「ドローンは馬だ」。物流会社であることを宣言したAmazonの物流革命。

February 3, 2016 スクラム代表・宮田ブログ

二週続けてトップの写真が「馬」ですw

先週は「自動車業界」にこれから起きる大変化について書きましたが、今週は「物流業界」の話です。

移動を伴わずにRealityがそこにやってくる「VR」の世界の勃興と、移動するための手段である「自動車」の進化がどう相互作用していくのが最も気になっている、今日この頃です。

ついに「物流会社」であることを宣言したAmazon

さて、昨年12月にもブログで触れましたが、Amazonはドローンを活用したラストワンマイルの物流を積極的に推進しています。2年ぶりに公開された最新の配送用ドローンの動画を見ると、「ドローンでものを運ぶ」ということがコンセプトではなく、限りなく実用化に近いということが分かります。

そのAmazonですが、先週の2015年Q4の決算発表の書類の中で、自らを「Transportation Service Provider」 = 「物流会社」であると初めて明記をしたことで注目を集めています。

2013年から本格的にサービスを開始している生鮮食品のデリバリー 「Amazon Fresh」、東京を初めとする世界25都市で展開されている1時間配送「Amazon Prime Now」など、最近力を入れている新しいサービスには「物流、配送部分のイノベーション」を伴っているものが目立ちます。

そしてさらに、これまでにパートナーであるUPSやFedExに任せてきた、トラック輸送、航空輸送、海上輸送にも取り組み始めています。

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ボーイング767

すでに航空輸送に参入すべく、ボーイング社と20台の767のリースに関して交渉を開始していることが報じられています。過去に2013年のクリスマスシーズンに物流会社による輸送が遅れたことで、Amazonで買ったプレゼントが間に合わなかったという事件などもあり、自分たちのサービスのクオリティを上げるためにも、物流もコントロールしたいということでしょう。

2012年に買収したKiva Systemのロボットなどにより高度に自動化された倉庫、全く新しいドローンによる配送、そして未だに大きなストレスであるトラック輸送による受取、不在票のやりとりなど、AmazonがAWS並みの破壊力で「物流2.0」を我々に提示してくれることを心待ちにしています。

物流は「次のAWS」

今やネット企業だけでなく、多くの大手企業も活用しているAmazonのクラウド事業 AWSは、同社の急成長中事業であり、Q4の売り上げは$2.4B、年間で1兆円規模の事業にまで育っています。

そして、広く知られていることですが、このAWS、当初からこの事業を開始するべく開発されたものではありません。

AmazonはもともとはEコマース会社であり、多くのサーバを運用していました。その自社サービスを運営するために蓄えた多くのノウハウやリソースを活用して、第三者に向けてクラウド事業として破壊的な価格とクオリティで提供されているのがAWSです。

そして、今、前述の物流事業が、「次のAWS」になるのではないかと考えられています。

上述のように自社のEコマース事業をさらに磨き上げるために取り組んでいるのが物流事業だと思いますが、当然Amazonが持つ多く自動化技術、ロボット技術などにより、既存の物流事業者を超えるものができれば、価格、クオリティ面で破壊的なAWS的な事業展開も可能なはずです。

しかも、AWSと違い、物流は本業であるEコマースとも非常に関連が深いため、Amazon Prime会員の魅力づけなどとしても使えそうです。例えば、今は自社で展開していない、DoorDashのような弁当宅配と組んで、「Prime会員なら弁当宅配無料!食べたい時間に届きます。」Amazonドローンが地方の独居老人の家まで、ホカホカの弁当を届ける世界なんてすごいありそうじゃないですか?

物流市場は「150兆円」市場。

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FedeX社の売上は$47.46B(2015)

最大手のFedExの2015年の売上 $47.46Bという数字を見ると、物流はAWSよりも大きなスピンアウト事業になる可能性を秘めていそうですね。

「ドローンは馬だ」。着実に進んでいるドローン物流

最近のAmazonの公共政策担当のVPのインタビューを読むと、ドローン物流に関してかなり詳細な検討が進んでいることがわかります。

ドローンは空中を飛び、離着陸をする必要があるため、砂漠地域である、乾燥している、雨が多いなど、地域や環境によって複数のタイプの物流ドローンを開発、テストしているようです。

また規制に関しても、人が乗っている飛行機は500feet以上に規定し、200-400feetの間を物流ドローン用に使わせて欲しいと政府に提案するなど、かなり具体的になっています。

またこのVPは面白い表現でドローンによる物流の可能性を表現しています。

「ドローンは馬だ。馬車に乗っている途中で木があれば、馬はそれを理解して、突っ込んではいかない。ドローンも同じだ。木があればちゃんとそれを避ける」

最近DJIのPhantomをいろんなところで飛ばしている感想から言うと、まだ全然馬のようには賢くない、混雑地域で飛ばすのは怖いという印象ですw

とはいえ、すでにTeslaにより半自動運転の自動車がリリースされているお国柄、どこかのタイミングで本当にリリースされるのでしょう。

また、米国のFAAが遅いということもあり、UK政府と近しいなんていう話もあります。

「注文」と「配送」の両側のラストワンマイルを埋める

私は今東京にいますが、今週土曜日、第50回目のSuper BowlがSan Francisco(正確にはStadiumはSan Jose)で開催されます。先週からその余波で街は大騒ぎでした。ちなみにSuper Bowlの経済効果は約1000億円だそうです。1試合でこれだけのインパクト大きいですね。

それはさておき、今年のSupe Bowlでは、Amazonが史上初めて広告を出すのです。

さてクイズ。Amazonが広告で取り上げるのは何でしょう?

 

Prime会員?

 

Prime 1 hour ?

 

正解は、「Amazon Echo」です。

実際の広告の映像はこちらです。

Amazon Echoは2014年からAmazonがプッシュしている円筒型のスマートホームデバイスです。AppleのSiriのような音声インターフェースで、「Alexa、xx買っておいて」と話しかけるだけで、商品を買い物リストに入れておいてくれたり、家電を制御したりすることができます。

先日のCESでは、自動車メーカーのFordと提携して、このEchoを車や家のインターフェースにプッシュしようとしているようです。

ユーザに「注文を届ける最後のワンマイル」である物流を整備し、一方で「注文側のワンマイル」も自らのデバイスを提案することで、よりユーザに近づこうとしているAmazon。

果たして、注文から配送まで全てを「クローズドループ」にしてそのインフラを外部に提供するというAmazonの壮大な計画はどうなるのでしょうか?今後が見ものです。

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