必読レポート Mary Meeker 2017年版「15枚のキースライド」
今年もRecodeのCode Conferenceで、Mary Meekerによるインターネット業界のトレンドレポート(昨年のエントリはこちら)が発表されました。
164ページ(2014)→197ページ(2015)→213ページ(2016)ときて今年はついに「355ページ!」とものすごいページ数になっていますが、今年も「15枚」のキースライド紹介したいと思います。
◼︎1:世界のネット人口は「34億人」
今年のレポートは全体で11章構成になっていますが、最初の章は 「Global Internet Trends」。
あまりに基本的なことで忘れがちですが、インターネット人口は引き続き増加しています。昨年の約30億人から4億人増えて約34億人。増加率は約10%でほぼ横ばいです。
◼︎2:スマホユーザ(28億人)の伸びは急減速
2007年にAppleがiPhoneを発売してからの10年間、世界のイノベーションを牽引してきたスマートフォン。ユーザ数は28億人とネットユーザ全体の約8割を占めるまでに成長しましたが、その普及スピードは昨年の25%から12%に急減速しています。「スマホの次」を担うデバイスは何になるのでしょうか?
◼︎3:ついにネットがテレビを追い抜く
第2章は「 Online Advertising (+Commerce)」です。この章からは5スライドご紹介します。
一つ目は、「ついにこの時がきた」というチャートです。全世界で伸び続けているインターネット広告市場ですが、ついにグローバルでテレビ広告の市場規模を追い抜きます。グラフの角度を見てわかる通り、今後数年でこの両者の立ち位置は大きく変わることになります。
◼︎4:「購買直結広告」の台頭
二つ目は、最近急増している新しい広告フォーマットについて。様々なアトリビューションデータを蓄積しまくっているFacebookのターゲティング広告の精度がどんどん上がっていることは皆さんも体感されていると思いますが、Facebookの広告をクリックした人の26%が実際にその商品を購入しているというデータです。
22ページにPinterest、24ページにSnapchat、25ページにGoogleの例が紹介されていますが、「ユーザの行動に繋がる」広告が大きなトレンドとなっています。
◼︎5:「スマホの次」を狙う音声端末
三つ目は、躍進する音声ベースの家庭用端末について。まだ米国だけでしか展開されていないAmazon Echoですが、出荷ベースで1,000万台を超え、提供されるスキルも12,000と急増しています。
また昨日もTackle!で「なぜ音声が今更くるの?」という質問を受けましたが、48ページにその理由が書いてあります。これまで音声認識は精度が低かったのですが、ここ数年で急速に精度が上がっており、今年ついに「人間と同じレベル」に達しています。
◼︎6:AIが作るプライベートブランド
四つ目は、コマースの新しいトレンドについて。先日のAmazonに関するポストでも紹介をした「スタイリストコマース」サイトStitch Fixですが、 「商品の属性」「ユーザフィードバック」に加えて、「データサイエンス」を加えてプライベートブランド製品を開発しているそうです。これは彼らに限った話ではなく、今Eコマースの大きな流れとなっています。75ページには、Amazonのプライベートブランドが業界を席巻しているというチャートも紹介されています。
◼︎7:「残りの9割」に進出するAmazon
そして最後は、小売業界の大きな変化について。左側は、米国における小売店舗の閉鎖数の統計ですが、今年、過去20年で最大の数字になる見込みです。一方で、右側にあるように、Amazon Books、Amazon Goとオンラインの雄Amazonはせっせとリアル店舗を作り続けています。
「なぜ?」なのか。答えはシンプルです。
全ての小売市場を取りに来ているのです。
76ページで紹介されているようにEコマース市場は引き続き成長を続けていますが、とは言え小売市場全体で見るとわずか10%にすぎません。73ページで、Warby ParkerやBonobosの事例が紹介されていますが、「オンラインプレイヤーがリアル店舗で勝つ」というのが新しい定石になりつつあります。
◼︎8:ゲーム新時代「みんなで遊ぶ」
第3章は「 Interactive Games」です。
今回初めてゲームについて取り上げられていますが、なんと70ページも割かれています。
ゲームのツール、VR、GPUの進化、eSports、など様々なテーマについて紹介されていますが、このチャートがそのサマリーです。過去家庭用ゲームが主流だった時代、「一人で遊ぶ」のがゲームの定義だったものが、家庭用ゲーム機のネットワーク化、eSportsなどにより、「シェアの時代」に突入し、そこに大きな可能性があるということです。
◼︎9:音楽は「ストリーミング」が支配的に
第4章は「 Media」です。この章からは2スライドご紹介します。
このチャートは過去50年間の音楽メディアビジネスの市場規模の変遷です。それまで主流であったテープやCDといった物理メディアの時代から、インターネットの登場でダウンロードという仕組みが登場し、ここ数年で一気にSpotifyに代表されるようなストリーミングが過半を超えていることがよくわかります。
◼︎10:映像はさらなる多様化ニッチ化
二つ目は、映像メディアの変遷について。
今の日本のテレビが引き続きそうであるように、アメリカもかつて少ないチャンネルで同じコンテンツを多くの視聴者に提供していたところから、ケーブル時代に多チャンネル化が加速し、そしてデジタル時代の今は、Crunchroll(アニメ)、Shudder(ホラー)、SeeSo(コメディ)など非常に多様なニッチカテゴリーのメディアが成立する時代となっています。
◼︎11:クラウドは全体の37%
第5章は「 The Cloud」です。
チャートを見てわかる通り、じわじわでありますがパブリッククラウド(22%)、プライベートクラウド(15%)それぞれ増加傾向にあり、トータルで37%がクラウドに移行していることがわかります。
◼︎12:Tencentが支配する中国インターネット
第6章は「 China Internet」です。この章からは3スライドご紹介します。
これまでも、欧米とは全く異なる成長を遂げて来た中国には多くのページが割かれていましたが、今年のレポートのハイライトはこの章と言っても過言はありません。
200ページで紹介されているようにまだ年10%の成長を継続しており、中国のモバイルインターネットユーザ数は7億人に達しています。また、205ページで紹介されているように、音楽や書籍など様々なジャンルがある程度の割合を占めている米国とは異なり、中国はゲームが圧倒的な割合を占めています。
上のチャートは、中国のモバイルインターネットに占める各メディアの割合ですが、圧倒的な割合を占めるWeChatを筆頭に、Tencentが半分以上を占めており、Alibaba、Baiduと続いていることがわかります。
◼︎13:圧倒的な規模の「中国自転車シェアリング」
二つ目は、グローバルの移動手段シェアリングの市場規模の推移です。
2015、2016年を見ても、Didiが引っ張る中国のライドシェアが世界のシェアリングビジネスの多くを占めることが分かりますが、驚くべきは今年突如現れた中国の自転車シェアリングの規模です。213ページに紹介されているMobikeに代表される乗り捨て自由なバイクシェアリングは、その価格(30分15円程度)と便利さ(スマートキー/乗り捨て自由)で、214ページにあるようにサービス開始から一年で一気に2000万MAUに達しています。
この流れはシリコンバレーにも逆上陸しており、単に中国の規模がすごいということではなくて、中国がイノベーションの発信地になりつつあると考えた方が良いと感じています。
◼︎14:保険も資産管理も全てスマホで
最後は、圧倒的な進化を遂げている中国のモバイルペイメントについて。
219ページに紹介されているように、Alibabaの提供するAlipay(54%)とTencentの提供するWeChat Pay(40%)が独占し急成長しているのが中国のモバイルペイメント市場です。221ページに紹介されているように、バイクシェアリングが急成長した背景ともなっています。
「中国ではWeChatで全てができる」と耳にはしているのですが、決済だけでなく、資産管理、ローン、保険、クレジットスコアなど全てもモバイルで億単位のユーザが利用しているようです。
今米国で急成長しているChatbotも、Wechatが早くから手がけたものを、Facebookなどが参考にしているという言われていますが、金融の分野でも中国がイノベーションをリードしているようです。
◼︎15:インドのネットユーザ(3.5億人)は急増中
第7章は「 India Internet」です。
インド市場についても多くのページが割かれています。このチャートはインドのインターネット人口の推移ですが、年27%成長という猛烈なスピードで成長しており、3.5億ユーザにまで達しています。
コマース(248ページ)、決済(263ページ)、エンタメ(266ページ)など、その規模を背景にいずれも急成長を続けています。中国のように独自のイノベーションを生み出すという所にはまだ遠いと思いますが、次のフロンティアとして無視できない市場になっていることは間違いありません。
その他、8章では「Healthcare」、9章では「Global Public / Private Internet Comapnies」について紹介されいます。
そして「日本」はと言うと、悲しいかな国債発行額のGDP比率No.1と言う胸を張れないデータで紹介されているのみです。
毎年のことですが、圧倒的な情報量、データ量なので、ご興味を持たれた方はぜひ、355ページ全てに目を通されることをお勧めします。
来月の勉強会 Tackle!でも、このレポートを詳しく説明しますので、ご興味ある方はぜひ東京またはSan Francisoでご参加ください。