタチで活躍できる場所で働けるのを楽しんでいます。

いつ、アメリカに渡ったのですか?

日本の女子大を出て、一度は日本で就職していました。でも、自分の能力をもっと高めたいと考え、アメリカに渡り、サンディエゴのUCサンディエゴでMBAを取得しました。その後、イスラエルやサンフランシスコでのインターンを経てスクラムベンチャーズに入社しました。

日本生まれ、日本育ち、海外に興味を持ち始めた理由

学生時代はどんな風に過ごしていましたか?

海外で活躍する日本人といえば、帰国子女や、東大、京大などの難関大学を出た人…というイメージがあるかもしれませんが、私は日本生まれ、日本育ちで、埼玉の女子高に通っていましたし、大学も横浜のフェリス女学院大学です。ちょっと、多くの人が持つ『シリコンバレーで働く人』のイメージと違うかもしれません。

中学~高校生の頃は根が真面目なせいか、周囲の期待に応えなければ……という思いが強過ぎて勉強ばかりしていたり、慣れないことをして体調を崩したりしていました。別に、家が厳しかったとかいうことはなくて「勉強しろ」とか言われたこともなかったんですけど、なぜか自分にとプレッシャーをかけ続けてしまっていました。

それが変わるキッカケがあったのですか?

進学塾で英語の勉強をしていた時に、テキストの例文を読んでアメリカのカルチャーに触れて「こういう自由な文化もあるんだ!」と衝撃を受けました。そこから海外への想いがつのっていったような気がします。

大学では、さまざまなボランティアやNPOの活動に参加する機会がありました。女性のエンパワーメント、社会進出や、海外の人たちの文化を紹介したり、支援したりする活動も経験しました。たとえば、カタールと日本の親交を開始から40周年のイベントがあって、そこで翻訳やイベント運営のボランティアをしたり。カタールって、とても小さな国なんですけど、液化天然ガスが出てとても裕福な国なんです。そんなこともそれまでは知りませんでした。

中東って、日本ではすごく危険な地域だと思っている人が多いですが、大半の地域は紛争地帯ではありませんし、普通に旅行できる場所です。大学で国際関係学を学んでおり、日本にいるカタール人や、サウジアラビア人と知り合って、いろんなことを知りました。ゼミでは、中東湾岸諸国で日本の企業がどうやって活躍できるか? というような研究をしていました。

就職した会社を辞め、MBA取得のために渡米

大学を卒業して、最初は日本企業に就職したのですか?

卒業したら、大学で学んだことを活かして、日本の企業の海外進出をサポートする仕事に就きたいと思っていました。その前に、日本の企業について、あまりにも何も知らないな…と思い、日系企業向けにアウトソースのソリューションを販売している会社に営業として就職しました。

でも働くうちに、日本にいて海外進出を支援するだけではなく、日本以外の国についてもっと知りたい、海外からみた日本について知りたい、多様な視点を身につけたいという気持ちが強くなりました。悩んだ末、自分のスキルアップのためにもMBA取得を目指して、海外留学にチャレンジすることにしました。また、生い立ち的にも経営を理解したいと思うのが普通のことでした。

生い立ち的に、とは?

実家が関東圏内に30店舗ほど店を持つファミリービジネスを経営しており、両親も祖父母も、家で普通に売上や経営の話をするような環境でした。だから自然と経営に関して興味がありました。我が家はお正月も全然関係なくて、年始から営業している店舗に指示を出したりしていました。

サンディエゴでMBAを取得

MBAの課程に入るのは大変でしたか?

基本的にMBAは、5~10年職歴を積んでからチャレンジする人が多いんです。入学するためには、長いと2年ぐらい試験勉強して受ける人もいます。私は入学準備の勉強をしながら、1年半ほどの間、実家の家業で経営に携わらせてもらったり、チームマネージメントの体験をさせてもらったりしました。

試験ではエッセイが必要になりますが、そのエッセイも100万円以上ものお金をかけてカウンセラーを雇って勉強して書く人もいます。でも、そんなにお金かけられなかったので、自分で書いて、英語ネイティブの友達に添削してもらってました。無事、UCサンディエゴに入学することができました。

MBAではどんな学びがありましたか?

MBAの課程では、グループワークが多いのですが、世界中から集まっているバックグラウンドが全く違う人をまとめるのが、自分は得意なことに気がつきました。正直、アカウンティングやファイナンスは苦手でしたが、ミーティングのファシリテーションだと生き生きしている自分に気づいたんです。この自分の強みを、今後の仕事でも生かしていきたいと思いました。

2年間サンディエゴで勉強してMBAを取得した後、サンフランシスコとイスラエルの企業で、インターンを体験しました。

イスラエルでインターンとは、貴重な経験ですね。

日系ベンチャーキャピタルのイスラエル拠点なので、日本人がいるのかと思ったら、全く日本語が話せるメンバーがおらず、最初は驚きました。ヘブライ語が飛び交う環境でした。

投資先には日本市場を目指す企業もあったので、日本人として日本マーケットについて話す機会があったり、友人を通して現地のスタートアップと話す機会にも恵まれました。そこで「日本の市場は独特で難しい」という声を聞いて、自分が架け橋となることで、役に立てることもあるのではと思い始めました。

海外のスタートアップと、日本の市場を繋ぎたい

MBAの時にオープンイノベーションというコンセプトを学び、シリコンバレーやイスラエルで出会ったスタートアップの人たちが「日本の市場は独特で難しい」と言っているのを聞いて、海外進出をしたいと考えている日本企業と、海外のスタートアップの架け橋になりたいと考えて、就職活動を行っていました。

日本のコンサルと、香港のスタートアップの内定をもらって迷っていた時にスクラムベンチャーズ代表の宮田に会いました。その時に、ひとつのテーマを設けて多数のスタートアップを集め、一緒にビジネスしたい日本企業と新規事業を生み出す『スクラムスタジオ』のコンセプトについて話を聞きました。ちょうど、スポーツをテーマにしたグローバル・オープンイノベーション・プロジェクトの『SPORTS TECH TOKYO』が立ち上がるタイミングでした。

これまでインターンを通して経験してきたオープンイノベーションは、知識ベースの教育の側面が強かったのですが、スクラムベンチャーズなら、実際のビジネスを作っていけると感じました。スクラムで働きたい!と思い、迷いはありませんでした。今、入社して、もうすぐ3年です。

そして、サンフランシスコで働き始めた?

スクラムベンチャーズに入ってからは、オープンイノベーションプログラムの運営や、新規事業開発に携わっています。今、まさに進行中のグローバル・オープンイノベーション・プログラム「SmartCityX」は、代表の宮田と一緒にディスカッションして立ち上げから関わりました。宮田と共に何度も資料に修正を重ね、日本企業の皆さんに提案しました。

2018年にSPORTS TECH TOKYOが成功したことで、多くの企業から引き合いをいただき、様々なテーマのプログラムを提案してきました。ただ日の目を見なかったプログラムも数多くあるので、この「SmartCityX」を実現することができて、本当に嬉しかったです。

また、2020年5月に大企業とスタートアップをつなぐオンラインプラットフォーム「Scrum Connect Online」を立ち上げました。スクラムベンチャーズは、2013年から投資活動を開始して、2017年からはスタジオ事業を展開しています。これまでの経験から、大企業とスタートアップをつなげることで面白い化学反応がうまれることはわかっているのですが、海外のスタートアップ情報は少なく、言語の壁もあります。これらの課題を解消する方法を模索していました。

そんな中、新型コロナウイルスの影響で、日本企業の皆さんが海外出張できなくなってしまいました。そしてピッチイベントへの参加やスタートアップの面談も難しくなりました。今こそオンラインサービスが必要になる時だ!ということで、もともとあった構想ではありますが、急ピッチで「Scrum Connect Online」を立ち上げたんです。責任者として、企画、開発、立案を全て行うのは、初めての経験で、何が大変だったか思い出せないぐらい大変でしたが、やりがいのある仕事でした。

サービスをスタートして1年あまりですが、すでに50社を超える企業の方にご利用いただいています。50社を超えるにあたり、各社さんからウェブサイトに掲載する利用者の声をいただいたのですが、「日々スタートアップを評価しているベンチャーキャピタリストの生の声を聞けるこれまでにないサービスで、非常に役に立っています」「シリコンバレー出張が難しい今、とても役に立っています」「情報だけでなく、スタートアップの紹介で実際に知り合うことができるので、ビジネスにつながりました」といった声をいただき、実際に皆さんのビジネスに役立っていることが実感できて、とても嬉しかったです。

「日本企業とスタートアップをつなぐ」といっても、一筋縄ではいかない難しさがあります。言語ではなく文化の壁を越えるお手伝いをしていると自負しています。

もっと、女性に関するテクノロジーに投資を

フェムテックの領域に興味があるとうかがいました。

フェムテックとは、女性の健康を支える技術分野です。生理トラッキング、卵子凍結、更年期障害向けのサービスなどがあります。

弊社の投資メンバーもそうですが、世の中全体的に見ても、投資に携わる人は圧倒的に男性が多いんです。私は投資メンバーではないですが、フェムテック系の話が来たりすると、投資部門の担当者に「これ女性としてはどう思う?」と聞かれることもあり、自ずとフェムテック関連のスタートアップにも詳しくなりました。

人口の51%は女性なわけですが、これまで病気の治療の治験なども多くは男性で行われていました。医療としては、女性の身体って男性の小さいバージョン……っていう前提で成り立っているんですね。それって絶対違うと思うんです。女の人には生理もあるし身体の仕組みも違うし。

私、Oura Ring(指輪型のアクティビティロガー)を着けているんですけど、このような技術の進歩で、女性の身体に関するデータが集まると、実はこれまで女性が受けてきた治療や健康維持の方法が間違っていたということになるかもしれません。より女性にフィットする方法が見つかる可能性もあります。そのあたりにすごく面白みを感じていて、日本のVCの人たちとフェムテックコミュニティを立ち上げたりという活動もしています。

新しい形のオープンイノベーションを生み出したい

まさに新規事業創出でも取り組むべき分野ですね。

今、SDGsとか、ダイバーシティなどについて、日本の会社も意見を表明するようになりましたが、そういう足元の部分から変えて行かないと、優秀な人が働き続ける機会がどんどん減っていると思うんです。

これからも新規事業創出についてチャレンジしたいことがたくさんあります。女性関連のテーマも、私だからこそ取り組める課題だと思って意欲を燃やしています。

私が責任者である、Scrum Connect Onlineでも、ウェビナーをスタートしたり、新しい形での価値提供をはじめています。オンラインだからこそできること、新たな可能性を感じているので今後も成長させていきたいです。

またこれまで取り組んでいるグローバル・オープンイノベーション・プログラム、Scrum Connect Onlineといった事業だけでなく、さらに新しい形のオープンイノベーションを進めていきたいと思います。

コロナ禍でScrum Connect Onlineをリリースしたように、みなさんのニーズに敏感に、そしてスピード感をもってソリューションの提供を進めていきたいと思っています。

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